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(マグニセントセブン研究)GAFAMが辿るであろう終着点

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初版 22.02.13 加筆 22.12.29 旧名 GAFAMの株価上昇終焉の兆し GAFAMは、売上規模、そして株式時価総額において世界有数のスーパーメジャー企業である。かつ、インターネット環境における独占的な地位を乱用することで他社が太刀打ちできない強力なビジネスモデルを強固なものにするだけでなく、周辺企業の利益を貪欲に吸い上げながら企業規模を恐竜化させている。その手法はかつての盟主IBMの強固なる独占状態を彷彿させるに留まらず、S&P500やNASDAQ指数などの米国主要指標ですらGAFAMの経営状況に依存するようになってしまった。 〇株式市場におけるGAFAMの巨大なる存在感  資料は古いが21年度末のGAFAMの株式時価総額は、Apple 2.9兆ドル Microsoft 2.5兆ドル Alphabet1.9兆ドル Amazon 1.7兆ドル Facebook 0.9兆ドル であるのに対し、20年度の世界GDPランキングは 米国 20.8兆ドル 中国 14.9兆ドル 日本 5.05兆ドル ドイツ 3.84兆ドル イギリス 2.71兆ドル  インド 2.66兆ドル フランス 2.62兆ドル イタリア1.88兆ドル カナダ1.64兆ドルである。両者を比較するとAppleは世界第5位、MicrosoftとAlphabetは世界第8位、Amazonは世界第9位と超巨大な存在であることが判る。  さらに、GAFAMのPERを検証してみると、 Apple 28倍 Microsoft 31倍 Alphabet 24倍 Amazon 31倍 47倍 Facebook 16倍 であり、これだけ巨大な時価総額であるにも関わらずPERが調整されていない。通常、時価総額が1兆ドルを超えた辺りから市場シェアが上限に達することで成長余力が枯渇してくる。それに併せてPERも次第に低下して株価上昇を抑制していくものだが、GAFAMはいとも簡単に2兆ドル、Appleに至っては3兆ドルにまで上昇した。これだけのガリバーであるにも関わらず市場はいまだに成長性を織り込んでいる。これは、彼らが如何にビジネス上の既得権を独占して、世界中からどん欲に利益を貪りつくした事を物語っている。とはいえ、彼らが投資家の期待に沿った決算を長年に渡って出し続けていたこと、アナリストが危惧する成長の壁を何度

NIKEも成長の限界か

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  NIKEは、世界最大のアスレチックシューズ、アパレルのサプライヤーであり、スポーツ用品の大手メーカーである。そしてDOW30の構成銘柄である。DOW30銘柄は、その業界の巨人ではあるが、安定感のある成熟した企業も多く。株価が大きく跳ね上がることはない。現時点においてダウ指数を押し上げているのは、マイクロソフト、アップル、アマゾンなどのいわゆるGAFA関連銘柄群である  一方、NIKEは企業年数という点ではGAFAMに近いが、ここ数年は成熟株と同じような動きをしている。NIKEのビジネスは、スポーツ市場におけるブランド力という強みである。今後、世界的な健康志向への高まり考慮するとNIKEのビジネスも大きな成長を見込めそうだが、現実にはそうなっていない。    実は、私は数年前からNIKEを投資対象銘柄としてウオッチしていたが、実際に購入するまでに至らなかった経緯がある。特に21年の暴騰局面の時は投資しなかったことに後悔をしたほどだ。とはいえ、2年後には株価は半値近くにまで落ち込んでいる。  株価は熱狂しているときに購入するとリターンが少ないと言われる。しかし、こういった壁を幾度もぶち破ってきたのがGAFAMを筆頭する大手IT銘柄である。  今時点ではNIKEに投資しなかったことが正しかったといえるが、こういった所に株式投資の難しさが内在している。  投資の難しさについては、話は余談になるが、コロナ禍の時、熟練した投資家は、世界大恐慌やITバブル崩壊、リーマンショックなどの経験則から二番底を意識していた。しかし、相場は右肩上がりの上昇を続けて二番底は来なかった。逆に、投資経験の浅い投資家ほど、相場の流れを素直に受け入れてビックテック株やインデックス株に投資して、大きなリターンを得た。コロナ禍の相場では今までの経験則が通用しなかったのだ。   私は、テクニカルな産業動向分析はしない。NIKEの経営陣がどのようにしてこれから長期にわたって自社の売上を成長させていくかを見極めたい。それは、技術的な分析ではなく、会社の長年にわたる決算報告の癖から判断する。そういった点では5年~10年の株価チャートをみる限り、NIKE側の企業成長戦略や組織体に対する限界が示唆されているようだ。  またここ数年でPERレンジの訂正もされている。その結果NIKEのPERは20倍近辺にまで低下した

インテルに凋落の兆し

インテルについては、過去に分析記事をアップしました。今季はその記事を再掲します。この記事の趣旨は、インテルの低迷は構造的な問題に起因しており、小手先の対応ではかつてのような栄光を取り戻すのは困難であるということです。  私は、GEの分析でもラリーカルプが発表する前にGEが復活するには分割が必須であると述べました。インテルも同様で、本当の意味での復活するには分割するしかないというのが私の持論です。  実際、GE株を10ドル程度の時に購入した人は、その後2~3倍の儲けを得ることができている。GE自体はあくを出し切っているのでこれ以降の飛躍もある程度は期待できる状況下にある。インテルも購入タイミングを間違えなければ同じような儲けることは可能と私は踏んでいる、当然であるが、未来は誰にもわからなく保証できるものはないが。 1.半導体産業の王座転落  インテルは半導体産業の盟主です。半導体シェアの推移は、1982年8位、1993年1位、 1999年1位、そして2021年1位とそうそうたる実績です。それにも関わらずインテルは斜陽と言われて久しいのです。それは、スマホ台頭における市場シェア獲得の失敗、GPU市場におけるエヌピディアなどの台頭。データセンターに代表される大手IT企業のCPU内製化の動きなど成長分野で強みを発揮できていないことが理由として挙げられます。さらに、追い打ちをかけるように半導体産業は設計と製造の分離が進んでおり、総合半導体メーカーであるインテルは設計及び製造技術において専門メーカーの後塵を拝しています。市場は、そんなインテルを冷ややかな目でみているようです。 2.製造における技術低下  インテルの決算を見るとサムスンと絶望的ともいえる開きが生じており、令和4年の第2四半期の決算報告を例にとるとサムスンの増収の幅がインテルと比べ圧倒的に大きいだけでなく、インテルは大幅な減益でサムスンは大幅な増益です。両社の発表は、インテルは需要が一巡したための低迷、サムスンはハイテク大手のクラウド需要が好調と真逆となっています。これは、インテルの製品が市場から受け入れられていないことを示唆し、半導体製品という点では、インテルはサムソンとTSMCに追い付くことが出来ない程の技術的な差が生じてしまった事を表しています。それだけではありません。後ろには中国企業が猛追しています。インテ

AI半導体の盟主(エヌペディア)の今後を占う

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 私自身の率直な感想として、NVIDIAがここまで爆上げするとは思っていなかった。この会社、言ってしまえばGPUの世界一の企業であるが半導体の設計会社に過ぎない。この会社の得意とする半導体がAIブームに乗っただけに過ぎない。 とはいえ、ビジネス競争が最も激しい半導体分野では、たとえNVIDIAが無双状態であったとしても、遅くとも3~5年もすればNVIDIAより低スペックであるが代替する製品がアジアなどの他国から現れてくるのは間違いなく、AI産業のすそ野としての半導体は二流製品の廉価品が市場に多く出回るようになる。そうなるとNVIDIAは、ひたすら高スペックGPUを提供し続けることで競合他社を大きく引き離すことを続けなければいけない。しかし、これは時間の経過によりスペック差の効果は小さくなっていく。  そういった視点から、NVIDIAの株価は、いや時価総額は間違いなく実力以上の値を付けている。   とはいえバブルという相場の性質を勘案すると、NVIDIAの株価はシスコシステムズのように天空を築くかのように上昇しまくる。シスコシステムズはITバブルの時の中心銘柄であったため、一時期世界一の時価総額を記録した。ITバブル以降は、主役がソフトウエアに移ったことでネットワーク機器メーカ扱いとなり、株価はIT製造メーカの範囲で推移するようになり、2024年現在にいたっても往年の株価に戻っていない。NVIDIAもAIブームをけん引する筆頭銘柄であることを考慮すれば、GAFAMを凌駕する時価総額を近づくという見方も否定できなくもない。  つまり、AIブームは、これから長期にわたって市場を賑わすテーマになるので、いつ・どこまでの期間まで上昇するのかは、誰にもわからないが、NVIDIAはその初期段階でのスター銘柄であることには違いない。つまり、ITバブル時のシスコシステム的な位置づけとすり替えることもできる。そういう点では、第一期AIブームの頂点を極める銘柄として天空を舞うような株価を記録するのも想定の範囲内である。  ただ、その後はシスコシステムズと同様、第二期AIブームの主役は革新的なソフトウエアやロボットのような関連機器に変遷していき、株価は数分の一まで転げ落ちることもあり得る。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサイトに掲載された情

アップル社の今後を考察する。

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  (膨大なる株主への恩恵) アップルは言わずとしたGAFAMの一員であるビックテック企業であり、かつ世界を代表する優良企業の一つである。株式の時価総額に至っては3兆ドルを超える途方もない規模に膨れ上がった結果、2015年頃に投資家がこの株を保有していたらテンバガー程度の利益を享受したことになる。それだけではない、リーマンショック前に保有していたなら、この株だけで日本円で億に近づくくらいの富を得ることができた計算になり、アップルが投資家に莫大な恩恵をもたらしたことがわかる。   (ティム・クックという稀代の経営者) アップルの社長ティム・クックは非常に優秀な経営者である。アップルは2013年頃にはアイフォンの成熟化懸念から一度沈みかけて普通の企業に戻ると思われたが、ティム・クックの采配で3兆ドル近くの時価総額を築くまでに復活させることに成功した。 スマホの普及率から考えるとアップルの成長余地は限られ続けている。このため、アップルの今後を占うには単純に言えば、ファンダメンタルで判断しても意味がいない。ティム・クックがいつまで現役CEOでいて、経営のマジックをやり続けられるかだ。アップルに問題が起こるとしたら、ティム・クックの次のCEOがどれだけ優秀であるかだ。 (バークシャー・ハザウェイの動向) さらに、この銘柄を考えるにあたってもう一つのポイントはバークシャー・ハザウェイの存在である。ウオーレン・バッフェットは、現在の株価がその銘柄の根源的価値より安い銘柄の投資することをモットーにしており、その投資姿勢は世界中の投資家の見本になっている。  しかし、バークシャー・ハザウェイは、この根源的価値をバークシャー・ハザウェイ側の経営者への圧力によって実現している面も否定できず、その代表例がアップルでもある。バークシャー・ハザウェイはアップルに事業を対する現状打破に向けた圧力、そして10兆円を超える自社株買いをさせるなどをアップルは余儀なくされている。  このため、バークシャー・ハザウェイ、特にウオーレン・バッフェットが現役でいる限りには、アップルはウオーレン・バッフェットの期待に応えるべく、様々な施策を打ち出してくるだろう。しかし、ウオーレン・バッフェットが現役を引退したとき、ティム・クックはウオーレン・バッフェットからの経営圧力から解放された後に懸念が生じる。 (FTC(

ファイザー 株価低迷からの脱却は期待できるのか?

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 1.ファイザーの低迷  ファイザーは、コロナ禍で最も活躍した企業である。コロナワクチンのおかげで売上高は2倍以上に膨れ上がるなど空前の享受を被ることになった。普通なら株価はこの流れに沿って爆騰するものだが、コロナ禍前の30ドル台半ばから60ドル弱まで上昇したに過ぎず、さらに配当も1セント増配に抑えるなど株主にとっては満足いく結果ではなかった。これの示すところは、投資家はファイザーのコロナ禍以降の業績に対しそれほど期待をしていない。実際、コロナ禍が沈静化した23年秋には、株価が30ドル近辺までに低迷する始末である。 2.ファイザーCEO:アルバート・ブーラによる事業構造改革  コロナ禍前のファイザーは、主要な医薬品の多くが特許切れを迎えていた。このため有力なパイプライン発掘が責務となっていたが、思うようにことは進んでいなかった。それに呼応するかのように企業の売上高は横ばいを推移し、特許切れに伴う利益率の低下から配当性向が100%近くにまで上昇し、投資家からは減配すら懸念されていた。そういった状況下で就任したアルバート・ブーラは、利益の見込めない大衆薬をグラクソ・クライン。そして特許切れの医薬事業部をマイランと統合させた。こういった事業分離により、ファイザーは革新的な新薬開発・販売に会社の資源(リソース)を集中させていった。しかし、この政策は、主力製品がおぼつかない中でいたずらに売上高を減らしてしまうだけだと判断され、株主からは賛同を得られなかった。さらにダウ30リストからも外されてしまい、製薬メーカーとしては後塵を拝するかに見えたが、そこに神風が吹くことになる。それがコロナ禍だ。 3.決算及び財務内容の推移  ファイザーは、convid-19の予防ワクチンをいち早く提供することによって、2021年~2022年にわたり莫大な売上と利益を計上する。それによって得られた莫大な資金を株主還元に振り向けずに、アルバート・ブーラの目標とする革新的な新薬販売の源である新パイプラインの拡充に充てた。実際、米グローバル・ブラッド社を54億ドル、英バイオヘイブン社を116億ドル、米アリーナ社を67億ドルと矢継ぎ早に買収し、極めつけは、がん治療薬のシージェンを430億ドルで買収する方向で動いている。さらに自前開発パイプラインのいくつかが芽を出し始めた。これにより、ファイザーはコロナワクチ

AT&T とベライゾンの分析

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  1.IT産業のプラットフォーマーという微妙な立ち位置   AT&T,ベライゾン は、インターネットのプラットフォームを提供する銘柄で、日本でいえばNTTのような名門企業である。一見成長性豊かなIT企業と同列に捉えてしまいそうだが、これらネットワークのインフラ通信企業は、他ITメーカーのように世界展開が出来るわけではない。一般的に通信事業はその国の国家機密とも絡む国策企業のため、他国の通信業者の参入は限定されたものになる。これら通信業者はその国内で巨大かつ名門企業であるものの、その享受は国内需要に限られたものになる。 2.多角化の模索と失敗 実際、AT&Tもベライゾンも更なる飛躍を企て、通信の下流に入るべく、AT&TはディレクTV、ワーナーパイオニアなどのメディアを多額の資金をもって買収した。ベライゾンもAOLやヤフーを買収している。これら事業は国境の壁はなくどこまでも拡がる成長分野だが、残念ながら両社にはこういった事業を飛躍させるノウハウがなかった。両社の経営陣は、どちらかといえば日本の大企業に近いのかもしれない。結果として、日本企業の買収劇のようにそのどれもが中途半端で終わって、しまいには巨額の損失を計上し切り離す結果となっている。そして膨大な有利子負債だけを残して。   3.本業復帰  しかし、最近になって、ようやくAT&Tもベライゾンも本業に特化したビジネスモデルに回帰した。非常に高い授業料を払ったことになるが、投資家にとっては好材料である。そういった意味では、その産業における成長余地に関係なく、餅屋は餅屋に徹して、主力の事業にリソースを集中させ、常に他社の追随を許さないような経営に徹するのが良い。一見地味であるが、それが廻り回って、ビジネス競争力を強靭なものにしていく。   4 . 今後の展開  これら2銘柄は米国における通信のプラットフォーマーとしての地位は確率されている。しかし、この分野は同時に日進月歩の研究開発と設備投資が求められ、 多額の設備投資と開発費用が必要になるため、 長期期間にわたって増収増益を続けるには無理がある。  そういう面で2社をみていくと、 AT&T は大幅な減配し配当負担を大幅に減らした。それと同時に債務も 1800 億ドルから 1300 億ドルまで減らした。当面は有利利子負債を減らしな

ラリー・カルプによるGE解体の今後 

  初版 2021.08.20 (旧タイトル GE再建とコングロマリット経営の光と影) 1.世界有数の優良企業  GEは、20世紀を代表する指折の巨大企業(コングロマリット)である。ダウ平均銘柄の当初からのメンバーで、1907年から2018年まで111年にわたってその座を維持していた。  また、素晴らしい組織力と経営力は他の企業のお手本とされ、さまざまな教材に利用されている。そういう優良企業であるGEが、2018年に今までの評価を全て覆すような未曽有の危機に陥ってしまい、現時点でも再建中である。 ここでは投資家の視点で、コングロマリットの超優良企業の代名詞であるGEに何が起こったのか、そして投資家は何について気を付けなくてはいけないのかについて考察をしなければいけない。 2.ジャック・ウェルチによるGEの隆盛  80年代前半にジャック・ウェルチは、GEのCEOに就任した。最初の5年間に10万人ほどの人材をレイオフして、事業の売却や清算を推し進めた。 その一方、「世界で1位か2位になれない事業からは撤退する」スタンスで企業の合併・買収(M&A)を繰返し、小型家電事業や半導体事業などの製造事業を売却する一方で、証券会社やリース会社、消費者金融会社、「NBC」などの放送会社を買収し、非製造業ビジネスの売上高を4割以上に高め、2000年には金融事業の中核である「GEキャピタル」の利益が会社全体の利益の52%を占めるまでに至った。 こうして、総合家電メーカーから世界有数のコングロマリットに転換させることになる。 売上高は、1981年からの20年間に272億ドル⇒1732億ドル、純利益は16億ドル⇒107億ドル、株価は4ドル⇒133ドル(株式分割(4回)を考慮)、株式時価総額は140億ドル⇒6010億ドルまで膨れ上げることに成功する。このようにして、経営の神様の名を欲しいままにする。 3.ジャック・ウェルチCEO交代と衰退の始まり  ジャック・ウェルチの経営は神がかっていた。しかし、一流の製造業が一流の金融業も兼ねることのハードルの高さを次の経営者が直面し、GEの経営は水面下に逆回転する。 2001年、ジェフ・イメルトがGEの次CEOに就任する。世間は、ジャック・ウェルチの指名した後継者なら同等の成果を出してくれるだろうと期待をした。しかし、ジェフ・イメルトは、GE本来の出自で

連続増配記録の正念場 スリーエム 

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初版220403 旧タイトル:増配率の長期低迷懸念 スリーエム スリーエムは、60年以上続く連続増配銘柄であり、古参のダウ採用銘柄である。かつてはGEと並び称される優良コングロマリット銘柄としてもてはやされたが、GEが退場した現在、同社に対するコングリマリット経営の評価は年々厳しいものになっている。 2.会社の構成  ①産業部門(Industry) 30%強       工業用テープ、接着剤、研磨剤等    ②セキュリティ部門(Safety&Graphics) 20%程度       防塵マスク、滑り止めテープ   ③ヘルスケア部門(Health Care) 20%程度       病院向け機器 サージカルテープ他    ④電子・エネルギー部門(Electonics&Energy) 15%程度        絶縁テープ モニター用フィルム等  ⑤一般消費者部門(Cimsumer) 15%程度       ポストイット、粘着テープなど    まさに、コングロマリットであり多岐の製品を扱っているが、接着系技術をベースとした製品も多く、そういう面では特定の技術に対して、応用的な利用を提唱し、様々な業種に多面的な展開を図っていこうとする経営戦略を垣間見ることができる。 3.企業業績 上記の通り、長期に渡って理想的な経営を行っていることが分かる。老舗企業でありながら持続的な成長を続けており、これに連続配当年数を加味すると優良企業の鏡であるのは間違いない。そして米国を代表する企業であることも間違いない。 3,増配率の低下懸念 しかし、配当という側面から当社を見ていくと、当社の苦境も見え隠れする。長期軸での配当性向は以下の通り。 配当性向が上昇気味に推移していることが分かる。さらに直近5年間をトレースすると2017(59%)⇒2018(61%)⇒2019(74%)⇒ 2020(63%)⇒2021(58%)   一株当たりの配当は、2018(1.36)⇒2019(1.44)⇒2020(1.47)⇒ 2021(1.48)⇒2022(1.49)に推移している。  ここ3年は、わずか1セントしか増配していない。このことはスリーエムの増配余地が上限に達していることを意味している。どうも、経営陣から見て売上及び利益の更なる成長が見込めていないことの表れである。  逆な見方だと

ネットワーク専業企業からの脱皮に苦戦  シスコシステムズ

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  初版 20220326 1.はじめに シスコシステムズは、ダウ30にリストアップされている世界有数のネットワーク機器企業です。この会社の戦略は、ジョンチェンバース元CEOの「市場をセグメント化して、そのセグメントでNO.1かNO.2になることを目指す」に代表されます。           2.中途半端なM&A戦略 シスコシステムズは、ネットワーク機器を主軸にしながら、長年に渡って積極的なM&Aを実施してきました。その数は優に200社を超えています。こういう戦略は、年代的にはGAFAの先輩格とも言えます。ちなみにこの会社は、1999年に世界一の株式時価総額を記録しています。ほんの短い期間ですが、一昔前のGAFA的な役割を担っていました。 これだけM&Aをしながら、今もってして、この会社はネットワーク機器という領域から大きく脱皮していません。同時期の雄であるマイクロソフトはWindowsの呪縛から離れ、更なる成長軌道に移行させた事を考えると非常に残念です。当然ですが、その結果は株価の差となって表れています。 3.成長性の乏しい業績推移 下記のとおり、GAFAMと好対照に売上は、長年に渡ってほぼ横ばいです。M&Aの実施状況から類推するにネットワーク機器と関連ソフト以外の事業を大きく飛躍させる実力がないことを物語っています。これではIT分野のオールドエコノミーも同然です。 4.「ズーム」躍進に見るシスコシステムズの限界 その代表が「ズーム」です。この会社のCEOは、シスコシステムズ出身です。もし、このCEOの力量をシスコシステムズ内で如何なく発揮することが出来たなら、ズームの原型であるWebexMeetingは、シスコシステムの主力製品になっていただけでなく、投資家は新事業領域の開拓に成功させたシスコシステムズの経営に対する力量を評価することになり、そのプレミアとして株価は現状の2倍近くで推移することでしょう。 まことにもったいない話です。 私自身が勘繰るには、これは一例に過ぎず、幾度となく、シスコシステムズはこういった大魚を逃がし続けていると推測されます。マイクロソフトなどのように主力製品を広範囲の事業分野でラインナップできる会社ではなさそうです。当然ですが、これは企業に深く根付いた文化でもあり、これからも同じことを繰り返することは間違いありま

高配当銘柄(アルトリア)で夢の配当金ライフ

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初版2021.06.26  加筆2022.12.23  1.アルトリアの会社概要  アルトリアは日本におけるJT(日本たばこ)のような会社です。「マルボロ」や「バージニアスリム」などブランドは世界的に有名で、本来なら超がつくほどの名門企業です。 しかし、訴訟大国の米国でのタバコ企業の扱いは、常に健康被害等のやり玉に挙げられます。投資家からはその訴訟リスクの高さが嫌気され、株価は実力よりも低めに放置されています。最近も、電子タバコの健康被害問題で多額の損害を計上しました。  不思議ですね。日本ではタバコに関する健康被害の訴訟沙汰などあまり聞きません。日本と同じ製品を販売しているのにも関わらず、米国の人権団体は許してくれません。お国柄の違いのようです。 そのため、株価はそのリスクを織り込んで、実力よりも低位に推移しています。 それでも、フィリップモリス(アルトリアの前身)は、1990年前半まで米国における株式時価総額の上位にランクインされており、訴訟リスクがありながらも今よりもはるかに株式市場で存在感のある大型株だったようです。  投資家は、このような特殊事情を利用し、リスクに果敢に挑む気概でアルトリア株を購入し、多額の配当金を手にしてきました。       2.配当金の推移  それでも、アルトリアは訴訟があろうが、損害賠償があろうが、毎年しっかりと増配をしてくれます。こういったことを、何と50年、半世紀も続けています。ちなみに、最近の配当金の推移は 2017年:0.7セント 2018年:0.8セント 2019年:0.84セント 2020年:0.86セント 2020年:0.90セント 2020年:0.94セント という具合に、毎年増えています。全く、頭の下がる思いです。 3.暴落など損を被るリスク  こんな銘柄ですが、そんなおいしい株であるにもかかわらず、バフェット先生ですら投資をしていません。おそらく、人権団体への配慮と思われますが。 なので、最もこの株の恩恵を受けているのが、訴訟問題など暗い情報が飛び交うなか、果敢に投資している株主達です。  一応、暴落の危険性に触れておきますと、そもそもこの銘柄は7%の利回りです。計算上15年もすれば元本は回収できます。実際は、毎年増配してくれるのでもっと早いです。 このため、どんなに激しい暴落をしても、長く持てば持つほど損をする

エクソン・モービルは21世紀のフィリップモリス 

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   時代は脱炭素に舵を切っている。それは20世紀のメガ名門企業であるオイルメジャーのエクソン・モービル、シェブロン等に多大なダメージを与えることになる。誰もがエクソン・モービルを将来性のないオワコンの企業と見なしている。しかし、ここで逆説的な提案をしてみよう。エクソン・モービルは21世紀のフィリップモリスになり、脱炭素のムーブメントを逆手にとってしぶとく好業績を叩きだしていくというシナリオである。 1.コロナ禍がエクソン・モービルを低迷サイクルから脱出させた  エクソン・モービルは、約100年近くに渡って、米国企業トップの座に君臨するキングオブキングにふさわしい企業だった。21世紀初頭には原油高による未曽有の高収益で米国企業の時価総額ランキング上位に昇りつめた。しかし、2016年以降の原油安により売上は半減し純利益で配当をまかなえないほどに業績は低迷した。そして、2020年のコロナ禍では、度重なるロックダウンでエネルギー需要が急激に減少したことと、バイデン大統領の脱炭素政策でクリーンエネルギーへのシフトが加速したことで、エクソン・モービルは数兆円の赤字を出すなど存続が危ぶまれるほどの危機に陥った。 誰もがオイルメジャーは終わったと感じた。しかし、エクソン・モービルはコロナ禍によって会社の危機感が最高潮に達し抜本的なリストラを行ったことで、あらゆる事業の贅肉が取り除かれ、悪しき組織の官僚化とコスト硬直性を打破することに成功した。 2.脱炭素がエクソン・モービルを高収益体質にさせる   皮肉なことに世界中で脱炭素を掲げてもエネルギー需要は減ることはない。逆に増加傾向である。このような状況下で原油増産を制限させることは、原油価格の高値を常態化させることにも繋がり、脱炭素化のムーブメントがエクソン・モービルに莫大な利益が流し込んでもいるようだ。  各国政府が脱炭素と声高々に叫んでも、太陽光発電や風力などの再生化エネルギーは化石燃料の代替ができるほど技術の成熟には程遠く、EV自動車も末端までの普及には高いハードルがある。脱炭素を達成するには、エネルギー消費量を減らすのではなく、工場や自動車、電力会社等で排出する二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を外気中に排出しない仕組みを構築するほうが効率的だ。エクソン・モービルは世界有数の化学メーカーであり、二酸化炭素回収技術に積極的に関与し

長期投資家視点でAmazonは投資対象になれるのか?

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Amazonと言えばGAFAM の一角であり、ジョフ・ペゾスにより、将来性のある事業を多角的に展開している巨大コングロマリットである。 しかし、私はGAFAMの中で、Amazonに関してはこれから厳しい局面が控えていると予想している。 1.Amazonの強み  Amazonの強みは、既存店舗型の産業構造をデジタル店舗型に移行するビジネスモデルである。実際、この20年間、Amazonのビジネスモデルは人々に未来への夢を与えながら企業規模を拡大し、多くの店舗型の既存企業を駆逐してきた。最近は、オンライン診療の参入を試み、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、CVSなどのドラッグストア業界を低迷させたのも記憶に新しい。 2.万年低収益体質 Amazonのビジネスは、そういった壮大な夢とは相反するように、企業業績は長年に渡って赤字計上をしてきた。Amazonは未来に向けた設備投資や税金対策などの諸々の理由で、意図的に低収益体質を堅持したが、将来性のあるビジネスモデルと売上の成長性は投資家に好意的に受け取られ、株価は常に右肩上がりを形成してきた。それは、投資家にとってテンバガーどころでは享受を与えた。しかし、Amazon企業規模がどんなに肥大化しても、低収益から脱却する兆しはなかった。というより、株主が長期にわたって低収益体質を容認していたことで、企業風土として染みついてしまったというのが正しいのかもしれない。 3.Amazonの斜陽を断言できる理由  Amazonの収益性の低さはまるで、高度成長期の日本企業と何ら変わらない。高度成長期の日本企業も技術力や将来性での期待から「JAPAN AS NO1」と持てはやされ、株価はうなぎ昇りの上昇をしていたが、その一方で財務的には未来に向けた設備投資を優先していたことから収益性が低かった。「JAPAN AS NO1」の時は財務内容を意識されなかったが、バブル崩壊後の需要が低迷する日本経済において日本株式会社は見事なまでに凋落をしていくことになる。の後は収益性を高める経営にシフトしていくが、今度は日本株式会社の本来の強みを失う結果となってしまった。 4.Amazonの転換点と今後  Amazonの転換点は、なんといってもジョフ・ペゾスの引退と株主が安定的な高収益性を求めるようになってきたである。私自身は、ジョフ・ペゾスの引退は企業の成熟

セールスフォースドットコムの分析? 2021.08.22

1.セールスフォースドットコム(CRM)の評価ミス?  ダウ銘柄ではセールスフォースドットコム(CRM)が堅調です。この銘柄は、しかし、私はこの会社の評価を理解できずにいます。 理由は、 ①PERが高すぎること。 ②GAFAMのように財務内容が良好でないこと。 ③ダウ銘柄の採用理由もアップル株式分割に伴う情報産業指数の調整扱いだったこと ④ダウ銘柄としては、事業範囲が顧客管理システム中心で拡張性に疑問が残ること  そんなことが理由です。他にもテスラにも同様な評価を持っています。現時点において、ダウ銘柄の中で堅調な動きを示しています。それを見ているうちに、私はセールスフォースドットコム(CRM)を過小評価しているのではという気持ちになりました。  もしかしたら、経営者のマーク・ベニオフCEOの才能を見誤っているのではと。マーク・ベニオフCEOはGAFAMの創業者と同等レベルの経営者なのではないかということです。  2.マーク・ベニオフCEOの力量  私は、マーク・ベニオフCEOの詳しい歩みを知りません。オラクルの営業マンだったのは分かります。それで独立して餅屋のCRMで成功したくらいです。言葉は悪いのですが、その程度のキャリアの人がダウ30にリストされるまでの企業を構築できるのかについて疑問を持ってしまいます。  そもそもCRMがこれから社会的にどれだけのインパクトを与えることが出来るのか判断すらできません。正直、私には社会を変えるビジネスモデルとは到底思えません。  しかし、経営能力がGAFAMレベルのようにこれからの株価は大きく上昇していく可能性があります。とにかく調べてみる価値はありそうです。でも、私はセールスフォースドットコム(CRM)のファンダメンタルを調べ上げるつもりはありません。  マーク・ベニオフCEOが、どのようにしてこの会社を大きくしたのか。そしてどういうことに強みがあるのか、そして、今後のどんな未来像を持っているのかとかです。  そういうことについて、提灯記事を読んでも意味がないのでそうでない記事を探すのに一苦労です。なので、この調査は相当時間がかかりそうです。しかし、調査が終わる事にはこの銘柄の評価は固定かされ、投資時期を逃してしまう可能性があります。いつものことですが。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、

ビルゲイツの名言からマイクロソフトを読み解く

  1.名言に万人向けはない  ビルゲイツといえば、マイクロソフトの創業者として、世界有数のソフトウエア会社に導き上げた世界有数の経営者であり、世界有数の資産家でもあります。  しかし、彼のこういった成功は彼の天賦の才能だけによるものではありません。ここまでに至るには彼のけたたましい努力と苦闘の連続があったからなのですが、ビルゲイツは世の中の理不尽さを示唆するように、「人生は公平ではない。そのことに慣れよう」という名言を放っております。 これは高校生のスピーチの一節であり、人生における様々な理不尽に自分の意思で打ち勝っていけと説いていますが、その中において才能に関する理不尽さも忘れてはなりません。  例えば、野球選手のイチローが一流選手になるまで、そして一流になってからもどれほど苦しい練習と自分自身との戦いを積み重ねてきたのか、それらを聞かされるとまさに天才は99%の努力と1%の才能で成り立っていると言わんばかりです。そうはいっても、あなたがイチローと同程度の練習や自分自身と格闘したからと言って、イチローのように一流になれるわけではありません。  99%の努力とは、天性の才能を伸ばすための努力であります。つまり、どんな素晴らしい教訓や名言であっても、そもそも天性の才能のない人にとっては猫に小判の域を超えないという現実を冷静に見つめなければいけません。自分自身を顧みないでする努力は何も実りも得られないのです。 2.名言のそれぞれ  ビルゲイツの名言と言われるものとして以下があります。 「毎日毎日「勝ちたい」という気持ちで出社しなければならない。切羽詰まったときにこそ、最高の能力を発揮できる」 「一心不乱に働くこと、ベストを尽くすことが嫌だというなら、ここは君のいるべき職場ではない」 これは、マイクロソフトという事業を成功させるためにはこれだけのパワーは必要という裏返しです。 でも、ビルゲイツさんのそういう姿勢に同感できません。私はのんびりと自分が一番幸せだと思う時間に精力を注ぎたいのです。  ビルゲイツさんもこれだけ戦闘的な生活を長年にわたって続けると、引退してもその生活リズムは崩すことできません。この人にとって、何もしないでボーッとすることはおそらくですが拷問の張り付けと同じ気分なのではないでしょうか。なので、ビルゲイツさんが未だにセカセカ分単位で何かに打ち込んでい