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7月, 2025の投稿を表示しています

人生100年時代に向けた健康への気配り

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 (ライフステージの「横ずれ」) 人類の寿命は、医療技術や生活環境の進化によりかつてないほど延びている。時代を遡れば、明治時代の平均寿命は約50歳。昭和の高度成長期には50歳は「老いの入り口」程度になり、令和の現代では50歳はまだ現役世代扱いである。今では高齢になっても仕事を続ける人や80歳代のフルマラソンを完走するなどアスリートやボディビルダーが登場してきた。音楽界でも、80歳を超えて現役でロックを演奏するシンガーが現れ、投資家ウォーレン・バフェット氏は95歳でも現役を堅持している、パートナーのチャーリー・マンガー氏も99歳まで活躍した。このように、ライフステージの「横ずれ」が起きており、私たちは寿命とそのライフステージにおいて未踏の領域に突入している。 (超長寿社会の到来)  人口問題研究所調べでは、日本の100歳以上の人口は、2020年:約8万人⇒2030年:約17万人⇒2040年:約32万人⇒2050年:約53万人と推定されている。ちなみに2050年の日本の人口は1億人強と推定されており、200人に1人は100歳以上という計算になる。 その多くは女性である可能性が高いとされている。これまでは、「100歳=ただ生きているだけ」という人が殆どだったが、100歳以上でも様々な分野で現役を貫く人たちが間違いなく続出するのは間違いない。吉永小百合は80歳とは到底見えない若々しさを保っている。2050年には100歳にも関わらず40歳~50歳にしか見えない外見の若さを保った女優が現れるのも絵空事ではない。さらに、医療技術や栄養学、予防医学の進歩によって、140〜150歳まで生きる人が登場する可能性も否定できず、様々な事に対する年齢(リタイア)の限界が再定義されつつある。 (職業と寿命の関係) とはいえ、実際には長寿を享受する人とそうでない人との格差も増々拡がっていきそうだ。その要因の一つは「健康意識」であり、職業の選び方も寿命に大きな影響を与える重要な要素になる。高齢になるにつれ体に悪い仕事内容を挙げてみると、①裁量権がない仕事②夜勤や昼夜シフト制の勤務③過重労働や重度な調整業務によるストレスを溜めやすい仕事④暴飲暴食、外食中心の健康を考えない食生活etcなどが挙げられる。実際、裁量の大きいオーナー経営者などはストレス管理がしやすく、長寿傾向が見られる。一方、IT...

二重価格が映し出す日本経済の歪み

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1. ニセコが映す「二重価格」の実態 インバウンド需要の急増を背景に、日本各地で「二重価格」とも呼べる現象が常態化しつつある。これは、一部の富裕層や訪日客が牽引する局地的な物価高と、長年のデフレに慣れた国内市場との間に生じた、深刻な歪みを浮き彫りにしている。 その象徴が、国際的リゾート地、北海道・ニセコである。天ぷら蕎麦が3,500円、ディナーコースが数万円という価格設定は、もはや日常の光景だ。地元スーパーでは高級食材が並び、高額な消費も珍しくない。地価も高騰を続け、数億円規模の不動産が流通する。この現象は、2010年以降の世界的な金融緩和で膨張した資金がインバウンド需要として日本に流れ込んだ結果であるが、その本質は、実質的な円安によって日本の購買力が相対的に低下したことに起因する、特殊な価格構造と言える。 2. 全国へ広がる二重価格の波 この動きはニセコに限らない。姫路城や富士山をはじめ、全国の観光地で訪日客を意識した料金設定の導入が進んでいる。これは、30年近くに及ぶデフレで停滞した国内価格と、バブル崩壊以降もインフレが継続した場合の「あるべき価格」との乖離に過ぎない。いわば、日本の物価は長い間、時間が止まってしまった。この乖離の是正が、「二重価格」として表面化している。 3. 企業行動の変化と一般消費への波及 当初、この特殊なインフレの影響は観光地や富裕層消費に限定されていた。しかし、企業はこの流れを価格転嫁の好機と捉え、2021年以降、コスト増を理由に広範な商品・サービスの値上げに踏み切った。これは、利益を削ってでも価格を維持せざるを得なかったデフレ時代の経営から脱却し、企業が適正な利潤を確保する「正常な経済活動」への回帰とも言える。 結果として、多くの国民が物価高に苦しむ一方、企業はインバウンドと富裕層の旺盛な消費を収益源とすることで業績を確保する、という二極化した構造が定着しつつある。この企業収益の安定が、現在の株式市場を下支えしている。 4. インフレが加速させる格差社会 現在のインフレは、一過性の現象ではなく構造的なトレンドとなる可能性が高い。その中で、価格転嫁や新たな需要を取り込める企業と、そうでない企業との業績格差は拡大するだろう。それは個人の所得にも直結し、高額な報酬を得る層と、賃金上昇が物価高に追いつかない層との分断を深刻化させる。 政府は課...

投資における複雑系「エントロピー増大の法則」

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〇宇宙の根源的法則:エントロピー増大の法則とは エントロピー増大の法則は、宇宙を司る最も基本的な定理の一つです。これは「孤立した系(外部からの影響を受けないシステム)では、時間の経過とともに無秩序さが増していく」というもの。簡単に言えば、何もしなければ、物事は自然に乱れていき、秩序は失われるということ。私たちの日常生活、社会の動き、そして生命活動のすべてにおいて、この普遍的な法則が根底にあります。 〇企業経営におけるエントロピー増大:成長の罠と「恐竜化」 このエントロピー増大の法則は、企業経営にも明確に当てはまります。企業は成長期を過ぎて安定期に入ると、組織内に無秩序の種が芽生え始め、やがて衰退の兆しを見せます。 このような過程で、企業はさらなる成長軌道を維持しようと、次々と新たな事業に手を広げ、**コングロマリット化(“恐竜化”)していきます。当初は事業間の補完が機能するものの、ある臨界点を超えると逆回転を始め、崩壊への道を辿ることになります。そして、巨大になりすぎたがゆえに時代の変化に追いつけなくなり、かつての成功体験が足かせとなって、組織全体に「制度疲労」**を引き起こします。これにより、最終的には長期的な低迷、あるいは崩壊へと至るのです。 geminiで描画 〇「時代と寝るな」:常に脱皮し続けることの重要性 その時代に輝く人物や企業は、確かに魅力的に映るものです。しかし、たった10年も経てば、かつての栄光が跡形もなく消え去ることは珍しくありません。この現象が示唆するのは、「時代と寝てはいけない」ということ。つまり、継続的に脚光を浴び続けるためには、常に自らを“脱皮”させ、次なる方向へと変化し続けなければなりません。変化を拒み、現状に安住してしまえば、待っているのは「崖からの転落」だけです。「安定」を求める行為こそ、実は自滅への道と言えるでしょう。すべての物事は、時間とともに変化し続ける運命にあるのです。 この考え方は、現代の企業経営にも強く当てはまります。例えば、今注目されている「マグニフィセント・セブン(Magnificent Seven)」と呼ばれる米国の巨大テクノロジー企業群は、次なる成長分野を積極的に切り開くことで、新たな脱皮を図ろうとしています。彼らは、変化を怠れば時代に淘汰されることを誰よりも理解しており、未来に向けて進化し続けることで、持続的な...

老人ホーム化する日本企業

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少子高齢化の影響は、単なる人口減少にとどまらない。企業に目を向ければ、従業員の高齢化が急速に進んでいることが見て取れる。特に、スーパーなどのサービス業、建設業や測量といった現場職、個人向け商品を扱う営業職などでは、その傾向が顕著だ。一部上場企業の多くで平均年齢が40歳を超え、中には50歳を超える企業も増えている。さらに、2025年4月からは厚生労働省による高年齢者雇用安定法に基づき、65歳までの雇用確保が義務化される。これにより、年金行政への貢献という側面も考慮すれば、企業の従業員高齢化は今後一層加速していくことは避けられないだろう。 企業の従業員構成の変化 かつて一部上場企業のホワイトカラーでは、課長が40代前半、部長が50代前後で、55歳で役職定年となるのが一般的だった。一方、中小企業では詳細な人事制度が整備されておらず、50代後半の管理職も珍しくなかった。 しかし、今後は大企業においても、現場系の部署の役職は従来の年齢より5歳から10歳引き上げられ、50代後半の現場管理職が一般的になるだろう。さらに、65歳を超えてもシニアアドバイザーとして精力的に活躍する人も珍しくなくなるに違いない。 では、本社部門はどうなるのか。欧米企業を見ても明らかなように、グローバル競争を勝ち抜くには知力と体力が不可欠だ。そのため、役員の平均年齢は50代前半、社長は50代後半がターゲットとされる。本社系のスタッフ部門もこれに合わせ配置され、これまで以上に若返りを図り、経営に臨むことが求められるだろう。 老人ホームに変貌する企業 政府は定年を65歳に引き上げた。さらに、政府と厚生労働省は、日本人の平均寿命の延伸を考慮し、定年を70歳まで引き上げることも視野に入れている。年金受給開始も70歳からが標準となるだろう。これは年金財政に苦慮する政府にとって、まさに好都合な話である。 一見理不尽に思えるかもしれないが、会社に居続ける高齢者の多くは、独身者、あるいは世帯持ちでも子供が既に独立しているなど、自宅にいても特にすることがない人々だ。要するに、彼らは時間に余裕があるのだ。そのため、会社にいることが楽しくて仕方がない。まさに、サラリーマンの「老人ホーム化」と言える。それに伴い、在職中に亡くなったり、身体機能が低下したりする人も増えてくる。会社を退職して数年で亡くなるケースも珍しくなくなるだろう...