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浜田宏一を参考に大物経済学者の発言を投資家視点で分析(経済情報との向き合い方)

  初版 4月8日 旧:アベノミクスの草案者(浜田宏一)のインタビューから見え隠れする経済政策の実験的な側面 アベノミクスの経済政策の筆頭ブレインであった浜田宏一イエール名誉大学教授の最新のインタビューが東京新聞に載っていた。今回は投資家目線でこのインタビューを考えてみる。 〇超金融緩和が国民全体に富を行き渡らせられなかったことに対する浜田名誉教授の回答 「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。安倍首相もそう思っていたと思う。ツケが川下(の中小企業や労働者)に回った。賃金が殆ど増えないで雇用だけが増えるようなことに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくことになっている。ツケが川下(中小企業、労働者)に回すようなシステムで調整されるなんてことは書いていない。意外で望ましくない方向に行っている。」  正直、日本を代表する大物経済学者でさえ、実経済の運営は困難を極めることが露呈された感がある。浜田宏一名誉教授の言葉を拾い上げると、大学の研究室で高尚な理論を追い回しているようなもので、街角に出て、そこに漂っている民衆の現状や空気感とは別の次元で研究をしているようだ。 〇アベノミクスのメリット  とはいえ、投資家から見れば、アベノミクスは決して悪いものではなかった。それなりに投資利益を得られたからだ。しかし、株価の上昇がほんの一握りの値嵩銘柄に偏ったために、多くの投資家の懐を暖めるまでにはいかなかった。実は米国相場もGAFAMなどの一握りの銘柄指数を押し上げただけで日本と大きな相違があったわけではない。 〇トリクルダウンの正体 実際、金融緩和で広がったのはトリクルダウンではなく二極化である。金融緩和は金融市場を暴騰させただけで庶民にお金が廻らず、街角景気と金融市場が完全といってもよい程に乖離してしまった。どうもトリクルダウンというのは、高度成長期のように養分を吸収が可能な経済構造に有効な施策であり、各々産業で制度疲労を起こしている成熟化した社会では起こりにくいようだ。だからこそ、現在の金融政策を補填するかのように、間接ではなく直接的にお金を配る施策が目立ち始めている。 しかし、二極化は世界中で起きている現象であり日本特有の議論ではない。だからこそ、ピケティは「21世紀の資本」著書の中で、

金融緩和の局所的な副作用としての日本の不動産高騰 (経済情報との向き合い方)

初版 2023.06.24 改版 2023.09.01  日本は少子高齢化の進行により人口減少社会に突入して久しい。このため、不動産価格も一部のエリアを除けば下落傾向が続いているのだが、ここ1~2年においては、不動産バブルの再来というべき現象が一部の地域で起きている。 1.不動産バブルに関する記事 〇全国に広がる「家が買えない」 京都も福岡も首都圏も郊外化加速(日経ビジネス)。 〇福岡市近郊 億ション相次ぐ福岡 新幹線で佐賀に脱出も (日経)  23年1月1日時点の公示地価で、住宅地の対前年上昇率が北海道に次いで大きかったのが福岡県。博多や天神、その周辺といった福岡市の中心部は「普通のサラリーマンでは、もう手が届かない」(不動産関係者)。 米国領事館などがたたずむ閑静な住宅街に、10階建ての分譲マンションが姿を現した。大和ハウス工業が手掛けるこの「プレミスト大濠二丁目」は、全35戸が1億円以上という強気の価格設定だ。 〇都心中古マンション1億円迫る 購入コスト29年ぶり高水準 (日経)2023年1月24日 東京都中心部のマンション価格が高騰している。東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した2022年の都心6区の中古マンションの平均価格は9800万円と1億円の大台に迫った。 〇住宅価格はバブル超え、郊外は息切れ感も 不動産会社は富裕層に照準(日経) 都心部のマンションは中間所得者層にとって「高根の花」になりつつあります。住宅価格が上がる一方で、国内の平均給与は伸び悩んでいます。マンション価格が購入者の収入の何倍にあたるかを示す「年収倍率」は、東京都で購入目安を大幅に上回る14〜15倍程度です。 〇地方にも「億ション」 首都圏はバブル超え。(日経) ・沖縄県首里城下町に「2億ション」 沖縄の地価、伸び再加速 ・福岡都心、初の全室「億ション」登場 坪単価10年で2倍 ・マンション高騰、近畿圏でも 大阪うめきた2期最高額へ 〇新潟市内マンション供給、十数年ぶり高水準(日経) 2022年12月6日 2.金融緩和継続による行き場のないマネーの行方  不動産価格は、一部の地域を除いて下落傾向が続いているにも関わらず、上記のようにここ1~2年の不動産価格の上昇報道には異常なものがある。これば、恐らくだが、金融緩和

金融緩和が引き起こす「株式市場の活況と街角景気との著しい相違」(世界の潮流)

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〇実態経済との乖離 日経平均がバブル期に迫る高値を続けている。その一方で、足元の景況感への影響は限られたものである。どうもこの株高は実体経済と結びついていないようだ。一体誰のための株価上昇なのか。これほどの株高でさえ、一獲千金を得て六本木や銀座で豪遊するなどの浮世離れした人が現れてこない。非常に不思議な株高だ そもそもアベノミクス以降、株高と景況感が一致しなくなった。アベノミクス前までは日経2万円を超えるだけでも、庶民はそれなりの好景気を甘受できたものである。アベノミクス以降は株価がどんなに上がっても庶民に向けて富は流れてこない。逆に、将来不安は日増しに増大している。だから政府はいつまでたっても異次元の金融緩和を止めることができない。 〇過剰な金融緩和が株価の閾値だけを切り上げている。  しかし、これは日本だけではなく世界中で起きている現象である。先進国はどこも深刻な経済状況であるにも関わらず、その国の株価への下落圧力は小さい。アベノミクスで株価は幾度となく、バブル崩壊以降の最高値を更新しているにも関わらず、日々のニュースは、不安一色である。少子高齢化による人口減少社会、政府の増税圧力、低賃金労働者の増加、人生100年時代のお金の不安。など暗いニュースを上げたらきりがない。私たちは、このようなニュースを毎日見ながら、一方で一部の超優良銘柄の好調な決算を背景にバブル崩壊後の高値を幾度ともなく繰り返す金融市場の活況のニュースを同時に見ている。このように経済ニュースと金融市場には相当な乖離が生じてしまった。  なぜ、そうなったのか。これは間違いなく金融緩和の副作用である。金融緩和で市場にジャブジャブに垂れ流した過剰なマネーが庶民にまで届かず、金融市場界隈を徘徊しているからである。 〇金融市場と街角景気の乖離は当面続く  金融緩和は株価の閾値を引き上げる一方、インフレも引き起こした。サマーズの指摘通り、金融緩和の副作用を取り除かない限りインフレ率2%の時代には戻らないように、日本のこれら乖離についても同じことが言えるのであろう。なぜなら、日米欧の中央銀行は、市場から買取りすぎた国債を市中に還流することは到底できない。つまり、これでは市場に膨大なマネーが漂流していることになり、不景気による株価押し下げ要因を阻害してしまっている。  当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べた

チャーリーマンガーから投資の極意を学ぶ(その他) 

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    〇見習うべき点:チャーリーマンガーは趣味人  チャーリーマンガーは、マインドフルネスやジョギング、瞑想を好きでやるならいいけど意識系を高くするための必須アイテムになっていることを皮肉る一方、勉強、学びを首尾一貫として薦めているが、自然体でいることを説いている。でも、彼の学びは苦行ではない。趣味の範疇にすぎない。 チャーリーマンガーは、朝起きて寝るまでに少し賢くなっているくらいが良いと頻繁に説いている。それは彼にとって、知的好奇心を満たす毎日が楽しいという裏返しでもある。  これは投資家としての理想的な生活であり、私もこの境地に辿りたいとしきりに思うものである。 〇バリュー銘柄に成長性を追求 ウオーレン・バッフェットも讃えていることでもあるが、チャーリーは単なるバリュー株ではなく成長性を加味した銘柄に投資すべきであると説いている。これはまさしくその通りでで、優良企業であってもズブズブのバリュー株の場合、5年過ぎても株価は横ばい、配当も連続増配だが1セント程度に収まっている銘柄が少なくない。こういった銘柄に投資しても株主の利益は相当限られたものになってしまう。しかし、バリュー銘柄に成長性が加味されていれば、5年後、10年後には配当は2倍近く、株価も同程度の上昇を期待することができる。まさに投資すべき銘柄の急所をついた理論だが、チャーリーはそんな銘柄を簡単に見つけられるほど投資は生易しいものではない。とも付け加えている。   〇「好機を待つ」を説く最高の投資法 投資も10年に一度来るか来ないかの大暴落で大金を投じるだけでよい。ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ禍で1000万でも投資すれば3倍に膨れ上がる。3000万なら億が見えてくる。極論すれば、1年に数回程度、株式市場の情報を取得すれば事は足りる。 「成功とは、忍耐強く待ち、時が来たら、積極的に行動する。私たちには、良い球が来るまで待つという投資の規律があります。待つことは、投資家にとって大きな助けになる。多くの人は待つことができない。」  これはウオーレン・バッフェットとチャーリーマンガー―の投資の根源にある有名な名言である。 その間、自分の趣味を謳歌すればよい。株式市場の日々の値動きなど追わなくてよい。日経やダウが史上最高値になったのも無視すればよい。アンテナを張るのは不況か大暴落に陥った時であり