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空き家増加とREITの逆相関関係

  株株式会社野村総合研究所のリポート https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2024/cc/0613_1 では、日本における空き家事情の今後の深刻性が報告されている。 1.新設住宅着工戸数(2024~2040年度の予測) 「新設住宅着工戸数は、2023年度の80万戸から、2030年度には77万戸、2040年度には58万戸と減少していく見込み」  これは不動産だけでなく、住宅メーカーや建築資材業者にも影響する予測であり、当然であるがその分を単価の上昇で補っていくのは十分に予想できる。 2.空き家数と空き家率(2028~2043年の予測) 「空家数は2023年:352万戸、2028年:473万戸、2033年:616万戸、2028年:768万戸、2043年:917万戸と指数的に増えていく見込み」  新築住宅が減って空き家もへる。双方が大きくダウンすることが考えられないので、新築住宅の着工件数は野村総研の予想より幾分多めに推移していくことであろう。それは、そもそも日本の住宅は安く作っているので、欧米のように長期にわたって利用できるものになっていない。なので、空き家ではなく、住めない又は住みたくない家が空き家として膨張するというのが正しいのであろう。それに引きずられて優良な中古住宅も安く手放すケースも十分に想定できる。 商業ベースでの過剰な不動産供給  これだけ空き家が増える現状でRIETに少なからずの影響を与えるのは間違いないだろう。つまるところ、RIET投資はそれほどの旨味は享受できない可能性は高い。REITは都市開発案件とリンクしていることが多いが、地方の場合、その都市開発が10年や20年に渡って安定的な家賃収入を継続できるとは思えない。テナントは多くの人々が行き交う場所であることが前提で不動産の価値が成り立つからだ。 都心部においては、一見、人口減少の影響は受けないように感じられるが、街ごとに似たような都市開発を行ない過ぎている。明らかに供給過多である。さらには、そこに林立するマンション群も一般のサラリーマンが購入できないほどの値段が高騰している。つまるところ、富裕外国人の力を借りなければ供給>>>需要であり、それに相応しておしゃれなモールも商売が成り立たなくなる。都市開発をしてもそれに見合った需要を維持できない。実

投資対象としてのREIT (投資手法の研究)

  (REITと不動産投資の相違)  人口減少社会における不動産投資の考え方として、不動産投資というのは株式市場のような玉石混合の混じった市場でもあるにも関わらず、物件情報に透明性がないので、プロ的な要素を持った投資家が優位になりやすい。  同じ不動産投資でもREITは、比較的株式のように情報に対する透明性が高いだけでなく、投資信託としての社会的責任を負わされているので、投資家を欺いて多額な損を与えるような商品設計を行えば、そのこと自体が社会問題となり、金融庁は認可基準が厳しくするなどの法的整備を余儀なくさせられてしまう。  実際、REITが倒産して多額な損を被るような暴落はリーマンショックなコロナショックなどの特殊経済環境を除いて起きていない。 (メリットとデメリット)  そういった視点でREIT分析を試みると。 メリット1:大都市圏の優良物件が多い その理由として、 ①大都市圏の不動産は概して需要が高いため空室率が低い。②そして、需要の高さから流動性も高い。さらに③人口減社会といえども大都市圏内には世界各国の資金が流入することで地価上昇が見込めやすい。強いては、それが不動産価格上昇や賃料価格上昇を呼び込みやすい。 メリット2:投資商品としての代替 REIT物件のほとんどは、ビルの立地や建物の属性から選定しており、その観点から特に東京都心5区に集中しやすく、実際賃貸オフィスビルのうち約10%の床を所有していると言われている。また、新耐震基準・中小規模ビルの所有割合が相対的に高く。物件そのものが投資資産として活用できる。  このため、物件の価値が上昇した場合、①一部の物件売却により利益を確定することができる。また、②市場環境変化によるポートフォリオの再構築などの投資戦略の見直し、③有利子負債の圧縮なども比較的容易に行える環境を整えている。 デメリット:金利上昇に弱い   REITは、投資家から集めた資金だけでなく、レバレッジをかけるために銀行からの借入れなどを行っている。したがって、金利が上昇すると、その借入金の利息負担が増加するだけでなく、借入金の早期返却を求められたりすることも想定されるなどのREIT収益を減らす要因がある。 また、金利が上昇することで、REITと他の金融商品との間の利回りの差(スプレッド)が縮小し、投資家がより安定的な国債などの他の金融商品へと

不動産投資の損益勘定 

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不動産投資の損益勘定 (投資手法の研究)  不動産は資産運用の3本柱の一つである。かつては、保有しているだけで資産価値が上昇しひと財産を築けた人も多かったが、昨今の少子高齢化、かつビジネス取引の仮想空間への移行により不動産需要は減少の一途を辿っている。投資家は、不動産市況の表向きな動向如何に惑わされず、この事実に忠実に向き合うべきであろう。 1.アパート経営の有効性  アパートを購入して大家になって、月30万~50万の家賃収入を得る。地主感漂う非常に魅惑的な言葉である。しかし、優良な投資であるかは話が別。少子高齢化の日本ではアパート供給も過剰気味である。借り手は当然だが新築で手頃な家賃の物件に向かう。築年数に応じてアパートの家賃も安くしなければ入居者は集まらず、築30年なら激安にしないと誰も借りてくれない。そんなアパートは郊外にいけばそこら中に転がっている。  そういった状況下でアパート経営する場合、購入時の事業ローンを10年程度に抑え、約10年間の賃貸収入後にアパートを更地にして売却してもトントンになるような投資が理想的である。それが出来れば11年以降は家賃収入=利益となる。当然だが、そんな条件を満たす物件など存在しない。これを達成するには、激安で中古物件を購入し、自力リフォームで商品価値を上げるなどのスキルが必要となる。このようにセミプロ級の事業スキルがなければアパート経営などおぼつかない。 2.住宅用不動産の資産性  高度成長期は数百万で購入した不動産が地価の上昇で売り払う頃には数千万円に化けていたなんて話はいたる所で転がっていた。しかし、21世紀いや80年代バブル以降は、マンションを購入しても売却時の価格は半値程度ということも珍しくはない。これを人生の損得勘定でみると、4000万円の物件を35年ローンで購入した場合、ローン完済までの金利分を含め5000万~6000万円近い支払いをすることになる。維持管理を加えたら1000万円分が加算される。一方、ローンを払い終える頃の物件価値は、手入れが行き届いても1500~2000万円がやっと。約4000~5000万円が消えてしまうことになる。この差額は、生涯に渡って住み続けるための仮想的な家賃でしかなく、都心の一部の物件を除けば持ち家の資産性なんてそんな程度でしかない。 一般に 平均年収の人なら3000万円、エリート会社

金融緩和がもたらす局所的な不動産バブル現象

初版 2023.06.24 改版 2023.09.01  日本は少子高齢化の進行により人口減少社会に突入して久しい。このため、不動産価格も一部のエリアを除けば下落傾向が続いているのだが、ここ1~2年においては、不動産バブルの再来というべき現象が一部の地域で起きている。 1.不動産バブルに関する記事 〇全国に広がる「家が買えない」 京都も福岡も首都圏も郊外化加速(日経ビジネス)。 〇福岡市近郊 億ション相次ぐ福岡 新幹線で佐賀に脱出も (日経)  23年1月1日時点の公示地価で、住宅地の対前年上昇率が北海道に次いで大きかったのが福岡県。博多や天神、その周辺といった福岡市の中心部は「普通のサラリーマンでは、もう手が届かない」(不動産関係者)。 米国領事館などがたたずむ閑静な住宅街に、10階建ての分譲マンションが姿を現した。大和ハウス工業が手掛けるこの「プレミスト大濠二丁目」は、全35戸が1億円以上という強気の価格設定だ。 〇都心中古マンション1億円迫る 購入コスト29年ぶり高水準 (日経)2023年1月24日 東京都中心部のマンション価格が高騰している。東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した2022年の都心6区の中古マンションの平均価格は9800万円と1億円の大台に迫った。 〇住宅価格はバブル超え、郊外は息切れ感も 不動産会社は富裕層に照準(日経) 都心部のマンションは中間所得者層にとって「高根の花」になりつつあります。住宅価格が上がる一方で、国内の平均給与は伸び悩んでいます。マンション価格が購入者の収入の何倍にあたるかを示す「年収倍率」は、東京都で購入目安を大幅に上回る14〜15倍程度です。 〇地方にも「億ション」 首都圏はバブル超え。(日経) ・沖縄県首里城下町に「2億ション」 沖縄の地価、伸び再加速 ・福岡都心、初の全室「億ション」登場 坪単価10年で2倍 ・マンション高騰、近畿圏でも 大阪うめきた2期最高額へ 〇新潟市内マンション供給、十数年ぶり高水準(日経) 2022年12月6日 2.金融緩和継続による行き場のないマネーの行方  不動産価格は、一部の地域を除いて下落傾向が続いているにも関わらず、上記のようにここ1~2年の不動産価格の上昇報道には異常なものがある。これば、コロナ禍以降に実施した大規模な金融緩和による行き場のないマネーが不動産市場に流れ込んだも

世界の不動産バブルについて

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  初版 7/08/2022 (旧タイトル 投資視点で不動産を考える) 1.不動産バブルが経済成長を終焉に導く  経済成長が正常に機能すれば不動産価格は上昇する。これは日本の高度成長期を見れば一目瞭然である。しかし、その結末は、80年代の日本の不動産バブルのように異常なほどの不動産価格の高騰であり、やがてそれが破裂し、長期低迷におちいるシナリオである。日本はいまだにその後遺症から立ち直れていない。  バブル時は不動産価格の暴騰で一般庶民が大都市の不動産購入が困難になり、不動産を待つ者と待たざる者の格差を発生させた。その一方、国力という点では、ジャパンマネーは、世界中に流れ込み我が世の春を謳歌した。また、21世紀初頭には、中国がチャイナマネーとして世界をけん引する。規模に違いはあるが、韓国や台湾も地価上昇によって富が蓄えられ日本と同レベルの生活水準に達する要因の一つとなった。このように不動産価格の高騰は国富を膨らませるだけでなく、膨大な不動産成 金(富裕層)を輩出させる源泉である。 2.過剰な金融緩和が導く不動産バブル  過剰な金融緩和は不動産市場を活性化させる。日本のバブル景気時代だけでなく、21世紀初頭の世界中の過剰な金融緩和も、投資マネーとなって世界中の優良不動産をバブル化させた。その後のサブプライム暴落で天文学的な不良債権問題に発展するかと思われたが、FRBを筆頭に世界中の中央銀行がさらなる金融緩和政策を実行したことで、さらなる不動産バブルが一部の地域で再発することになる。 例として、中国における不動産価格状況を見ていくと 深センや北京市は年収比の50倍超え、上海市や広州市は年収比の40倍超え(上海万得信技術より)まで高騰した。それ以外にも年収比10倍以上を超える地域が20か所弱にも及ぶとの調査結果もある。 近隣諸国を見渡しても、香港、ソウル、台北など中心部の不動産価格は年収比10倍超えとなっている。 それだけでなく、パリ、ロンドン、バンクーバー、アムステルダム、シドニー、シンガポールなど世界の名だたる大都市の不動産価格が年収比10倍以上となり、億超えの物件が当たり前となっている。 3. 少子高齢化が不動産市場を二極に向かわせる  日本は80年代バブルをはるかに凌駕する金融緩和を続けているが、都心部でさえ平均7000~8000万程度の不動産価格に留まっている。

仮想空間という不動産市場の黒船 

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  1.仮想空間の時代 ①我々の生活はネットに吸い込まれている  IT技術が私たちの生活に欠かせなくなりました。今や様々なものがネットを経由する時代。証券や銀行取引だけでなく、飛行機、電車、宿などあらゆる手配がネットで済ますことができるよういなった時代。これまで物理的な店舗でしか取引できなかったものが仮想空間に取り込まれて、渦を巻くようにその対象範囲は年々拡大しています。さらに、最近はオンライン飲み会など人々の交流すらオンラインに移行しています。 これからはメタバースの普及も見込まれ、我々はネット上の仮想的な人物を作って生活をおくるようになります。 ②商業用施設の減少 今までは、どこの街にもたくさんの商業用ビルやテナントで溢れていました。週末になると街に出てショッピングなどはお決まりのコースでしたが、これら商業用テナントはネットに拠点を構えるようになっています。そうなると街中の商業用不動産の用途は減ります。これは不動産価格の下落を示唆します。 実際、地方都市にいけば、シャッター商店街だけでなく、空きビルや銀行などの支店もかなり減っています。 仕事場も、コロナ禍によってテレワークが可能になり、かつてのように従業員の作業場所としての広いオフィスも必要でなくなりました。 このように、街の商業用の物理的スペースがどんどん必要なくなってきています。 ③コロナ禍によって人々のライフスタイルが変換  コロナ禍によって、人々はいままで以上にネットに頼るようになりました。実際、仕事、買い物、娯楽、友達とのコミュニケーションの全てがネットで完結できます。そして人々は、多くの人が集まって騒ぐよりも、自分の世界を大切にするようになりました。人々は、自然と生活空間における物理スペースをネットに移行しています。このように、コロナ禍は、人々の生活様式の変化を10年近く早めたといっても過言ではありません。 2.金融緩和が引き起こす不動産価格の怪  これから、世界中で人口減少が深刻化し、商業用不動産の空きテナントで膨れ上がる事が予想されます。世界中で不動産価格の停滞が予想されます。少子高齢化によって不動産の利用用途も縮小します。特に、地方郊外の場合、空き家問題は深刻ですが、都会のマンションの空き室問題も意外と深刻です。不動産価格とは不思議なもので、多量の空き室がありながらも都心に近づけば近づくほ