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ジレンマを抱える超優良企業SMC

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 SMCは空気圧制御機器を軸とした自動制御機器のメーカーであり、自動制御機器は、基本型約12,000種、カスタマイズ品を含めると約700,000品目という膨大な製品群を誇っている。 (SMCの概略) 1959年4月に焼結金属工業株式会社を東京都千代田区にて設立。創業者は東京タングステン株式会社に勤務していた技術者大村進氏であった。創業翌年の1960年には空気圧機器の製造に参入し、部品から完成品へと事業領域を拡大した。これは、工場内のオートメーションの進行とともに引き合いが増大し、導入コストも安いことが他の自動化機器(機械制御・油圧制御)と比較されたときの優位性であった。1988年の株式上場の時には、売上高の90%が空気圧関連製品になっていた。 SMSの創業期から専務として社の成長を支えた髙田芳行氏が、1989年に社長就任から約30年超にわたりトップダウンでSMCの経営に従事する。その間に、空気圧機器の国内シェアが7割弱で世界シェアも3割強でトップシェアを獲得し、この分野においてはドイツのフェスト社 (Festo) との世界2強を構成するまでに躍進した。2019年には、ご子息の高田芳樹が二代目社長に就任し現在に至る。 (無双状態の経営力)  SMCはまさに無双状態の堅牢なビジネスモデルを有しており、誰がやっても優良企業を維持できてしまうほどである。  これらは、前社長が新製品の開発や生産技術の研究に没頭しながら、徹底的なコストダウンの追求を極限まで成し遂げた結果であり、メーカーでありながら営業利益率は25%を維持し、自己資本比率に至っては90%まで高い。製造業に必要な開発・研究においても単年の利益で十分に吸収できてしまっている。さらに株式発行数も抑えているため極限に近いような高値で株価も推移している。まさに、日本の製造業においてトップレベルを競う優良企業である。 それだけでなく、空気圧機器業界の世界市場動向は、2022年に約697.3億ドルとなり、予測期間中に年平均成長率7.13%で拡大し、2029年には1,129.2億ドルに達すると予測されている。これをそのままトレースすれば、SMCは苦労することなく増収増益を達成やすい環境下にあるということである。 (創業2代目のボトルネック)  この会社の次なる成長へのボトルネックは2代目髙田芳樹社長の経営力であろう。結...

投資家から見たフジメディアHDの今後

   (フジテレビの隆盛)  フジテレビの隆盛は、1980年代に鹿内社長がこれまでの昭和的な硬派な番組作りから、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだナンパな路線への転換をきっかけに、民放テレビ局の地位を上げていった。番組制作においては、比較的スマートなお笑いタレントを積極的に起用し、女子アナをアイドル路線に変更させ、ドラマなどでは高級マンションを舞台に人々の憧れを誘うトレンディドラマを切り開くことでフジテレビの地位を確立していった。 こういった取り組みは、バブル景気に向けて日本人が世界一の金持ち国に差し掛かっていくのに合わせて、人々が求めるより洗練された生活スタイルに適合していき、フジテレビは絶頂期を迎えることになる。その基礎を確立させたのが紛れもなく現相談役の日枝久となる (停滞) バブルが崩壊して就職氷河期が訪れると若者は社会の厳しい現実に直面することになる。 2000年頃になるとバブル世代も中年に差し掛かっていく。 その数年後にはインターネットの普及で若者のコミュニケーション場がネットに移行するようになり、人々の趣向の多様化が顕著になる。人々は、テレビからの均一化された情報を求めるのではなく、ネットから自分の好きな情報だけを得ようとしている。 フジテレビの経営陣はこういったトレンドの変化を真正面から受け取れずに過去の成功体験に執着した番組制作を続けている。もう、子供、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になってお茶の間で同じ番組を楽しむ時代ではなくなったことを意識していないように。こういった時代錯誤こそ、 日枝久の院政による弊害であることは紛れもない事実である。 (コングロマリットによる経営の分散化) とはいえ、 日枝久 はインターネットの台頭に備えて、フジメディアHDとしてコングロマリット経営に軸を移すようになった。テレビ業界の収益低下を補填するような事業体制を着実に構築していた。今回の不祥事の顛末においてもフジテレビ自体は大きな打撃を受けるが、親会社であるフジメディアHDが経営危機に陥るまでのレベルにならない。このように分散化は図っているものの、 フジメディアHDの役員は、フジテレビの有能な番組制作プロデューサーに占められている。日枝氏には、 フジテレビこそ フジメディアHDの中核から外したくないのであろう。 (今...

テルモ 経営のプロが担うグローバルニッチ経営

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テルモは、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で多様な医療現場、製薬企業などに製品やサービスを提供する医療機器メーカーである。当社の飛躍は、1990年代ごろから技術力の高いカテーテルが大きく伸長したのと海外企業のM&Aを繰り返すことで事業を拡大してきたことである。  テルモは、株価については浮き沈みを繰り返しているが、医療機器分野のグローバルニッチ市場で優位性を保つことで、着実な売上成長、かつ高財務を維持し、長期的に上値を切り上げてきた優良企業である。 (参入障壁の高いビジネスモデル) テルモの医療機器メーカー世界ランキングは15位(約0.69%)、最大手のメドトロニック(2兆円弱)。ボストンサイエンティフィック(1兆円強)と比べると規模面での小粒感は否めないが、カテーテル治療に使うガイドワイヤーのグローバル市場シェアは60%、血管に入り口をつくるシースイントロデューサーは45%などで世界シェアトップを獲得している。  一般に、医療機器は承認取得が難しく、新規参入からその業界内に大きく食い込んでいくハードルは高い。さらにニッチ分野という大手企業が参入をためらう領域で優位性を発揮しているため、テルモの事業には堅牢性がある。今後は高齢化社会の進展による手術数の増加も見込まれ、テルモにとってのビジネス環境は良好なものとなっている。 (巧みな事業拡大戦略) テルモは、1999年以降、以下に代表される買収で、急速にグローバルニッチ化を進めてきた。 1999年 米国3M社から人工心肺事業を譲受 2002年 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社 2006年 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社 2011年 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社 2016年 シークエントメディカル(脳動脈瘤用塞栓デバイスの開発・製造・販売) 2017年セント・ジュード・メディカル(大腿動脈穿刺部止血デバイスの開発・製造・販売) これらを通じて、テルモの連結子会社は9割以上が海外法人となり、売上海外比率は70%に及び、その内訳としてアメリカがトップで、欧州の比率が高いなど事業エリアの分散化が程よく図られている。  (プロ経営者による統治)  佐藤慎次郎元社長そして鮫島光社長は、ともに東亜燃料工業出身で、米国流の経営が...

ダイフク 総合マテハンの今後

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 ダイフクは、マテハンの大手である。当企業は、工場内の運搬の自動化では世界トップレベルの技術を有している。新型コロナウイルス禍で電子商取引(EC)向けが伸長したことから、市場の成長期待が膨らみ一時期はPER50倍以上で推移した。これら事業はこれから更なる発展が見込まれることから、ダイフクへの恩恵も期待される。 (直近の状況待) コロナ禍も静まり、人々は街でショッピングをするようになり同社の株価もPERは20~25倍前後で推移している。  主力の搬送機器は小売り向けなどの需要が旺盛で、空港施設向けは低採算であるが、航空需要が回復する中で人手不足解消による需要が見込まれている。自動車施設向けは、ハイブリッド車(HV)の混流生産など更新需要が見込め、半導体施設関連は、AI関連の後工程向け搬送システムの需要拡大が見込まれる。技術開発で先行するダイフクにとっては当面の安定成長が期待できる見込みだ。 出典 「マテハン(マテリアルハンドリング)業界の世界市場シェアの分析」 https://deallab.info/material-handling/ (規模拡大の課題)  売上高全体に占める海外の比率が7割近くあるが、海外の認知度は高くない。シェアは5%前後だ。収益率は、国内は10%強に対し、海外はその半分に甘んじている。 これ以降の発展は、現地企業との連携や買収による受注高の拡大をテコにダイフクの強みとなる技術力を発揮することが理想的だ、その際、現地企業の従業員をダイフクの従業員レベルまで教育し、スキルを引き上げていく必要がある。現地法人社員に惜しみなく特殊ノウハウを移管することは、ダイフクが得意とするマテハンの特殊技術を一般に公開するのと同じであり、特にチャイナ系の優秀な人材は、その後自ら起業し、ダイフク以上の巧妙な利益管理をすることで、ダイフクより安く技術力も高い企業が現れてくるのは自明だ。  このため、はじめは業績好調をけん引する要因になるが、10年もすれば類似の企業が特に中国系に関して現れ、ほかの産業と同じようにその企業が世界を席巻しています。中国は14億人の国家であり、日本と比べ物にならなく多くの優秀な人材がいることを忘れてはなたない。 日本の製造業において、中国や韓国に猛追されたのは総合製品であり、部品や材料分野は両国とも追いついていない。マテハンについても...

ユニ・チャーム 欧米ブランドとの勝算

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 ユニ・チャームは、生理用品、紙おむつ(乳児用、大人用)などの衛生用品の国内トップメーカーである。この分野は赤ちゃんから高齢者まで様々な年齢層だけでなく、果てはペットまで広範な領域にまたがっており、日用品に近いがゆえにブランド力の構築が経営上の重要なファクターになる。ユニ・チャームは、アジアやアフリカなどの発展途上国を中心に、これら国の黎明期にブランド力を確立させ、発展期に移行する過程での需要拡大を享受する戦略を打ち立てている。 (ユニ・チャームの市場動向)  おむつ市場における大まかなシェアは   1位 P&G 16.6% 2位 キンバリークラーク14.1% 3位 エシティ 11.0% 4位 ユニ・チャーム 7.5% 5位 オンテックス 3.1%  である。ユニ・チャームのシェアはアジアでの強みを発揮することで世界シェアの上位に食い込んでいる。同社の海外売上比率は、総売上の7割弱で、さらにその7割をアジア諸国で占めているが、巨大市場である中国に大きく依存することなく、様々なアジア諸国でのビジネス展開に成功している。  この企業の重要な戦略として、アジア地域などの発展途上国に対して、衛生教育を施すことでユニ・チャーム製品への愛着を促す戦略をとっている。こういった草の根ベースでの取組は商品の信頼性を強固にするものであり、そういった点では、ヤクルト同様に欧米型のマーケティングに引けを取らない独自戦略を打ち出している。 (ユニ・チャームの決算状況)  ユニ・チャームの決算は常に増収増益を成し遂げている。この企業は、海外事業に対して順調に売り上げを伸ばしていることから、日本における最優良企業の一つとして扱っても差し支えない。この会社は創業家である高原氏の優れた経営力に支えられており、今後も増収増益の決算を続けておける可能性は非常に高いことから、長期的には綺麗な右上がりが予想される。 (ユニ・チャームの今後)  ユニ・チャームの事業分野にブランド力の強化は必要不可欠であるが、欧米メーカーと同じ立ち位置でのマーケティング戦略をしたら、やがては敗北を強いられ欧米メーカーに飲み込まれてしまう。ブランド戦略においては欧米以外の企業が優位性を保てた例はほとんどない。ユニ・チャームは、当面の間、新興国でブランドを高めながらそれら国の所得上昇に連動するように業績を上向けてい...

日本株投資銘柄の選定基準

1. 長期的な視点での日本 株投資  東証は、戦後の再開からバブル景気となる 1989 年までの 40 年間に 300 倍近い上昇を遂げ、それ以降の 25 年間は日本経済の成熟化とともに下降トレンドとなった。 2013 年のアベノミクスにより上昇トレンドに転換し、現在に至っている。歴史という点では、 1989 年のバブル高値は戦後の高度成長期の終焉を示唆するものである。今の日本は産業構造という点では、高度成長期の構造をなだらかに引きずっているので、そういった意味では下降トレンドは未だに継続しているとはいえるが、アベノミクスでは未曾有の金融緩和というマジックにより、日経はバブル高値を超えて指数という点では、上昇トレンドに転換した。しかしながら、産業構造という点では、高度成長期に築いた技術的資産があまりにも大きいため、旧来の構造を維持しながら緩やかな改革にとどめている。 2.技術的ポテンシャルが株価に紐つかない日本企業 日本の製造業には世界有数の技術力やシェアを獲得している企業が無数にあるが、そういった優良といえる 企業でさえ、利益水準が低く株価が停滞していることが少なくない 。 日本企業の経営者は日本国としての社会的責任を強いられるため、株主より従業員の雇用や地域経済の安定性を求められてしまう。大抵の経営者は経営のプロに徹することなく労働者代表の立場を貫いているため、経営層と労働者層の境目がはっきりしない。米国流のトップダウン式資本主義と一線を画している。そのため、会社として成長戦略を打ち出しても、それぞれの部署が自分たちの自己権益を守る部分最適に走ってしまう。人事においても後先を考えない猿山のボス猿争いのような配置を当たり前のように繰り返してしまう。 ここでジャック・ウェルチ を添えておく 「自分の地位を守るために嘘をついたり、昇格した同僚をうらやんだり、人になにかをさせるために無駄なルールをつくったりと、そういう「さもしい体裁を涼しく整える魂胆」が会社に政治を持ち込み、スローダウンさせ、やがて企業が死んでいく」    このことは日本株投資において、経営のプロに徹することができるオーナー系企業などの一部優良企業に投資対象は限られてしまう事を示唆している。   3.日本株投資の選定基準 日本の人口推移を踏まえれば、...

総合商社の銘柄分析 

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    総合商社は、戦前・戦後と続く日本を代表する企業である。他名門企業の多くがバブル以降に脱落し斜陽になりかけているのを尻目に、今もって王者の地位を守り続けている数少ない名門企業群である。そして総合商社は、かつての仲介業から新規ビジネス領域に果敢に挑戦するベンチャースピリットを兼ね備えた投資会社に変貌した。企業の経営リソースを最大限に発揮させるためにも、総合商社は世界を股にかけたビジネスイメージと日本最高峰の給与水準を流布することで、日本屈指の優秀な人材の確保に余念がない。 〇日本経済を背負ったコングロマリット  そういったイメージと裏腹に、旧態依然のような偏向的な大学閥の社員採用。そして日本株式会社の激務、熾烈な社内政治。どう見ても、旧態依然とした日本特有のエリート体質の染みついた社風でもある。総合商社は、10近くのカンパニーを抱える超コングロマリットである。これらカンパニーのほとんどは戦前の財閥の流れを汲んだまさに日本国の番頭のような事業であり、各々のカンパニーがそれなりの利益をはじき出せているが、逆の視点で見れば殆どの事業は成熟している。このため、株式市場は、総合商社に対して、成熟した日本経済の番頭かつ成長余地のない巨大なビジネス領域を理由に低PERの評価を与え続けている。 〇資源ビジネスにしか頼れない三菱商事、三井物産 一般に、一つのビジネスを会社の基幹事業までに成長させることは至難の業である。餅屋は餅屋を脱却できない。 ここ20年程度は、資源高に支えられて総合商社は未曽有の利益をはじき出した。これを一本足打法のように危険視する見方もあるが事業の規模を考慮すれば致し方ない、逆に、投資対象として妙味が十分にあることを物語っている。鉄・銅・石炭・石油・天然ガスなどはその需要が上がることはあっても下がることはない。需要の波があるかもしれないが、資源市況如何で大儲けできるビジネスを持っていることは相当な強みと言える。 総合商社の場合は、事業規模が大きいので、コンビニやファッションブランドなどの成功においても、それら事業だけでなく、やはりそれらの原材料や物流を牛耳ることに旨味が生じる。これら時代とともに人の趣向が変化してビジネスモデルが衰退化するが、総合商社はそうなれば次のトレンドに移行し、物資を提供し続ける、実際のところ、大なり小なり総合商社の強みは商品の...

EV車業界のモータもいずれニデックがシェアを握ることになる

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   私の銘柄調査の一つとして経営者のインタビュー記事の探索がある。経営者の言葉の中には、経営に対する手腕とポリシーが散りばめられており、これと決算推移を重ね合わせたら会社の実像がはっきりと映し出されてくる。そして、今後の業績推移さえ推測できるようになる。 ニデック永守会長は 1973 年に日本電産を創業し売上高1兆円を超える大企業に育てた優れた創業経営者の一人である。ここでは日経BPのインタビュー記事から、永守会長が考える EV 自動車産業の企業戦略を抜き出し、ニデック株式会社の今後について考えてみることにした。 〇 EV 時代の到来 自動車産業は 100 年に 1 度の技術革新に直面している。もう EV 車の時代が来るということは、はっきりしている。今、米テスラが先を走っているが、従来の完成車メーカーと何が違うかと言うと、化石燃料の車を造ったことがない。完成車メーカーはまだエンジン車で稼いで EV 車で利益があるところはない。全部赤字。要するにテスラはエンジンというレガシーがないので身が軽い。さらに小型車は儲からないから高級車ばかりに力を入れて利益を稼いでいる。しかし、テスラのような高級車路線ではいずれ限界にぶち当たるだろう。 EV 車が隆盛を極める頃には、安い車を造るメーカーが台頭してくると踏んでいる。 〇 EV 車産業の今後 今までいろいろな事業分野で部品を販売してきたが、サプライヤーも競争相手も、お客さんも全部大赤字なんていう業界はなかった。 EV 車業界はそれでも値段を下げ続けて、中国では 300 社ぐらいが参入し 200 社ぐらいが潰れている。製造コストと販売コストが全く釣り合っておらず健全な競争にはなっていない。とはいえ、基本的には値段を安くすることが今後の EV 車普及のカギとなる。実際、電池の値段は年々下がっている。初期の携帯電話は肩からかけて電池が大きかったが、現在では技術革新によってこれほど小さくなった。すぐにとはいかないが、全固体電池とか新しい技術が出ているので電池は進化していく。またモーター効率もどんどん向上することで電池の使用量を少なくさせる。製造コストが大幅に下がったら、モーターなどの部品を買ってきて誰でもすぐに EV 車を造れる時代がやってくる。 〇ガソリン車の今後 プラグインハイブリッド( PHV ...

HOYA株式会社 その2 カリスマCEO引退による今後 

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HOYA株式会社の前CEO鈴木洋が22年6月の株式総会を持ってHOYA経営から一線を退きました。この経営者の凄いこところは、中堅企業に過ぎないHOYAに対し日本を代表する勝ち組企業にまで押し上げたことです。売上高が5千億円に満たない中堅企業にしか過ぎない企業の株式の時価総額を6兆円強まで引き上げた手腕には驚くべきものがあります。 実際、鈴木前CEOが就任した2001年当時の売上は3000億円程度です。それから20年の間、HOYAの売上高は5000億円程度にしか増えていません。しかし、非情ともいえるコスト削減と不採算部門の撤退により、HOYAは常に高収益決算を維持してきました。こういった高収益の事業体であるからこそ、ちょっとした売上増が多大なる利益増加を生むことになり、それが長期にわたってHOYAの株価を押し上げることにもなります。 2.後継者の課題 カリスマ経営者の後に更なるカリスマが登場する事は難しい。これは何をいっているのか。経営は教科書通りに進めてもその通りにいかないということである。優秀な経営者は、目に見えないところで些細な問題点を日々潰して経営を安定させていくのである。これは見える人に見える。見えない人には見えない非常に微妙な能力である。もう一つは、オーナー家やカリスマ経営者は絶対的な権力で経営をできるが、サラリーマン経営者は絶対的になれない。そうするとある程度の能力が発言力のある高級幹部の意見が通ることで人閥が生まれてくる。人閥による調整の積み重ねが会社経営を行き詰らせていく。そんな中では、前鈴木CEOが幾度も行っていた非情なまでの事業のリストラを今後も続けられるかに疑問が残る。 3.長期的には利益率低下の恐れと創業家復活 恐らくだが、2~3年は安定的な決算を残すかもしれないが、5年後にはHOYAの利益率の低下が懸念される。それは積み重なった負のファクターが表面化する時期と重なるからだ。ただ、HOYAという事業体を山中と鈴木家が手放すはずはない。おそらくだが、次の経営者は創業家に戻るであろう。しかし、鈴木前CEOと同世代の山中家とは関係が悪い。当然だが、前CEOは山中家に経営権を渡すと思えない。 創業家に戻すとしても、嫡男などの自分に近い人物を引き上げるはずだ。それをゆっくりと見定めている可能性もある。しかし、嫡男などの経営手腕も未知数であるが、かつての...

毎日の仕事の中に宝がある~金川千尋会長(信越化学工業株式会社) 

1 .信越化学工業の経営スタイル 信越化学工業は、日本を代表する超優良化学メーカーです。前回は、鈴木洋CEO(HOYA株式会社)を取り扱いました。HOYAは、大手企業が容易に参入できないニッチに焦点をあて、そこでガリバーになる戦略をとっています。  信越化学工業は、HOYAより市場規模の大きい分野で世界的なシェアと高収益を上げています。  経営モデルは、標準的な日本企業と変わらないオーソドックスなビジネスモデルですが、営業は営業力、製造は技術力という基礎力に注力を注ぎ、金川会長がそれをうまくコントロールするスタイルです。  はじめに結論付ければ、この会社は、金川会長が退けば普通の日本企業に戻る可能性が高いということです。他の大手化学メーカーと同様の道を歩んでいくということが想定されます。今の輝きは金川会長という稀有な才能に依存しております。   2. ウエルカムな老害  金川会長は、信越化学工業の塩化ビニル製造の中核企業である米国子会社シンテックの成功をきっかけに、本社社長にまで上り詰めました。これはセブンIホールディンクスの鈴木前CEOにも似た、半分たたき上げ的な出世の道筋です。  そして、社長に就任してからは、バブル崩壊後に関わらず、信越化学工業を大きく飛躍させ続け、気が付くば、90歳を超えても現役の会長職に就いています。  一見すると老害というマイナス面にも見えなくもないのですが、信越化学工業の事業をここまで安定したビジネスに育て上げた実績を考慮すると、社員からみたらウエルカムな老害ともいえます。  さらに、長期にわたって経営権を握っているからこそ、一般的な日本の大企業のように、サル山のボスザル争いで勝ち残った無能な経営陣の輩出を抑えています。これこそがライバルメーカー停滞をよそに好調を維持できる要因の一つではないでしょうか。   3. 技術力を大切にする精神  金川会長は技術者ではないのですが塩化ビニルの将来性について、相当しっかりとした考えをもっているようで、それは下記インタビューにも表れています。 ---金川会長のインタビューより---  設備投資の基本は「販売先行」です。製造したモノを売れる自信がなければ設備投資に踏み込めません。塩ビの設備は大きな投資が必要になりますから、慎重な判断が必要です。シンテックの工場が稼働を始めたのは197...

儲からないビジネスに手をださない。~鈴木洋HOYA㈱ 

  HOYA株式会社は、日本では最高ランクに位置する優良企業です。日本には珍しく、本気で株主向けの経営をしている数少ない企業でもあります。もし、貴方がこの株を長期保有していたら間違いなく、相当な恩恵を受けたことでしょう。実際、私のポートフォリオでもそれは証明されていました。   この会社の高収益の源泉は、 ・ニッチな産業のガリバー戦略 ・流行や時代に左右されないベーシック分野への傾倒 に事業を特化することであり、このポリシーの結実が  「能力がある人たちがやり方を変えながら一生懸命やってみても結果がついてこないのであれば、その事業はダメなんだろうと判断します。」 に表れています。まさに、日本株式会社の経営者に爪のアカを煎じて飲ませたくらいの経営力であるのと同時に日本企業への投資に対する一つのヒントが隠れています。その詳細をインタビューから分析していきます。  1.経営のスタイル 「この会社の経営における基本的な考え方は、1つの会社の中で小さい複数の事業を保有し、その中身を時代に合わせて変えていくというものです。今の事業は“歳”を取ったものが多く、収穫期に入っているので利益は出ています。ただ、次の20年を考えるとポートフォリオの入れ替えをしなければいけない時期に来ている。それが私の本業なので。」  ⇒鈴木洋CEOは、事業体をポートフォリオで表現しています。外資系投資家的な発想で経営していることが伺えます。 2.事業ポートフォリオ 「こういうポートフォリオにしていきたい」というイメージがあっても、値段が高い今は買いに行く適切なタイミングではない。商売は安く買って高く売ればもうかるわけですから。今はタイミングを待っているような状況です。」 「(買収する事業は) 何となく。分からないときは結局、ベーシックなことをやるのが一番いい。今、注目されたようなところに乗っかると、20年後には残っているかどうか分かりませんから。20年後も世の中に残るような、ベーシックでブレが小さいところをやるのがいいのかなと思っています。」 ⇒「安く買って高く売る。」は商売の基本ですが、日本の多くの経営者は、「多少の利益を犠牲しても社会を豊かにしたい。」という社会貢献を前面に出します。その点、鈴木洋CEOは、ビジネスというものに対し、非常にドライな姿勢で経営をしていることが...

日本優良株(トレース)

                         株価 1.  HOYA :(1/10)20,395  眼鏡レンズ、半導体フォトマスクの世界大手 2. SMC :(1/10)59,870  空気圧機器で世界トップシェア  3. TDK :(1/10)1,895   フェライト磁性部品などの総合優良電子部品メーカー 4. アサヒビール :(1/10)1,606 ビールの大手。グローバルに展 5. エンプラス :(1/10)4,775  大手精密プラスチック優良メーカー 6. キーエンス :(1/10)63,450 FA用センサを中心に測定器や画像処理機器の企画・設計・開発・生産する超優良企業 7. キッコーマン :(1/10)1,620 世界を代表する醬油メーカ 8. シスメックス :(1/10)2,912 ヘマトロジー、血液凝固、尿沈渣検査分野ではグローバルでトップシェ 9. シマノ :(1/10)20,260 世界を代表する自転車メーカー 10. ダイフク :(1/10)3,190 マテハンの世界トップクラス 11. ディスコ :(1/10)48,000 半導体製造装置で世界トップシェア 12. ニデック :(1/10)2,915 永守社長率いる世界1の総合モーターメーカ 13. ファナック :(1/10)4,116 工作機械用CNC装置で世界シェア50% 14. マキタ :(1/10)4,551 総合電動工具メーカーとして世界トップクラス 15. マブチモーター :(1/10)2,157 小型モータで世界トップ 16. ヤクルト本社 :(1/10)2,877 ヤクルトブランドを新興国で定着 17. ヤマハ発動機 :(1/10)1,298.5 バイクは世界トップクラスのシェア、マリン製品も強い 18. ユニ・チャーム :(1/10)1,224 紙おむつなどで世界シェア4位 19. リンナイ :(1/10)3,228 ガス機の世界的優良企業 20. 栗田工業 :(1/10)5,690 水処理関係の優良企業(国内最大手) 21. 参天製薬 :(1/10)1,537.5 眼科用医薬品の目薬に強み 22. 信越化学工業 :(1...