投稿

ラベル(米国経済)が付いた投稿を表示しています

OpenAIやNVIDIAの循環取引について考える。

イメージ
 AIは未来を照らす革新的な技術であることに疑いはない。しかし、実用化という観点では、依然として黎明期を脱していない。2022年頃には、コロナ特需の終焉とともにビッグテック企業の減収・減益が顕著となり、株価も大きく下落した。当時、多くの投資家は2000年のインターネットバブル崩壊を重ね合わせていた。 その後、マイクロソフトがOpenAIとの連携を強化し、AIの実用化に舵を切ったことで、ビッグテックの株価は反発。GAFAM各社は軒並み上場来高値を更新し、AIバブルが形成された。その中でも、最も注目を集めたのはNVIDIAである。NVIDIAはAIバブルの恩恵を受けて時価総額4兆ドルを突破。これは日本のGDPに匹敵する規模である。しかし、その背景には、NVIDIA・OpenAI・マイクロソフトなどの間で行われるクローズドな循環取引やベンダーファイナンシングの存在が指摘されており、業界全体の売上や利益が実態以上に嵩上げされている可能性も否定できない。 (NVIDIAの循環取引)  以前からNVIDIAの成長には循環取引が絡んでいると噂があった。最近の事例では、①NVIDIAがOpenAIに最大1000億ドルを投資→②OpenAIがOracleにデータセンター構築を発注→③Oracleがその資金でNVIDIAのGPUを購入→④NVIDIAがOracleからGPU販売代金を受け取る。 このように、NVIDIAが出資した資金が巡り巡って自社の売上として戻ってくる構造であり、ある試算では100億ドルの投資で350億ドルの売上が見込まれる可能性がある。 今回のようにNVIDIAの循環取引が白日の下にさらすところまでに至ったという事は、NVIDIAが事業の成長性に苦慮し、なりふり構わず投資をしている側面が推測される。 この手法は、2000年代初頭のCisco、Lucent、Nortelなどが通信機器バブル期に用いたものであり、バブル崩壊後に大きな損失を被った。これがNVIDIAにも当てはまるかどうかは、現時点では不明であるが、多くのメディアで疑問符を投げかけられている。このため、NVIDIAの次なる循環取引に対し、投資家は容認しない可能性がある。 OpenAI、NVIDIAと200兆円「循環投資」 ITバブル型錬金術に危うさ   (OpenAIの資金構造と提携戦略) マイクロ...

NYダウ1123ドル安 10日続落、「タカ派的利下げ」に失望の記事について

「トランプ相場」帳消し、楽観冷ますFRBショック  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN18EUI0Y4A211C2000000/ 記事の内容は、 ダウ平均は12月4日に終値で初の4万5000ドル台を付けた後に下げ続け、1974年10月以来の10日続落を記録した。この間に計2687ドル(6%)下落した。前日までは構成銘柄の1つの医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの株価急落というやや特殊な事情が下げの主因だったが、この日はより広範囲な銘柄に売りが広がった。 その理由をFRBのこの日の利下げ実施と今後のペース鈍化の組み合わせを「タカ派的な利下げだ」と指摘し、市場では次回の25年1月の会合でFRBが利下げを見送るとの観測が強まっている。同氏は次の利下げ実施までの一時停止の期間が長引くほど「政策の不透明感が増し、25年の金融市場をより不安定にするだろう」としている。 私から見ると、PERを許容範囲を超えていたのでその訂正に過ぎないと感じている。株式は企業業績にリンクするという逃れられない事実から鑑みると、米国の相場のPERは、トランプ大統領のご祝儀相場もあって30を超えるなど過熱気味であった。相場は、その訂正をするタイミングをうかがっており、それが単にFRBの利下げ政策と重なっただけにすぎない。売りが一巡すれば、今度は12月期の決算を見定める動きに代わり、増収増益が確保されれば相場の回復は早く、場合によっては最高値を更新することになる。さらにトランプの花火政策が実行されれば新たなる期待感を誘うことになる。  しかし、こういった書き方も月並な評論家的な意見にすぎない。決算において、この10年間はGAFAMを中心としたマグ二セントセブンが予想を上回るほどの決算を四半期毎に発表することで、このような憂いを潰し続けてきた。今回も高確率で同じような動きになると感じている。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサイトに掲載された情報によりなされた判断及び一切の行為は、閲覧者の自己責任においてなされるものとします。

トランプ政権後の金融市場

イメージ
   11月の大統領選でトランプが圧勝し、第47代米国大統領に選ばれた。今回は、トランプ政権の施策から見た金融市場の動向を予想してみよう。 (既存勢力との闘い)  今回の選挙で圧勝という民衆の支持を得ても、トランプ政権は多くの敵と対峙しなくてはいけない。構図としては、トランプ政権vs米国官僚、民主党、民主党を支持する主要メディア、そして西欧の主要メディア  ワシントンで働く官僚の多くは民主党支持だ。トランプの政策に対し、否定的な内容をメディアに流して、民主党が世論に訴えかける。外交においても、西欧メディアがトランプに対し否定的な報道する。米国内でのメディアでは、FOX SNS(X) vs ABC、CNNなどの構図でこれら論争を戦っていく。Facebookやgoogleはトランプ政権からの報復を恐れ中立を崩さない。  さらに悪いケースでは、トランプの過激な政策に対し共和党内の反発が予想される。そういった構図を読みとれば、主要閣僚はトランプと思想の近い、比較的狂犬のような人物を配置するのは当然と言えば当然である。 (スーザン・ワイルドの役割)  トランプは第一期政権で多くの閣僚が反旗を翻して、ボロボロの運営を余儀なくされた。民主党に近い民間の有能な政策者や官僚がスパイのような役割でトランプ政権に入り込んで内側から政権に打撃を与えていたからだ。スーザン・ワイルドはホワイトハウスに出入りする人物をチェックする門番のような役割で、トランプ政権内の適正運営を統制するという点で非常に重要な役割を任せられている。 (改革の実現性)  このような敵の多い戦いにおいて、4年後に米国が大きく変貌するのかはわからないが、米国国民はこれ以上の資産格差を容認していないのだけは間違いない。この辺の見通しは、中間選挙での共和党の勝ち具合にかかっている。圧勝するようなことがあれば、多くの抵抗勢力が意見を言えなくなりトランプは国民からの信任という大義名分で残り2年で大胆な改革を強行するであろう。中間選挙までの2年間はトランプ政権と抵抗勢力との押し問答が続く構図が予想される。トランプ陣営もそれを意識して政策を打ってくるのは間違いなく、国民受けの良い減税やインフレの鎮圧を急いでくるだろう。 (金融相場)  相場という点では、基本的には右肩上がりである。投資家は政治ニュースに肩入れして振り...

FRB金融政策、0.5%の大幅利下げ局面に突入

イメージ
 9月18日にFRBは、0.5%の大幅利下げ決定をした。これはインフレ率が、21年の10%弱から2.6%と大幅に低下した事と「雇用の最大化を支える」という名目であるが、私自身は大統領選挙において民主党の追い風になることを踏まえた政治的圧力も感じている。なぜなら、トランプは大統領選が終わるまで政策金利を変更するなと叫んでいたのと対照的な行動に出たからである。  このことで、トランプが大統領になったら、この件をトリガーとしてトランプはFRBに相当な圧力をかけてくる可能性は高い。  私は米国の高インフレが70~80年代の米国経済のようなインフレ経済への変換のトリガーになると思っていた。実際、インフレ率10%弱の頃は、1980年代前半のボルカーの高金利政策を取り上げるメディアも少なくなかった。さらにサマーズの下記発言もそれに同調するものだと私は感じていた。  「私(サマーズ)は世界経済がグローバル化することと生産性の改善から世界経済は長らくはデフレ基調で推移すると考えていたが、バイデン大統領が計画する2兆億ドル近い景気刺激策は、世界経済をデフレからインフレ基調に転換させた。あきらかに政策は行き過ぎている。これからは、インフレ率は平均2%に戻ることはなく、4%程度で推移するであろう。」  と述べていた。私もこの意見を信じていた。しかし、米国経済のインフレ率が想定以上に収束し、サマーズもこの持論を撤回し、パウエルの金融政策を称えるまでになった。  つまり、著名な経済学者の経済予測も結局のところ過去の経験則に対する警告の域に過ぎないということだ。これは深くは調べていないが、いつの時代もその当時の最高峰の知性を持った学者などが警告するメッセージは意外と当たっていない。言い方を変えれば、現場の政策担当者はこういった事を踏み台にして高度な政策運営をしているという事に他ならない。今回のサマーズの発言の変遷の理由は、これまでの経済学の研究は、過度な金融緩和が引き起こす未知の経済事象にまで及んでいないということであろう。つまるところ、米国の政府高官の政策担当者は、実際の経済運営は経済学の理論の先を行っており、政策者はこういった警告を踏まえながら様々な経済統計情報をそれぞれのチームの視点で分析したのを政策担当者間で擦り合わせながら、未知の領域で経済運営を行っているということであながち間...

トランプ政権誕生による世界経済への影響(7月時点)

イメージ
 大統領選のテレビ討論会によって、バイデン政権が劣勢に立たされ、7月15日襲撃未遂事件でトランプ再選への勢いが増してしまった。そうなるとトランプ政権の現実味が帯びてきた。  不思議なことに、今回の選挙では米国マスコミがトランプを酷評していない。そして、米国経済界の著名人がトランプ支持を明言し始めた。こういった事はトランプの第一次政権の時には見られなかった。これは、バイデン政権でダウが最高値を更新しているものの、米国民の殆どはその恩恵を被っていないことが示唆される。その現状に対し、バイデンを厳しくたたくことをしないが、多くのマスメディアや企業経営者も同様の意見と推測される。賛否両論かもしれないが、前回トランプ大統領就任時の経済政策に対して、米国民からは一定の評価があるものと推測される。 しかし、この襲撃事件後、トランプは様々な政策を発表したが、その内容に疑念を抱くマスコミは、結局のところ、次の民主党候補者であるハリスを全面的に押し始めた。 米国の知識層とトランプは水と油の関係で、両者が融合する事はほぼ不可能なようだ。 〇米国経済への影響 トランプ大統領は、米国第一主義を掲げる。そのため、基本的には米国民に対し利益の生まないことは行わない。そして、彼は政治家ではなくビジネスマンである。米国経済や株式市場が下降気味になることはない。ただ、その中身はバイデン政権とは異なり、米国の保守層に恩恵を与える政策に終始するので、米国の内需銘柄が恩恵を被る可能性が高い。その一方、GAFAM内でも前回の選挙時にトランプに厳しい対応をしてしまったメタ(フェイスブック)などには顔色の悪い施策を打ち出してくる可能性がある。それがTIKTOKの存続であり、まさしくフェイスブックに利を与えない姿勢をとっている。  金利政策については、トランプはトランプなりの手法で金利を操作するであろう。金利を引き下げてもインフレ率を高めないように政策を打ってくるのは間違いない。その一つとして、世界各国への援助を減らして国内経済に投入する。それだけでも相当な額になる。 日本政府に 対しても、駐在米軍の軍事費に多額の負担を求めてくるであろう。それ以外にも、ビジネスマンとしてのトランプ独自の奇策を売ってくる可能性は十分に高い。 〇日本経済への影響  日本においては、円安の終焉。これは間違いなく起きる。しかし、ど...

ハイテク銘柄バブル崩壊の兆しの現象を検証 220423

イメージ
  今年の世界相場は、高インフレが起因の金融引締め圧力、そして中国のゼロコロナ維持によるロックダウン、と相場の下押し圧力に事欠きません。  幸い、ダウやナスダック等のインデックス指数は、そんな中でも持ち堪えており、大きな下落には至っておりません。日本においては、円安進行という神風でこれら下落分を相殺しているだけでなく、逆に資産が増えている投資家も少なくありません。  しかし、相場の変調はこれから説明する通り地中深く静かに進行しています。そのトリガーは、どうもハイテクバブルを起した新興 IT 企業のようです。 1.  ネットフリックス、ペイパル  これら銘柄は綺麗にバブル崩壊のチャートを描いています。この分だと会社の業績に関わらず、過去に多くのバブル銘柄が歩んできた株価の長期低迷の軌跡を歩むことになりそうです。 2 .   メタ、エヌペディア   これら銘柄は、 GAFA の一角と半導体の盟主というある意味大物です。しかし、株価は冴えません。メタに至っては GAFA の一員と言えども、事業範囲の狭い事が禍いしているのか、ネットフリックスやペイパルと同じ立ち位置で扱われているようです。一方、エヌペディアは高すぎた PER の是正が絡んでいるようです。 3.アップル、アマゾン   王者の風格が漂っているのか、株価への影響は殆どと言ってありません。アマゾンは昨年度から成長鈍化が決算に表れていますが、株価への影響は今のところ軽微です。次決算も期待薄ですが、株式分割と自社株買いの発表のおかげで下値圧力がありません。アップルに至ってはすこぶる堅調です。 これら企業は世界中で最も英知の集まった超超優良企業です。なので、今後の動向は簡単には予測できません。 4 .   まとめ   上記の通り、局所的ですが IT バブル銘柄の崩壊は始まっています。世界は深刻なインフレ下にあり、世界中の中央銀行が金融引き締めに動いています。これは新興 IT バブル企業にとっては大きなマイナス要因です。今後は、何処まで裾野が拡っていくかが焦点です。  この辺も踏まえ、ハイテク企業の今後の決算等の動向を注視していく必要があります。 追記)当時、私は、チャートを眺めながら2000年前半のIT...