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相場の事は相場に聞け 岸田内閣の評価(経済情報との向き合い方)

  1.岸田内閣に対する市場評価  第100代総理大臣に岸田文雄氏が選ばれました。それについて、相場はどのような評価をしているのかについて検証していきます。  相場の動きをそのまま解釈すれば、ちょっと厳しめな発言となりますが、「実力不足」ということなります。相場は岸田内閣に対して期待をしていない可能性があります。  これでは、選挙に勝てないといって辞職した菅内閣より市場評価が低い事になります。  菅総理より良くなることを目指した総裁選が、直前の選挙結果を除けば、全て逆方向に向かう事のないように願いたいのですが。 2.外部要因を比較  一方、日経平均が下がっているのは、恒大集団や米国市場の暴落などが重なりあった為で、岸田内閣の評価とは全く関係ないという意見もあるでしょう。  では、これらの評価について、 日経インデックスに大きな影響を与える米国ダウとの比較することで検証していきます。比較期間は、総裁選のスタートする頃の9月1日をベースにします。    日経平均 米国ダウ 09/01  28,451    35,312  09/15  30,511    34,814 09/30  29,452    33,843 10/08  28,048    34,746  この総裁選では、当初は河野太郎氏が次の総理大臣になるのではという思惑で、日経が3万円を超えました。9月15日頃までは日経平均は世界の相場の中で独歩高です。 しかし、岸田文雄氏が優勢に変化するにつれて、日経平均も下降線を描き始めます。  それでも、9月30日を見る限り、岸田総理が確定した時点の市場評価は、河野総理ほどではなくても、一定の理解を得られていたようです。  実際、米国ダウが大きく下がっているにも関わらず、日経平均が一定レベルで踏み留まっていることからも読み取れます。  しかし、その後です。 岸田総理が本格的に動き出すのに併せて、日経平均と米国ダウは乖離していきます。  これは9月15日と10月8日を比較することで読み取れます。  つまり、日経平均下落の要因は、恒大集団や米国市場の暴落などでは説明しきれません。  明らかに岸田内閣の評価が反映されたものとなります。 3.市場はなにを訴えているのか。  一つ言えることは、岸田内閣の組閣にノーを突きつけているのでしょう。市場は岸田総理やそのスタッフの力量を高

投資家視点の戦後経済(1) 1950年前後 東証再開と朝鮮特需

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    1. 戦後復興と強烈なインフレ (1945 ~ 1949) 日本は敗戦による経済混乱で極端な物不足におちいり、日本中で強烈なインフレを引き起こした。このような中で日本政府は、国内基幹産業を復興させることを第一優先とし、 1946 年には 石炭や鉄鋼などの国内主要企業に対して、資材、資金、労働力を重点的に配分する傾斜生産方式を実施した。しかし、その財源は復興金融金庫の復興債の大量発行による援助金(融資)に頼らざるを得ず、これが国内市場の資金をダブつかせ、 1947 年にはインフレ率が 120% に達した。 2.ドッジライン不況 (1949) 政府は、ハイパーインフレ化した日本経済を鎮静化させるために、 1949 年 3 月にドッジラインを施行した。ドッジラインでは、戦時統制(価格統制)の緩和、米国からの補助金の廃止、復興金融債権の廃止、国家予算を超均衡予算等の超緊縮財政を行った。税制面では、ショウウブ勧告により間接税から直接税にかえ、広く公平な税徴収体制に切り替えた。このような劇薬とも言える一連の施策は強烈な需要激減を引き起こし、深刻な不況(ドッジライン不況)となった。中小企業を中心に 1100 社の倒産、および国鉄 10 万人、電電 2 万人などの大規模な人員整理が行われた。トヨタ自動車や松下電器などの新興優良企業ですら倒産寸前の状態に追い込まれた。この結果、日本国中で資金の流れが停滞し、ハイパーインフレは収束に向かった。その一方、ドッジラインでは、国際貿易の整備にも着手し、実効レートよりはるかに割安な 1 ドル= 360 円の為替レートを設定した。これは、高度成長期を通して国際競争力が強くなっていく日本企業の輸出促進に大きく寄与した。 3 . 朝鮮特需景気 (1949 ~ 1951) 終戦から5年目の 1949 年 5 月 16 日に東京証券取引所が再開した。初値こそ 176 円でスタートしたが、ドッジライン不況の影響で株価は徐々に下値を切り下げ、翌年 7 月には半値( 85 円)まで落ち込んだ。しかし、朝鮮戦争が 6 月に勃発したことで、米軍向け資材供給特需が発生した。これによって、ドッジライン不況により極度に減少した需要が補われ日本経済は再び息を吹き返した。株式市場は、この特需を支えに上昇基調に反転し、 1950 年末には 100

恒大集団の動向見極め (経済情報との向き合い方)2021.09.26

  1.恒大集団ショックを考える  私は、経済ニュースをこまめに追っているわけではないので、月曜日の米国市場の大暴落はまさに青天霹靂でした。朝起きて何がおきたのかとニュースを見ると、「恒大集団のデフォルト危機、リーマン・ショックの再来か?」旨の記事にぶつかり、さらに映像では債権者が恒大集団の本社ビルの前で金融商品の返金を求めて抗議をしている様子が報道されていました。 私は、これを受けて火曜日の中国市場をウオッチしていました。しかし、上海市場で混乱が起きていないことを受けて、この騒動に一定の解を得ました。 中国では恒大集団の件が大きな問題になっていない。 となるとこの暴落は外国人投資家によるシステマティックな変動に過ぎない。 というものです。 2.今後の恒大集団の動向  これは私の私見ですが、恒大集団の動向については、今回のような多少の波乱も含め、中国政府の想定の範囲内で処理を進めていくものと思っております。 そして、中国政府は、恒大集団の債務について、その後の影響を踏まえながら切り捨てる債権者と守るべき債権者を区別していくことでしょう。  実際、米国を筆頭とした西欧諸国と調整を取って、ある程度のシナリオは出来ていると思われ、FOMCの声明も、「恒大集団危機については、中国国内の問題である」との認識に至っています。 3.今後の中国の不動産政策  私は、今後の中国の不動産政策に注目しています。中国のバブル崩壊論は10年以上前から何度も出没しています。幽霊マンションやゴーストタウンの話もしかり。しかし、中国経済はそんなことをものともせず成長しています。 中国政府は、日本の不動産バブル崩壊を含め不動産価格と経済の関係については相当研究しています。 そうなると、中国は不動産価格が暴騰しないように政策面で規制をかけながら、恒大集団のように暴走した企業を長期にかけて整理していく。そんなシナリオが浮かび上がってきます。 中国は不動産価格の上昇に伴う経済成長と庶民が購入できるよう不動産価格抑制の相異なる政策をバランスよく運営していく事を狙っているのではないでしょうか? ただ、この危機が恒大集団だけに留まるのかは注視しなくてはいけません。恒大集団の件が氷山の一角なら、これは別問題です。 それは日本のバブル崩壊後の莫大な不良債権処理とも重なりあってきますので。 4.世界の相場を巻き込むよ

日経平均は自民党総裁選を睨む動き(経済情報との向き合い方)

  1 . 自民党総裁選  菅総理が自分党総裁選に出馬しないと宣言しました。これを受けて 9 月 3 日(金)の株式相場は大幅に上昇しました。 でも菅総理は、アベノミクスを継承しており、経済面での失態はしていません。確かに、コロナ対応はちょっと雑であったような気もしなくもないですが。総理交代のニュースでなぜ株式市場が大幅高したのかは不明です。 次の総理が誰になるかは、私にとっては重要です。その後の投資方針にも大きく影響してきますので。   2 . 次の総理と経済政策 私は投資家視点で、次の総理が、経済政策でどこまで踏み切れるのかについて考えてみました。   2-1. アベノミクスの継承 アベノミクス路線の継承是非は一つの焦点になります。とはいっても、アベノミクスもスタートから 10 年近く経過し、勤続疲労も起しています。このため、アベノミクスの継承如何に関わらず、潮目は変わる可能性もあるので、その辺を十分に考慮しておきたいものです。 2-2. 日本型デフレの対峙 今の日本では、デフレが 20 年以上に渡って続いており、その解消に苦労しております。そもそも、デフレは消費者の意識が後ろ向きになっていることの表れです。本当の意味でデフレを解消するのなら、米国などのように勝ち組をたくさん増やして、そういった人たちに贅沢品をいっぱい買わせれば良いのです。 今の日本は、いい悪い関係なく平等社会ですので、年収に関係なくみんなが不安になり、高いものを買わなくなっています。年収 1000 万だろうが、年収 2000 万だろうが 100 円ショップやディスカウントショップなどの低価格の製品を喜んで買っています。今の日本では高額商品の売上は中国などの訪日客がその役割を担っているのです。 しかし、日本もある程度の格差を容認する社会になれば、一定レベル以上の富裕層は、 100 円ショップ等の低価格商品の購入を恥ずかしく思うようになり、贅沢品とはいわないまでも、ブランド力のある商品の購入が促進され、統計上のデフレは薄まります。 しかし、今の日本社会ではそんな不平等が許されるわけがありません。なので、デフレは社会構造上の問題ともいえます。   2-3. 世代間格差の深刻さ  今の日本では、高度成長期やバブルの恩恵を享受した高齢者層

セールスフォースドットコムの分析?(個別銘柄:米国株) 2021.08.22

1.セールスフォースドットコム(CRM)の評価ミス?  ダウ銘柄ではセールスフォースドットコム(CRM)が堅調です。この銘柄は、しかし、私はこの会社の評価を理解できずにいます。 理由は、 ①PERが高すぎること。 ②GAFAMのように財務内容が良好でないこと。 ③ダウ銘柄の採用理由もアップル株式分割に伴う情報産業指数の調整扱いだったこと ④ダウ銘柄としては、事業範囲が顧客管理システム中心で拡張性に疑問が残ること  そんなことが理由です。他にもテスラにも同様な評価を持っています。現時点において、ダウ銘柄の中で堅調な動きを示しています。それを見ているうちに、私はセールスフォースドットコム(CRM)を過小評価しているのではという気持ちになりました。  もしかしたら、経営者のマーク・ベニオフCEOの才能を見誤っているのではと。マーク・ベニオフCEOはGAFAMの創業者と同等レベルの経営者なのではないかということです。  2.マーク・ベニオフCEOの力量  私は、マーク・ベニオフCEOの詳しい歩みを知りません。オラクルの営業マンだったのは分かります。それで独立して餅屋のCRMで成功したくらいです。言葉は悪いのですが、その程度のキャリアの人がダウ30にリストされるまでの企業を構築できるのかについて疑問を持ってしまいます。  そもそもCRMがこれから社会的にどれだけのインパクトを与えることが出来るのか判断すらできません。正直、私には社会を変えるビジネスモデルとは到底思えません。  しかし、経営能力がGAFAMレベルのようにこれからの株価は大きく上昇していく可能性があります。とにかく調べてみる価値はありそうです。でも、私はセールスフォースドットコム(CRM)のファンダメンタルを調べ上げるつもりはありません。  マーク・ベニオフCEOが、どのようにしてこの会社を大きくしたのか。そしてどういうことに強みがあるのか、そして、今後のどんな未来像を持っているのかとかです。  そういうことについて、提灯記事を読んでも意味がないのでそうでない記事を探すのに一苦労です。なので、この調査は相当時間がかかりそうです。しかし、調査が終わる事にはこの銘柄の評価は固定かされ、投資時期を逃してしまう可能性があります。いつものことですが。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、

日本の80年後半バブルを投資家視点で再検証 (時事情報の分析)

1.バブル経済の産声  80年代中頃から、日銀はプラザ合意に二極化相場は豊かによる急激な円高不況を抑制するために、公定歩合を戦後最低の金利である2.5%まで引き下げたことが発端でバブル経済がスタートしました。  初めは、株式市場が経済指標とリンクしない状態で独自に上昇していたことから、「不景気の株高現象」と言われていました。  ただ、この高騰は過去の経験則とは明らかに異なるもので、特に国際競争力の高い銘柄を中心に史上高値を連日にわたって更新するということからスタートします。  当時の四季報には、「この円高不景気の最中、株式市場だけが活況を呈している。これも何らかの株価の先見性を暗示しているのでしょうか?」旨の記載があります。明らかにそれまでの経験則による動きと異なるものであったことが伺えます。そして、代表的な暴騰例がNTTの上場です。 2.NTTの上場 NTTは1987年2月9日に株式公開されました。その売出し価格は一株119.7万円でした。しかし、あまりにも買いが殺到し、初日には値が付かず、翌日に160万円で初値がつきます。それ以降も買いは止まらず4月には1株318万円の空前の値を付けます。そのように暴騰するNTT株は社会現象にまでなります。  また、個人株主はその当時160万人とも言われ、個人投資家からみた政府系企業への信用度の高さも物語っています。しかし、その後は徐々に値を切り下げ、バブル崩壊後の92年は売り出し価格の半値以下である50万円を伺うところまで値を下げています。その頃の記事には、今度は個人株主団体がNTT株に関する損害賠償請求を国に申し立てていたりしています。 3.相場の過熱  このように相場の過熱は徐々に社会現象になってきました。1987年の日経は1万9千円台弱からスタートして、その後は順調に株価を切り上げ1987年10月には2万6千円を伺うところまで上昇しています。  しかし、米国発のブラック・マンデー大暴落により、世界中の市場が調整に入ります。(尚、この時も世界大恐慌への発展が懸念されましたが、欧米相場はその後に立ち直りを見せます。)日経も2万1千円台まで調整しましたが、日本市場は、その後、欧米を凌ぐ独歩高の様相を呈し、翌年の1988年に引き継がれます。 4.不動産バブルも発生  そして、この頃に巷では地上げ屋が社会現象になります。カネ余りの

元本保証商品の運用利回りは壊滅状態 (時事情報の分析)

1.資産運用におけるキャッシュの必要性 長期投資家である私は分散投資を心掛けます。なぜなら、きっちりと分散投資をすれば、有事が起きても攻めの姿勢で相場と対峙できるからです。  実際、一つの籠に卵を入れて運用したら、有事の際、身動きが取れなくなります。皆さんのなかにも、コロナ禍の大暴落で騒然とした方も少なくないのではないでしょうか。  キャッシュは、そういった暴落の時に力を発揮するのです。そういった、相場が低迷している時に購入した銘柄は投資家に莫大なリターンを与えてくれます。   2.元本保証商品で利率の一番高い商品が国債 しかしながら、キャッシュは利息を生みません。そのため、投資家はいつでもいくらかの利息を得ようとキャッシュに類似した商品に投資します。手っ取り早いのは銀行の定期預金。これは誰でも簡単にできます。そして、かつては証券会社の MMF 、中期国債ファンドなどもありました。国債はそういった元本保証系の商品群の中で利率が一番高い商品です。  しかし、国の債務残高が1千兆円を超える今に至っては、書店で「日本国破産。国債は紙屑に!」というタイトルの本が所狭しと並べられ、本当に購入して大丈夫なのかと不安に掻き立てられます。確かに債務残高という点ではそういうことも言えなくもないのですが、日本は、今のところ、債務超過どころか世界一の債権国です。  縮小経済だ!人口減少デフレ社会!と言われても世界一の債権国である日本の通貨(円)は世界でトップクラスの信用度です。当面は安全であると断言できます。 国債は、そういった意味では、元本保証の商品のなかで、最もお金を増やすことができる商品の一つです。   3 .雀の涙より少ない利息 では、元本保証の商品の利率を見ていきましょう。メガバンクの定期預金の利率は 0.002% です。視力検査でいったら、ド近眼どころではないですね。どうせド近眼でも、 0.1% は欲しいですが、レーシックでもしない限り戻らない状況です。これがどれくらい利息を生むかですが、 100 万円を預けてもたった 20 円しか利息が付きません。たった 20 円!。。。。です。何が買えるのでしょうか。「うまい棒」を 2 本?がやっと。子供向けの駄菓子すら満足に買えません。この利息では全てが終わっています。 では、国債はと