不動産投資の損益勘定
不動産投資の損益勘定 (投資手法の研究)
不動産は資産運用の3本柱の一つである。かつては、保有しているだけで資産価値が上昇しひと財産を築けた人も多かったが、昨今の少子高齢化、かつビジネス取引の仮想空間への移行により不動産需要は減少の一途を辿っている。投資家は、不動産市況の表向きな動向如何に惑わされず、この事実に忠実に向き合うべきであろう。
1.アパート経営の有効性
アパートを購入して大家になって、月30万~50万の家賃収入を得る。地主感漂う非常に魅惑的な言葉である。しかし、優良な投資であるかは話が別。少子高齢化の日本ではアパート供給も過剰気味である。借り手は当然だが新築で手頃な家賃の物件に向かう。築年数に応じてアパートの家賃も安くしなければ入居者は集まらず、築30年なら激安にしないと誰も借りてくれない。そんなアパートは郊外にいけばそこら中に転がっている。
そういった状況下でアパート経営する場合、購入時の事業ローンを10年程度に抑え、約10年間の賃貸収入後にアパートを更地にして売却してもトントンになるような投資が理想的である。それが出来れば11年以降は家賃収入=利益となる。当然だが、そんな条件を満たす物件など存在しない。これを達成するには、激安で中古物件を購入し、自力リフォームで商品価値を上げるなどのスキルが必要となる。このようにセミプロ級の事業スキルがなければアパート経営などおぼつかない。
2.住宅用不動産の資産性
高度成長期は数百万で購入した不動産が地価の上昇で売り払う頃には数千万円に化けていたなんて話はいたる所で転がっていた。しかし、21世紀いや80年代バブル以降は、マンションを購入しても売却時の価格は半値程度ということも珍しくはない。これを人生の損得勘定でみると、4000万円の物件を35年ローンで購入した場合、ローン完済までの金利分を含め5000万~6000万円近い支払いをすることになる。維持管理を加えたら1000万円分が加算される。一方、ローンを払い終える頃の物件価値は、手入れが行き届いても1500~2000万円がやっと。約4000~5000万円が消えてしまうことになる。この差額は、生涯に渡って住み続けるための仮想的な家賃でしかなく、都心の一部の物件を除けば持ち家の資産性なんてそんな程度でしかない。
一般に 平均年収の人なら3000万円、エリート会社員でさえ5000万円を超えたら、住宅ローンの奴隷としての人生を強いられる。そういった状況下で、24年にはマンションの平均価格が5000万円、都心の中心部では1億円以上になった。これでは一般人にとっては、住宅購入がローン奴隷どころか博打に成り果てている。中古市場も価格が高騰しているため、マンション保有者は売却時にはあわよくば儲けが出ると思われがちだが、それはプロによる新築に近いリフォームをかけて底上げした結果に過ぎない。素のまま老朽化した物件を売却したら残存利用年数の短さを指摘され相当安く買い叩かれるのがオチだ。
豪邸などさらにひどい。豪邸の維持管理は固定資産税なども合わせれば月10万円はくだらない。一方、これらの物件を売却する時には、郊外になればなるほど買い手が見つからず相当な値下げを強いられる。都心においても、芸能人の例を見れば一目瞭然だ。芸能人などの豪邸は、3~10億円などと報じられることも多いが、これはあくまでも購入時の話で、売却するときは、最悪半額以下で処分したという報道も併せて流れている。
3.REITという不動産投資
商業的に旨味のある場所であれば、ビル建設用地として活用することも見込まれるので、値を吊り上げても業者は購入に応じてくれる。そういった商業地周辺の不動産こそREIT開発のターゲットとされる。
これら取引は、政府の景気促進におけり産業政策とも絡んでくるため、日銀による手厚い保護がある。一方、不動産会社から見れば格好のリスクテイクの材料にされる。このリスクテイクとは、事業会社が保有する不動産をREIT管理会社に高い値段で売りつけることであり、そのツケは市場の投資家が負うことになり、投資家は本来得るべき利益を減額させられていることにもなる。とはいえ、管理会社は比較的高利回りで安定的な分配金を提供することに商品管理の主軸をおいているので、巧みな増資や不動産のスクラップアンドビルド戦略を繰り返し、投資家のために分配金の安定化に努めている。REIT商品は私たちが思う以上に、社会的責任が大きくそう簡単に破綻はさせられない。ある意味TooBigTooFailであり、市場に影響を与えないように救済されるのが殆どだ。
東京23区における不動産は異常なくらいに上昇し、都心部のマンションの平均価格が1億円超えている一方、原宿、代官山、汐留などではオフィスビルの空きや更地が目立ち始めている。そもそもネットショップのすそ野が広がった現在、物理的な店をそれほど利用しなくなったという事。さらに、在宅ワークが定着し、かつてのように広いオフィスが必要なくなってきた。不動産価格が上昇するのは「需要>>>供給」の関係で成り立つものだが、今の不動産価格上昇は単なるカネ余り現象である。これは、日本だけでなく海外の都心部のほうが顕著だ。不動産価格はこれから二極化に向かうのは間違いなく、都心の中心部に近い程、安定的な資産価格の上昇を期待でき、それがREIT商品のターゲットになる。
とはいえ、このような経済政策の不均衡がマグマとなって、リーマンショックやコロナショック程ではないが、REIT市場にも一時的な大暴落を引き起こすのは明らかだ。利回りが一時的に5~10%に跳ね上がった時こそ、投資家にとって絶好の買い場になる。
あとは売却時だが、市場価格の変動もあるので、長期的にほったらかしにできない投資家の場合は分配金の享受に関わらず、売却損がでないように売り時を見極めなければならない。
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