高齢者就業促進が新たな富の勝組を創出

  高齢者が受取る一人当たりの年金平均額は16万弱である、その手取りは14万弱。最近のインフレによる物価高でこの額だと生活が厳しいと感じる人も増えている。それでも、政府は年金の給付負担を和らげるため、65歳以上の高齢者の就業を促進している。しかし、そうした流れによって新たな勝ち組が出現しようとしている。

(65歳以上の就労数の増加)

 高齢者(65歳以上)の就業状況は、政府資料によると、550万人超(正社員:130万人程度)。65~74歳人口」は1,740万人(男性831万人、女性908万人)であり、3人に1人は何らかの仕事についている。これが65~70歳だと半数以上が職に就いている。この試算から言えることは、今の日本には高齢者といっても働く場所に事をかいていないことを示している。

(悠々自適な高齢者)

年金を受け取れる年齢になっても未受給の高齢者が250万人もいる。この中には、大企業役員や団体理事など1000万円を軽く超える社会的成功者だけでなく、そのほとんどは職種状態によらず労働収入と企業や個人年金、株式や不動産収入などで満足な生活ができる層である。

一方、仕事をしながらの年金受給者は300万人いて、その中で、いわば年金の壁(仕事+年金で50万以上の収入)に該当する人が50万人いる。これら層は現役並みの月30万円以上の労働収入を得ていることになる。

 つまるところ、双方合わせて少なくとも300万人はお金に困らない高齢者であり、65歳~70歳の人口が800万程度を踏まえれば30%半ばが該当することになる。 

(したたかな高齢者)

これの示す事は、 バブル崩壊後から現在まで、多くの企業で人件費の高い50代をリストラし、一見不安を煽る話となっているが、その多くは多額の割増退職金を得るだけでなく、再就職などで賢く生きている。

特に、プライドの高くない現場側の技術者は非常に強い。これら高齢者は、その分野において基幹的な仕事をしてきた人で、その高度なノウハウを会社側も手放せず、定年後も有利な条件で雇用を延長し、70歳になっても現役を続けるケースが続出している。また、高度なスキルを保有しているがゆえに、再就職においても有利な条件で働くことが可能になる。高齢者の収入格差は現役世代と異なり、これまで築き上げたスキルやキャリアに依存され、収入額の逆転は非常に困難である。

(高齢者間の深刻な格差)

上記300万人の悠々自適組の中には、自分の体力が尽きるまで働ける人も少なくない。こういう人には、働けなくなっても、多額の退職金を得た後も10年程度にわたって現役並みの給料を得ることで資産の蓄積は相当なものになる。さらに、平均以上の年金等も得られるのにこういった人たちほど散財しないので資産をそれなりに残したまま人生を終わらせることができる。このようにして、60歳を過ぎてから持つ者と持たざる者の富の格差が拡大していくことになる。

  一方、生活のために安い給料で労働している高齢者は、労働が出来なくなると奈落の底に突き落とされる。また、労働せずに年金だけで生活し、必要時は貯蓄を切り崩している層は、年を経るにつれて予定してなかった出費や物価高などにより生活環境が厳しくなりやすい。これらの割合は全体の約7割弱に及んでいる。

 (新たな勝ち組の出現)

 会社生活のストレスから逃避するように若くしてセミリタイアする人が年々増えている。その一方。社会の流れは、出世競争の頂点である役員年収を年々上昇させ、億越えの年収も珍しくなくなった。そして、今度は、そこまで出世しなくても何らかの特殊スキルを持つ中堅層が超高齢までしっかり働けることで、一財産を築ける仕組みも現れ、新たな勝ち組枠が用意された。これは、高度成長期のように真面目で、仕事が好きで、人生そのものが仕事という人種に対する国からご褒美に近い。

 しかし、これには強烈なデメリットがある。大御所が引退の機会を失うだけでなく、大御所は自分が会社に長く残れるように次世代の若年や中堅層の成長機会を潰し、いつまでも自分がいないとこの業務が成り立たない状況を意図的に作り出してしまう危険性がある。そうなると、若者や中堅層の仕事の意欲が減退させセミリアタイ組を増加させるなど、結果として国力を損ねるという損失を国が被ってしまう事になる。


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