投資家から見たフジメディアHDの今後
(フジテレビの隆盛)
フジテレビの隆盛は、1980年代に鹿内社長がこれまでの昭和的な硬派な番組作りから、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだナンパな路線への転換をきっかけに、民放テレビ局の地位を上げていった。番組制作においては、比較的スマートなお笑いタレントを積極的に起用し、女子アナをアイドル路線に変更させ、ドラマなどでは高級マンションを舞台に人々の憧れを誘うトレンディドラマを切り開くことでフジテレビの地位を確立していった。
こういった取り組みは、バブル景気に向けて日本人が世界一の金持ち国に差し掛かっていくのに合わせて、人々が求めるより洗練された生活スタイルに適合していき、フジテレビは絶頂期を迎えることになる。その基礎を確立させたのが紛れもなく現相談役の日枝久となる
(停滞)
バブルが崩壊して就職氷河期が訪れると若者は社会の厳しい現実に直面することになる。2000年頃になるとバブル世代も中年に差し掛かっていく。その数年後にはインターネットの普及で若者のコミュニケーション場がネットに移行するようになり、人々の趣向の多様化が顕著になる。人々は、テレビからの均一化された情報を求めるのではなく、ネットから自分の好きな情報だけを得ようとしている。フジテレビの経営陣はこういったトレンドの変化を真正面から受け取れずに過去の成功体験に執着した番組制作を続けている。もう、子供、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になってお茶の間で同じ番組を楽しむ時代ではなくなったことを意識していないように。こういった時代錯誤こそ、日枝久の院政による弊害であることは紛れもない事実である。
(コングロマリットによる経営の分散化)
とはいえ、日枝久はインターネットの台頭に備えて、フジメディアHDとしてコングロマリット経営に軸を移すようになった。テレビ業界の収益低下を補填するような事業体制を着実に構築していた。今回の不祥事の顛末においてもフジテレビ自体は大きな打撃を受けるが、親会社であるフジメディアHDが経営危機に陥るまでのレベルにならない。このように分散化は図っているものの、フジメディアHDの役員は、フジテレビの有能な番組制作プロデューサーに占められている。日枝氏には、フジテレビこそフジメディアHDの中核から外したくないのであろう。
(今回の不祥事に対する投資家の視点)
今回の不祥事においてフジテレビは、全面的な経営刷新と制作する番組の趣向も大きく変えていかないと本当の意味での世間からの信頼回復するのは不可能である。そして、軽さを前面にしていた番組制作を硬派な路線に転換を図るなどの局としてのドラスチックなイメージチェンジを図るのも必要になろう。視聴率を追い求めるばかりに素行の悪そうな、悪い噂の多いタレントの起用も避けなくてはいけない。次に同様のトラブルを起こしたら間違いなく放送免許をはく奪される。そうやって地道に信頼を回復していくしかない。一方、株主はフジテレビではなくフジメディアHDの業績で投資判断をしている。そういった点では、株主視点では、フジテレビはフジメディアHDの中の一つの事業部署に過ぎないようレベルまでフジテレビの立ち位置を低下させるようなグループ経営に舵を切るべきである。
そして、役員構成をグループ全体でバランスよく分散化させ、代表取締役をテレビ部門以外から排出させる。産経新聞、文化放送などをHDの配下におき、メディア間の相互シナジーをより強固に打ち出していく。
そのためには日枝氏の退陣によるテレビ部門の勢力を弱めさせ、さらに外部から経営者を招聘ことでグループ経営の風土を正常にさせる。
投資家は、フジメディアHDの今後の方向性をしっかりとウオッチをするべきで、会社側が上記を適切行えば株価は数年後には現状を大きく上回る展開で推移することも絵空事でないくらい、本当はこの会社のポテンシャルは高いのである。
逆にこの改革が中途半端だとフジメディアHDは長期低迷に陥ってしまうことが十分に考えられる。
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