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10年後に世界経済をけん引する市場は何処か

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 ( 西欧諸国の相対的地位の低下)  株式市場においては、30年近くの間、米国1強が続いている。実際、世界市場の時価総額では、米国はその大半を占める。しかし、経済規模という点では、30年の間に中国が世界2位の大国になり、BRICSやその周辺新興国も台頭したことで欧米諸国の相対的地位は大きく低下し、東西間の経済規模逆転も視野に入っている。これらを踏まえ、10年後に世界をけん引する相場は何処かを考えてみた。 (国別の産業進展度をカテゴライズ)  専門家から見れば厳密な定義ではないが、各国の産業の進展度を下記に分類してみた。  ①発展途上国型(Ⅰ):先進国企業の工場進出があまりされておらず発展が遅れている地域で、一人当たりGDPは極めて低い(アフリカ、中南米etc)  ②発展途上国型(Ⅱ):資源や農産物等で一定の外貨を得ているが、富める者とそうでない者の格差が著しい(中東、ロシア、南アフリカ、ブラジルetc)  ③発展途上国型(Ⅲ):先進国企業の工場進出が盛んな地域。①②の発展型であるがグローバル企業の工場進出により中間層が拡大(メキシコ、東南アジア、インドetc)  ④準先進国:先進国からの下請けを脱し、先進国を凌駕する企業や産業が登場。(中国、台湾、韓国etc)  ⑤先進国:西欧諸国。日本。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドetc  ⑥超先進国:米国  これら区分は①⇒②⇒③⇒④⇒⑤⇒⑥の順で産業が高度化していく。しかし、区分間において上位に移動するには、産業構造の大きな変革や新陳代謝を起こし既存産業の既得権益層の特権をもぎ取る必要がある。それにより非既得権益層に富が流入し、中間層の厚みを持たせることで、その国が大きく成長して株価も長期上昇トレンドを形成する。逆に、こういった革新がない限り大きな上昇相場は見込めない。 (相場上昇と経済成長の非相関) 日本は、戦後のGHQによる既得権益層へのドラスチック解体により、その後の高度成長期と株式上昇が見事までにリンクした。1949年の日経指数150円程度が1989年には38915円の250倍強まで上昇した。これは戦前の超格差社会から一億総中流社会への切り替えに成功したからと言える。その一方、多くの新興国では先進国以上の経済成長をしているが、成長の果実を一部の既得権益層が独占しているため、株価指数の上昇という点では...

ジレンマを抱える超優良企業SMC

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 SMCは空気圧制御機器を軸とした自動制御機器のメーカーであり、自動制御機器は、基本型約12,000種、カスタマイズ品を含めると約700,000品目という膨大な製品群を誇っている。 (SMCの概略) 1959年4月に焼結金属工業株式会社を東京都千代田区にて設立。創業者は東京タングステン株式会社に勤務していた技術者大村進氏であった。創業翌年の1960年には空気圧機器の製造に参入し、部品から完成品へと事業領域を拡大した。これは、工場内のオートメーションの進行とともに引き合いが増大し、導入コストも安いことが他の自動化機器(機械制御・油圧制御)と比較されたときの優位性であった。1988年の株式上場の時には、売上高の90%が空気圧関連製品になっていた。 SMSの創業期から専務として社の成長を支えた髙田芳行氏が、1989年に社長就任から約30年超にわたりトップダウンでSMCの経営に従事する。その間に、空気圧機器の国内シェアが7割弱で世界シェアも3割強でトップシェアを獲得し、この分野においてはドイツのフェスト社 (Festo) との世界2強を構成するまでに躍進した。2019年には、ご子息の高田芳樹が二代目社長に就任し現在に至る。 (無双状態の経営力)  SMCはまさに無双状態の堅牢なビジネスモデルを有しており、誰がやっても優良企業を維持できてしまうほどである。  これらは、前社長が新製品の開発や生産技術の研究に没頭しながら、徹底的なコストダウンの追求を極限まで成し遂げた結果であり、メーカーでありながら営業利益率は25%を維持し、自己資本比率に至っては90%まで高い。製造業に必要な開発・研究においても単年の利益で十分に吸収できてしまっている。さらに株式発行数も抑えているため極限に近いような高値で株価も推移している。まさに、日本の製造業においてトップレベルを競う優良企業である。 それだけでなく、空気圧機器業界の世界市場動向は、2022年に約697.3億ドルとなり、予測期間中に年平均成長率7.13%で拡大し、2029年には1,129.2億ドルに達すると予測されている。これをそのままトレースすれば、SMCは苦労することなく増収増益を達成やすい環境下にあるということである。 (創業2代目のボトルネック)  この会社の次なる成長へのボトルネックは2代目髙田芳樹社長の経営力であろう。結...

フジHD㈱暴騰に見る株式投資の非科学的要素

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  電車の中で隣に座っているおじさんがスポーツ新聞を真剣に読みながら馬券の購入を検討している。記事には馬の健康状態(コンディション)、馬の性格、過去レースの実績、そして馬を乗りこなす騎手の実績、最後に評論家の総合的なコメント、雑誌側の独自の順位予想 (株価は未来のファンダメンタルまで織り込む) 投資家は四季報などを読みながら。会社の直近の経営状況、提供している商品や技術の強み、景気又は産業動向、そして会社の社風と経営陣の評価、最後に評論家のコメント、想定される株価のレンジ。投資家はそんな情報をくみしながら投資判断する。  この二つに何が相違があるのか?形は違へど構図に大きな相違はない。 「競馬新聞に書かれている内容」と「経済誌に書かれている内容」は形は違えど著者の恣意的な表現や判断が入っており、客観的な情報とは限らない。伝えるものにフィルターが入っている。 (どこまでの未来業績を織り込んでいるかは銘柄毎に異なる)  さらに株式投資で最も難しい所は、各々銘柄の価値(株価)が、どの程度先までの情報や見通しを織り込んでいるかであり、残念ながら誰にも分からない。さらに銘柄ごとに織り込み具合は異なっている。だからこそ、最高益の決算を出しても株価が下がったり、大きな赤字を出しても株価が上がるという現象が生じる。 この事実は投資家にとって、ネットや書店からの情報など役に立たないことを示唆している。これら情報は株式市場ではすでに織り込み済みだからだ。そのため、勉強熱心で素晴らしい会計知識を持っている投資家ほど投資成績が振るわないことが当たり前のように起きてしまう。エコノミストが有能な投資家になれない理由もそこにある。  (フジメディアHDに株価の非科学性)   フジメディアHDは、フジテレビの不祥事でフジテレビ自体が壊滅的な打撃を受けている。親会社である ジメディアHDにしても、決算という点では数年間は劣勢を強いられるのは間違いない。そういった状況下なら普通なら フジメディアHDの株価は大きく値を下げるのだが、 フジメディアHDの株価は逆に暴騰している。投資家は何を目的に買い込んでいるのかは私にはわからないが、この暴騰で大儲けする投資家がいるという事だ。そこには、高尚な財務理論などない。あるのは投資家それぞれの思惑と仕手戦のような株価変動に群がる...

TSMCの日本進出から垣間見える日本人の西欧人化

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 (日本企業の相対的な地位の低下)  つい最近まで、日本企業における日本人従業員の給与は東アジアでダントツに高かった。成熟した高所得国である国が経済発展を続けるためには、新陳代謝を繰り返しながら新技術で世界を席巻し続けるか、生産性の向上に活路を求めざるかのどちらかしかない。それは官僚化するオールドエコノミーに依存せず、アントレプレナーを育てて新たな産業を作り続けることにある。日本はこういった循環が停滞している間に、中国や韓国、台湾は日本の得意とする分野に猛追し、そして追い越すまでになった。 (TSMCの日本誘致)  そのような現状を打開する手がかりとして、TSMCの熊本工場進出が出てきた。日本国民の性格上、韓国、台湾、中国の大企業が自らの戦略で日本に工場を建設して一大製造拠点にするとしたら、マスコミを含め多くの日本国民は拒否感を抱くであろう。この案件は米国主導の安全保障問題から始まったサプライチェーンの再構築の一部であるが、日本政府側も約1兆円以上の巨額の補助金を付けるなど、TSMCに対し強烈なアプローチをして熊本誘致したことには違いない。  日本政府から見ると、日本には優秀な技術者がたくさんいる。没落しかかっている日本の製造業に対し、世界一の半導体メーカーから成功の手ほどきを学んでもらう。TSMCから見ると日本の潜在的に優秀な技術者を発掘し、企業競争力をさらに高めていく。そんな思惑が見え隠れする。 (日本とは異なる労働文化)  実際に工場を建ち半導体製造がスタートすると、そこには日本とは全く異なるドラスチックな世界があった。賃金は欧米企業水準の高給であるが、労働体系は、ブラックどころではない労働環境+米国流の実力主義がハイブリットされていた。スキル有無に関わらず根回し文化で年功序列の社員を大切にする日本の企業文化などは存在しない。  このように勤勉と言われた日本でさえも、TSMCからは日本人は思ったより能力が低く働きも悪い。という声も聞こえてくる。この違いこそ、中国や台湾などの企業が日本を押しのけて世界を制覇してきた源泉であり、日本においても西欧に追いつき追い越せと寝る間を惜しんで働いた高度成長期の残像を垣間見ているようだ。  (米国政府のしたたかさ)   米国政府は、そんなTSMCに最先端の半導体工場を強制的に作らせている。しかし、T...

投資家から見たフジメディアHDの今後

   (フジテレビの隆盛)  フジテレビの隆盛は、1980年代に鹿内社長がこれまでの昭和的な硬派な番組作りから、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだナンパな路線への転換をきっかけに、民放テレビ局の地位を上げていった。番組制作においては、比較的スマートなお笑いタレントを積極的に起用し、女子アナをアイドル路線に変更させ、ドラマなどでは高級マンションを舞台に人々の憧れを誘うトレンディドラマを切り開くことでフジテレビの地位を確立していった。 こういった取り組みは、バブル景気に向けて日本人が世界一の金持ち国に差し掛かっていくのに合わせて、人々が求めるより洗練された生活スタイルに適合していき、フジテレビは絶頂期を迎えることになる。その基礎を確立させたのが紛れもなく現相談役の日枝久となる (停滞) バブルが崩壊して就職氷河期が訪れると若者は社会の厳しい現実に直面することになる。 2000年頃になるとバブル世代も中年に差し掛かっていく。 その数年後にはインターネットの普及で若者のコミュニケーション場がネットに移行するようになり、人々の趣向の多様化が顕著になる。人々は、テレビからの均一化された情報を求めるのではなく、ネットから自分の好きな情報だけを得ようとしている。 フジテレビの経営陣はこういったトレンドの変化を真正面から受け取れずに過去の成功体験に執着した番組制作を続けている。もう、子供、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になってお茶の間で同じ番組を楽しむ時代ではなくなったことを意識していないように。こういった時代錯誤こそ、 日枝久の院政による弊害であることは紛れもない事実である。 (コングロマリットによる経営の分散化) とはいえ、 日枝久 はインターネットの台頭に備えて、フジメディアHDとしてコングロマリット経営に軸を移すようになった。テレビ業界の収益低下を補填するような事業体制を着実に構築していた。今回の不祥事の顛末においてもフジテレビ自体は大きな打撃を受けるが、親会社であるフジメディアHDが経営危機に陥るまでのレベルにならない。このように分散化は図っているものの、 フジメディアHDの役員は、フジテレビの有能な番組制作プロデューサーに占められている。日枝氏には、 フジテレビこそ フジメディアHDの中核から外したくないのであろう。 (今...