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バフェット指数が鳴らす警鐘――「見えないレトリック」とAI革命の期待値」

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 バフェット指数が示す株式市場への警鐘の解釈 (バフェット指数が物語るもの) バフェット指数は、株式市場の時価総額をGDPで割った指標であり、一般に100を超えると過熱気味と解釈されます。2020年以降、この指数は急上昇し、現在は200を超える水準にあります。これについては、主に以下の二つの解釈が考えられます。 ・株式市場はバブル化しており、冷却局面を経て暴落する可能性が高い。 ・米国の優良企業はグローバル展開が進んでおり、国内GDPと時価総額の単純比較はもはや実態に即していない。 実際、グローバル企業の株価には海外での利益も反映されるため、多国籍企業を多く抱える国ほど、国内GDP比での時価総額は肥大化する傾向にあります。とはいえ、世界のバフェット指数も130%強と高水準にあり、過熱感は否定できません。この「過去の常識を覆す」数字は、いったい何を物語っているのでしょうか。 (バフェット指数の押し上げ要因1(「マグニフィセント・セブン」の隆盛)) 主因のひとつは、「マグニフィセント・セブン」の巨大な時価総額です。NVIDIA、マイクロソフト、アップルなどの時価総額は3兆ドル超の企業もあり、合計で20兆ドル規模に達するとされます。わずか数社で中国のGDPに匹敵し、米国GDPの相当割合を占める規模です。過去の経験則に照らせば、水準訂正(バリュエーションの見直し)が生じても不思議ではありません。 もっとも、ここまで時価総額が膨らむ過程では、致命的な事業リスクを抱えながらもそれを乗り越え、卓越した経営能力と業績を積み重ねてきたという事実も見逃せません。近年はAIバブルの象徴と見る向きもありますが、AIデータセンターへの巨額投資競争が何十兆円規模の資金循環を生み、将来的な歪みへの懸念から2000年のITバブル再来が囁かれています。他方で、これら企業は強固な事業基盤と戦略を備えており、当面は良好な決算を維持する可能性が高いとも言えます。市場がこれら銘柄を今後どのように評価していくかは、引き続き注視が必要です。 (バフェット指数の押し上げ要因2(大規模金融緩和による通貨発行と債務の肥大化)) 「マグニフィセント・セブン」の膨張の背景には、リーマンショックやコロナ禍後の大規模金融緩和による余剰マネーの拡大があるとされます。一方で、経済規模を超える通貨供給や債務増は国を危機に陥...

江戸時代の人々の生活から見る資産形成の普遍的法則

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 江戸時代は「士農工商」という身分制度により固定化された社会と思われがちですが、実際には身分に関わらず、才覚次第で巨額の富を築ける実力主義の側面も持ち合わせていました。当時の成功事例を分析すると、現代にも通じる資産形成の法則が見えてきます。 1.普通の商人が事業を大きくするには ① 江戸などの市場を活用 地方で小規模な商売をしていた商人が、食料・衣料・雑貨など消費需要の高い「百万都市」江戸を相手に商売を展開。 ② ニッチ市場の開拓 大商人が扱わない特殊な商品(薬種問屋、古着商、傘や下駄の修理業など)に着目し、徐々に規模を拡大。 また、商品の品質向上や独自の工夫で差別化を図る。例:菓子商が独自製法で人気商品(羊羹や煎餅など)を生み出す。 ③ 倹約と再投資 利益を生活費に使わず、事業拡大に再投資。江戸時代の成功商人は倹約家が多く、贅沢を避けて資本を蓄積。 2.普通の農家から地主になるには ① 節約と余剰資金の蓄積 自作農が倹約して余剰資金を蓄え、隣接する土地を買い足す。江戸時代は貨幣経済が浸透し、米や副産物(菜種油、綿花など)を販売して資金を増やす。 ② 困窮農民の土地を取得 凶作や不作で困窮した農民が土地を手放す際に買い取り、徐々に土地を集積して地主化。 ある程度の規模になると小作制度を活用し、買い集めた土地を小作人に貸して年貢や地代を取る。   (地主は農業経営よりも金融・土地経営に近い存在へ) さらに、村役人や庄屋などの役職に就き、情報や人脈を利用して財産を拡大。 ただし、村八分などの掟を潜り抜ける必要があり、信用・協調・規律遵守が不可欠でした。江戸時代の農村は年貢負担の連帯責任が基本で、勝手な行動は許されなかったため、地主まで上り詰めるにはしたたかな対応が求められました。 3.武士は現代の公務員 武士は現代の公務員に近い存在でしたが、資産形成の観点では不利な立場にありました。 武士は藩から「扶持米」や「俸禄」を受け取り、基本的な食糧は確保されていました。俸禄は米で支給されることが多く、飢饉でも藩が武士への供給を優先したため、直接的な飢えなどは回避されました。 しかし、俸禄がインフレに弱い固定制だったため、米価高騰時には現金収入が減り、生活は困窮。下級武士は借金や質屋通いが常態化し、副業(傘張り、提灯作り、習字の師匠など)でしのぐケースもありまし...

個別株投資こそ人生の至極の時間

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 資産運用としての一般論的な株式投資には、いささか疑問を抱かざるを得ない。マネー雑誌では、株式投資のリスクを意図的に無視するかのように、まるで社債や預金のような貯蓄商品として扱っているように見受けられる。そこでは、市場が右肩上がりに推移することを前提とし、定期預金のような資産増を見込んで投資計画が立てられている。しかし、株式投資において年利10%を目標に運用するといっても、市場はまるで獰猛な生き物のように、投資家のそういった期待を裏切り続ける。皮肉な事に、投資家がそうした裏切りに根を上げたころに、ようやく株価は投資家の思うような動きに変転するものだ。株式投資は定期預金とは似て非なるもので、株価が将来どのような動きをするかなど誰にも予測できない。2倍になるかもしれないが、半分になるかもしれない。このような不確実性の高い投資を、国が推奨しているという皮肉さが、現実の世界には横たわっている。 (「将来期待」という株価上昇の根源)  株価は企業の事業成績で決まるものだが、実際の動きは、その銘柄の将来への期待感に大きく左右される。同じ決算であっても、将来期待が高い企業の株は大きく上昇するが、期待がないと横ばいか下落傾向に推移する。 この将来期待の対象は、主に以下の二つに分けられる。 ・将来性のある産業のスタートアップ企業 ・成熟はしているものの、確実に売上と利益を伸ばしている企業 こういった分析は、投資家にとっては、「言うのは易し行うのは難し」である。素人がこれらの将来期待がある銘柄を見つけても、その多くは既に玄人投資家がずっと前から買い込み、成長期待を超えた価格が形成されているのが常だ。つまり、将来期待と投資タイミングは別物で、これらの銘柄を単純に購入しても必ずしも儲かるということにはならない。 (情報弱者としての一般投資家)  投資家が肝に銘じなくてはいけないのは、どの企業も、長期にわたってバラ色の経営を続けることは不可能であるということだ。企業は常に何らかの深刻な問題と戦っているのである。また、株価というのは、理論上の値で収まることは稀で、大抵は高すぎるか、安すぎるかのどちらかにブレてしまう。このため、投資家はファンダメンタルやエコノミスト評価などをもとに、どれほど綿密な分析をしても、ちょっとした決算の変動で株価が3割から4割下落し、あっさりと含み損を抱えてしま...

日銀の利上げは「真面目な中間層」への“ご褒美”に変化

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(官邸との「共鳴」で動き出した利上げの機運) 植田総裁と高市総理の11月18日の会談を契機に、日銀高官から利上げを示唆する発言が相次ぎ始めた。この一連の動きは、政府側が金融政策の正常化へ向けて一定程度の容認姿勢を示したことの表れと推測される。  「景気認識『日銀と食い違いない』 植田総裁の早期利上げ示唆で―片山財務相」 https://www.jiji.com/jc/article?k=20251202 00457&g=eco (植田総裁が懸念する「欧米の轍を踏まない」政策) 「日銀・植田総裁『調整が遅れると混乱引き起こす』利上げが後手に回らないよう対応する考え示す」 https://news.yahoo.co.jp/articles/3a555561615e8065dcba30c1ad371a41762b06bf ここで注目すべきは、植田総裁は「現在の金融市場はまだ緩和的な状況にあり、アクセルを踏んだ状態だが、その踏み方を調整している」と述べ、「緩和度合いの調整が遅れれば欧米のように高インフレに陥り、政策金利を4〜5%に引き上げざるを得なくなる」と警鐘を鳴らしたことだ。 この発言は、前回までのデフレ懸念を一掃し、これまでの日銀会合が政治的な動向を強く意識して運営されてきたことを示唆する。責任を最小限に抑えつつ、政策を前に進める――まさに秀才としての面目躍如と言えるだろう。 (物価高に苦しむ庶民と「新たな格差」への政府のジレンマ) 高市総理は従来、金融緩和派であり、利上げには強硬に反対してきた。しかし、今回容認した背景には深刻な物価高の収束を図る狙いがある。物価高は政権支持率に直結するからだ。 ただし、現在の日本経済は20年前のデフレ期とは構造が大きく異なる。株高・不動産高騰で富裕層の資産は厚みを増し、インバウンド需要は海外との物価差を利用した値上げを容易にした。その結果、庶民が物価高のしわ寄せを一方的に受けている構図は欧米と共通している。  とはいえ、安易な金利引き上げは、競争力のない中小企業や多額の住宅ローンを抱える層に影響する。政府の本音としては、金利をあと2回程度引き上げ程度で押さえたいというところであろう。しかし、歴史が教えるのは、インフレ経済へ一旦転換すれば、そう簡単にその勢いを止めることはできないという厳然たる経験則だ。 (FRB議長交代という...