金融緩和がもたらす局所的な不動産バブル現象
初版 2023.06.24 改版 2023.09.01
日本は少子高齢化の進行により人口減少社会に突入して久しい。このため、不動産価格も一部のエリアを除けば下落傾向が続いているのだが、ここ1~2年においては、不動産バブルの再来というべき現象が一部の地域で起きている。
1.不動産バブルに関する記事
〇全国に広がる「家が買えない」 京都も福岡も首都圏も郊外化加速(日経ビジネス)。
〇福岡市近郊 億ション相次ぐ福岡 新幹線で佐賀に脱出も (日経)
23年1月1日時点の公示地価で、住宅地の対前年上昇率が北海道に次いで大きかったのが福岡県。博多や天神、その周辺といった福岡市の中心部は「普通のサラリーマンでは、もう手が届かない」(不動産関係者)。
米国領事館などがたたずむ閑静な住宅街に、10階建ての分譲マンションが姿を現した。大和ハウス工業が手掛けるこの「プレミスト大濠二丁目」は、全35戸が1億円以上という強気の価格設定だ。
〇都心中古マンション1億円迫る 購入コスト29年ぶり高水準 (日経)2023年1月24日
東京都中心部のマンション価格が高騰している。東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した2022年の都心6区の中古マンションの平均価格は9800万円と1億円の大台に迫った。
〇住宅価格はバブル超え、郊外は息切れ感も 不動産会社は富裕層に照準(日経)
都心部のマンションは中間所得者層にとって「高根の花」になりつつあります。住宅価格が上がる一方で、国内の平均給与は伸び悩んでいます。マンション価格が購入者の収入の何倍にあたるかを示す「年収倍率」は、東京都で購入目安を大幅に上回る14〜15倍程度です。
〇地方にも「億ション」 首都圏はバブル超え。(日経)
・沖縄県首里城下町に「2億ション」 沖縄の地価、伸び再加速
・福岡都心、初の全室「億ション」登場 坪単価10年で2倍
・マンション高騰、近畿圏でも 大阪うめきた2期最高額へ
〇新潟市内マンション供給、十数年ぶり高水準(日経)
2022年12月6日
2.金融緩和継続による行き場のないマネーの行方
不動産価格は、一部の地域を除いて下落傾向が続いているにも関わらず、上記のようにここ1~2年の不動産価格の上昇報道には異常なものがある。これば、コロナ禍以降に実施した大規模な金融緩和による行き場のないマネーが不動産市場に流れ込んだものだ。最近だと長期金利の上昇を抑えるべく日銀が大量の国債を購入することで市場にばら撒かれたマネーの一部が不動産市場に流れ込んだものである。
3.2020年ごろまで不動産価格の推移
不動産研究所が提供する新築マンションの価格の推移をみていくと
首都圏は、2012年(4540万円)、2016年(5490万円)、2020年(6083万円)
近畿圏は、2012年(3438万円)、2016年(3919万円)、2020年(4181万円)
さらに首都圏では、2021年には6,260万円と、バブル時代の6123万円を上回った。2023年には都心の中心部の平均販売価格が1億円を超えたとのこと。これが意味することは、これまでの幾度とない金融緩和により世界中で富裕層が爆増し、その受け皿としてタワーマンションのような高付加価値物件が登場し価格を吊り上げた。それでも2020年までは常識的な上昇であった。しかし、2021年から高騰幅が急激になり、バブル的な様相を呈している。
4,局所的な不動産バブルの検証
歴史が正しいなら、バブルは特定のトレンドの最終局面で発生すると言われ続けていたが、このような仮説は今回のバブルに適用されないであろう。なぜなら、バブルが本当にクラッシュするのは、政府が過度なバブル抑制に動いたとき、又は急激な資産価格の下落で窮地に陥った金融機関や巨大なヘッジファンドなどの運用会社の破綻に対して政府が救済をしなかった時であるからだ。
現状は、日本銀行が保有している未曾有の国債を市中から吸い上げれないだけでなく、日本政府はこの金融緩和の旗を降ろすことすらが出来なくなってしまった。このため、このような局所的バブルは当面続くものと見られる。
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