投資視点で不動産を考える 高騰しすぎた不動産市場の行く末
初版 7/08/2022 (旧タイトル 投資視点で不動産を考える)
1.不動産バブルが経済成長を終焉に導く
経済成長が正常に機能すれば不動産価格は上昇する。これは日本の高度成長期を見れば一目瞭然である。しかし、その結末は、80年代の日本の不動産バブルのように不動産価格の異常なほどの高騰であり、やがてそれが破裂し、長期低迷に陥ってしまう。日本はいまだにその後遺症から立ち直れていない。
バブル時は不動産価格の暴騰で一般庶民が大都市の不動産所有が困難になり、不動産を待つ者と待たざる者の格差を発生させた。その一方、国力という点では、ジャパンマネーは、世界中に流れ込み我が世の春を謳歌することにもなる。また、21世紀初頭には、中国がチャイナマネーとして世界をけん引する。規模に違いはあるが、韓国や台湾も地価上昇によって富が蓄えられ日本と同レベルの生活水準に達した。このように不動産価格の高騰は国富を膨らませるだけでなく、膨大な不動産成金(富裕層)を輩出させる富の源泉でもある。
2.過剰な金融緩和が導く不動産バブル
過剰な金融緩和は不動産市場を活性化させる。日本のバブル景気時代だけでなく、21世紀初頭の世界中の過剰な金融緩和も、投資マネーとなって世界中の優良不動産をバブル化させた。その後のサブプライム暴落で天文学的な不良債権問題に発展するかと思われたが、FRBを筆頭に世界中の中央銀行がさらなる金融緩和政策を実行したことで、不動産バブルが一部の地域で再発することになる。
例として、中国における不動産価格状況を見ていくと
深センや北京市は年収比の50倍超え、上海市や広州市は年収比の40倍超え(上海万得信技術より)まで高騰した。それ以外にも年収比10倍以上を超える地域が20か所弱にも及ぶとの調査結果もある。
近隣諸国を見渡しても、香港、ソウル、台北など中心部の不動産価格は年収比10倍超えとなっている。
それだけでなく、パリ、ロンドン、バンクーバー、アムステルダム、シドニー、シンガポールなど世界の名だたる大都市の不動産価格が年収比10倍以上となり、億超えの物件が当たり前となっている。
3. 少子高齢化が不動産市場を脅かす
日本は80年代バブルをはるかに凌駕する金融緩和を続けているが、都心部でさえ平均7000~8000万程度の不動産価格に留まっている。日本は少子高齢化により土地の需要は年を追って減っており、空き家は800万戸を超えてもなお増加の一途を辿っている。このため、東京や一部の大都市を除けば、日本の不動産価格は基本的に下落基調である。
今後、欧米や東アジアの国々においても、日本のように少子高齢化が深刻になれば、これら国々の不動産市場は日本と同じような経路を辿る可能性が高い。日本の90年代のようになるとは思えないが、金融緩和で高騰し過ぎた不動産価格から更なる右肩上がりは期待できない。
4.不動産運用の行き詰り
不動産価格が右上がりでなくなると、不動産投資での利益が享受できなくなり資産運用としての機能が縮小する。これは庶民の富の増加を妨げるものとなり、廻り回って国富や経済政策に大きな影響を与えることになる。
このように少子高齢化に突入する国が多くなればなるほど、世界の経済成長に深刻なダメージを与えることになり、投資環境の悪化が見込まれる。

5.インフレは実部資産と市場価格の乖離の調整弁
株式市場もそうだが、実体経済よりもはるかに膨れ上がった不動産価格。そういった意味では、その歪をインフレが調整しているとも言えなくもない。つまり、物価は高騰しても株式市場や不動産市場の時価総額は当面横ばいのまま。それを繰り返すことで、実資産と金融資産の歪を調整していく。そうなるとこのインフレはそう簡単に収束するものではない。
このように不動産という視点から見ても、2020年代は投資家にとってそれほど明るい10n年ではなさそうだ。。。
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