投資対象として韓国、台湾を考える 

 

1.東アジアとしての韓国、台湾

 近隣の韓国、台湾などについては、30年前までは日本が圧倒的な経済力を有していたため、中国は発展途上国、韓国、台湾は中所得国程度の扱いであった。最近は韓国と台湾はほぼ日本と同レベル、そして中国は世界第2位の経済大国にまで成長し、日本の影が薄くなってしまった。そういった意味では、韓国や台湾は投資家目線で投資対象かを分析してみよう。

2.韓国、台湾の躍進

 韓国、台湾の躍進は、バブル崩壊後の日本の長期低迷と符合が一致し、電子産業における日本の地位低下と共に台頭してきた。その理由を挙げてみると、

 ・国内生産がコスト高となった日本企業の主要な海外生産拠点であったこと。

 ・日米経済摩擦による米国からの圧力に乗じて、韓国、台湾企業が日本の技術を吸 収しやすい土壌があったこと。日本政府もそれを黙認してきたこと。

 ・高度成長期の成功体験をひたすら追い求める日本企業に対し、韓国や台湾企業は日本から仕入れた技術を米国流の経営手法を導入し事業を拡大したこと

 などがある。

3.韓国企業の躍進

 厳しめな言い方をすれば、韓国は常に日本を見ながら行動を起こしている。そのせいか韓国の優位性のある産業は、それ以前は日本が優位性を持っていた産業である。このため、当初は日本企業で干された優秀な技術者等からの技術移転での躍進が中心であったが、韓国の通貨危機以降は、米国流の経営手法に移行し、日本企業経営のダメな箇所を逆手にとるようになった。それによりサムスンやLGなどが日本のソニーやパナソニックなどに代わる世界ブランドに成長し、自動車では現代自動車が日本の大手自動車メーカーを凌駕するまでになった。 この為、韓国企業に関しては、日本がその企業文化や経営を変えない限り、いつの間にか肩を並べられる構図になった。

4.台湾の躍進

台湾の躍進も韓国同様にその源流は日本企業にある。台湾の電子立国はそもそも日本の電機産業のお家芸であった。特に半導体は80年から90年にかけて日本が世界のシェアを独占したにも関わらず、いつの間にか台湾企業に入替っていた。それは単純な技術移転ではない、台湾企業が米国的な経営にシフトしていたのと、ダウンサイジングの波に乗り、日本人の考えが及ばない方法で、ローコストで製品を作ることができる中華系企業ならではの強みが発揮できたからだ。

5.人口減少と言うアキレス腱

 韓国、台湾の最大のアキレス腱は、日本以上の少子化に陥った事である。既に、特殊出生率では、日本を追い抜いただけでなく、絶望的とも言える1.0を下回る水準まで達してしまった。これでは急激な人口減は避けられない。とはいえ、この出生率は中所得国から先進国に移行する過程における負の側面であり、先進国を目指すために政府が後押しした想像を絶する競争社会の爪痕である。また、東洋で唯一の先進国である日本の背中を追いかけたという側面も否定できない。この辺がタイやマレーシアなどの東南アジアと明暗を分けてしまった感がある。

6.今後の見込み

 韓国も台湾も、人口動態から察するにここ数年で経済的なピークを迎えると思われる。しかしながら、両国においては世界的なグローバル企業の活躍が長期に渡って続く反面、人口減による国内景気の強烈な落ち込みと相殺される展開になるだろう。さらに、人口減少に伴う不動産価格の低迷も長期に渡って景気への冷や水を浴びせるであろう。そういった点では、韓国ではサムスンを筆頭する巨大財閥が今以上に韓国経済の生命線となってしまう。しかし、それが様々な社会的な副作用をもたらことも否めない。台湾ではTSMCがそれに該当するだろう。

7.投資視点として

 人口動態から察するに、韓国や台湾へのインデックス投資はそれほど期待できるものではない。ただし、米中対立もあり、半導体の盟主であるサムスンなどの財閥やTSMCはここ10年の活躍が期待できそうだ。何故なら、交代要員である中国企業が米国の圧力によって台頭しにくくなったからである。これが周り廻って韓国(KOSPI)、台湾(TAIEX)の指数を維持させ、強いて言えば日本のnikkei225よりパフォーマンスが期待できるかもしれない。

しかし、投資対象と考える場合、資本主義の盟主である米国企業か成長余力のある新興国に投資した方がより良いリターンが得られ妙味があるだろう。

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