OpenAIやNVIDIAの循環取引を考える
AIは未来を照らす革新的な技術であることに疑いはない。しかし、実用化という観点では、依然として黎明期を脱していない。さらにAIはビックテックの成長期待の現状打破に利用され現在に至っている。
(AIバブルの始まり)
2022年頃には、コロナ特需の終焉とともにビッグテック企業の減収・減益が顕著となり、株価も4割程度と大きく下落した。当時、多くの投資家は2000年のインターネットバブル崩壊とこの下落を重ね合わせていた。しかし、マイクロソフトがOpenAIと連携を強化し、AIの実用化に舵を切ったことで、ビッグテックの株価は反発。GAFAM各社は軒並み上場来高値を更新し、AIバブルが形成された。
その中でも、最も注目を集めたのはNVIDIAで、AIバブルの恩恵を受けて時価総額4兆ドルを突破した。しかし、その背景には、NVIDIA・OpenAI・マイクロソフトなどの間で行われるクローズドな循環取引やベンダーファイナンシングの存在しており、業界全体の売上や利益が実態以上に嵩上げされているのも事実である。
(NVIDIAの循環取引)
最近の循環取引の事例では、①NVIDIAがOpenAIに最大1000億ドルを投資→②OpenAIがOracleにデータセンター構築を発注→③Oracleがその資金でNVIDIAのGPUを購入→④NVIDIAがOracleからGPU販売代金を受け取る。
このように、NVIDIAが出資した資金が巡り巡って自社の売上として戻ってくる構造であり、ある試算では100億ドルの投資で350億ドルの売上が見込まれる可能性との事。
今回の循環取引が白日の下にさらすところまでに至ったという事は、循環取引のワープに入り込んで、風船を大きくしないとN成長性に維持できない苦慮の表れにも推測される。
(投資家の疑念)
この手法は、2000年代初頭のCisco、Lucent、Nortelなどが通信機器バブル期に用いたものであり、そのかていバブル崩壊後に大きな損失を被った。これがNVIDIAにも当てはまるかどうかは、現時点では不明であるが、多くのメディアで疑問符を投げかけられている。このため、NVIDIAの次なる循環取引に対し、投資家は容認しない可能性がある。
OpenAI、NVIDIAと200兆円「循環投資」 ITバブル型錬金術に危うさ
(OpenAIの資金構造と提携戦略)
マイクロソフトは2019年以降、OpenAIに対して累計137億ドル以上の巨額投資を行ってきた。その見返りとして、OpenAIの技術を独占的に利用する権利を獲得し、自社のクラウドサービス「Azure」や「Microsoft 365」に組み込んでいる。
しかし、マイクロソフトは膨れ上がる開発のリスクヘッジとして、2025年9月には、非営利組織による管理体制を維持することで提携継続に合意に留めた。OpenAIは循環取引の手法を用いながら、マイクロソフト以外との競合にも舵を切り、NVIDIAとの最新AIシステムでの提携、ブロードコムとのAIチップ製造、ソフトバンクとの新会社設立、NTT・楽天との連携などの動きを加速させている。
(AIバブルの行方)
AIバブルがなければ、ビッグテックの株価は停滞し、世界経済はインフレと不況の同時到来に直面していた可能性もある。ビッグテックの時価総額が2〜3兆ドルに達したことで、実体経済からの成長だけでは大きな母体の維持が困難になっている。その結果、技術的には未成熟で実需が伴わないまま循環取引をかませながらAI実用化のトレンドを創出し、巨大なデータセンター構築需要、NVIDIAのGPUの爆発的な需要、GAFAMを中心としたクラウド事業の成長を創出させた。このAIバブルという「泡」は、NVIDIAだけでなくOpenAIも牽引役になって膨らませ続けている。しかし、歴史を振り返るとこういった循環取引が表向きになった時には、一つの時代の終焉を迎える事が多い。つまるところ、ビックテック黄金時代の終焉である。
別の視点で見れば、バブルの終焉は、現トレンドでの花火が消えそうになった時に、次なるトレンドに移行できなかった事で起こる。インターネットバブルでは設備普及から実需への移行がスムーズに進まず崩壊に至った。今回のAIバブルも「実需」への移行がスムーズに進まないと同じことが起きる。現状では、循環取引の効果が維持できそうな3~4年内に「実需」に火を付けなくてはいけない。
しかし、マイクロソフトのナデラCEOはAIの黒字化に15年程度は必要と表明している。つまり、相場は明らかに行き過ぎであるのは明白だ。当然であるが、マイクロソフト等のビックテックはこれら懸念の対処も踏まえながらAI開発に取り組んでいる。何かあったときのしっかりとトカゲの尻尾きりも用意しながら。
(循環取引が国策に変化)
歴史的に見れば循環取引は一般的には否定的に捉えられるが、地政学的な視点を踏まえると、異なる見方も可能である。現在、米中は最先端技術の覇権を巡って激しく競争している。米国は民間企業主導でAI開発を進める一方、中国は国家主導で技術開発を推進しており、資金力や政策支援の面では中国が優位に立つ場面もある。
このような状況下では、ビッグテック企業が豊富な資金を共有しながら開発スピードを高める構図は、過渡的な現象として必ずしも否定されるべきものではない。むしろ、過剰とも言える循環取引が、政府に代わって国策を担っている側面もある。
さらに、循環取引で培った技術が「実需」に移行できない場合、国策という背景から、米国政府が先頭だって受注することで需要を創出する可能性もある。そうして、「実需」への移行にひと段落がついた時には、膨らみすぎたビックテックに対しスピンオフなどで事業規模を正常な大きさにソフトランディングしていく事も十分に想定される。地政学的な役割を考慮すれば、過去の事例からの安易な悲観論に流れる事も適切とはいえない。
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