名著「となりのミリオネア」から投資の本質を学ぶ(その他) 

初版20220320  二版20221212 三版20230101

  

1.みすぼらしいおじさんの遺産がなんと10億円

 これは有名な話ですが、非常に示唆に富む話なので今回取り上げます。

 

 米国のブルーカラーのおじさんの遺産がなんと10億円だったという実話があります。彼はブルーチップ株をひたすら買って配当を再投資する投資法で巨万の富を築きました。彼の投資した銘柄は、少なくとも100社近くにのぼり、ヘルスケア、通信、公共、鉄道、消費財等に分散投資し、そのほとんどがCVSヘルス、ジョンソン&ジョンソン、P&G、JPモルガン、ゼネラルエレクトリック、ダウケミカルなど米国を代表する優良銘柄群でした。

  

2.筋金入りのケチ

 報道によると駐車場代がもったいないので、駐車場代のかからない遠くの敷地に車を止めたとか。車も中古のトヨタ車。さらには、あまりにも貧相なので友達が食事を奢ってくれたとか、株も証券会社に預けずに自分で保有して手数料すらケチったとか、とにかく筋金入りのケチのようです。こういったケチさ加減は程度問題ですが、本人が満足するのなら幸せなことです。バフェット先生の生活も質素です。

 日本でも、億とはいかないまでも、生前は非常に質素で、「お金がない」が口癖だった親父の遺品整理をしていたら、たくさんの株券や5千万円を超える定期預金があったという話はよく聞きます。身なりや生活レベルと資産額は必ずしも一致しません。

 逆に、羽振りの良い人が雀の涙ほどの遺産しかなかった話もしかりです。世の中、そんなもんです。(こういう話って、芸能人に多いようです)

3.この話の盲点(時代背景を冷静に見つめよう。)

 1959年のダウ30指数は、600ドル前後で、ロナルドさんが亡くなる2012年頃は13000ドル弱です。ダウ指数はざっと約20倍に膨れ上がっています。これが2021年ならダウ指数は3万ドルを超えているのでざっと50倍以上に膨れ上がっています。つまり、1959年にダウインデックスに10万ドルを投資したら何もしなくても、配当による再投資分を考慮したら、恐らくですが、前者が400600万ドル、後者が24003600万ドルまで資産が膨らみます。どれだけ時代背景が良かったのかという事がわかります。

4.ロナルドさんの投資法の本質

 この問題の本質は、結果としてダウ30指数が20倍近く上昇した時代でさえも、ロナルドさんのようにその時代の優良企業に長期投資して資産を築いた人が少数派だったという事実に問題の本質が見え隠れしています。

 世の中には、「晴れた時に傘を差しだし、雨が降ると傘を引っ込める」、「靴磨きの少年が株式投資の話をしたら相場はピークを迎える」という有名な諺があります。

 ロナルドさんの頃は、ダウ指数に対する長期投資の有効性に懐疑的な人が多かった半面、今の時代は、100年以上に渡っての奇跡的なダウ指数の上昇を目のあたりにして、多くの人がインデックス投資の信棒者になっています。

 もしかしたら、これらの関係は有名な諺と相関があるのかもしれません。

 

5.同時期の日本株投資との比較

 日本株を例にとると、日経平均は1949年頃の100円台から、1980年代には2万~4万円弱と200300倍近く上昇しました。しかし、これを本当の意味で享受できた投資家は皆無です。この点においてはロナルドさんの頃の米国と同じです。しかし、ロナルドさんのように日本のブルーチップである新日鉄、三菱・住友。三井などの旧財閥系などのブルーチップ銘柄に投資しても、日本ではロナルドさんのような巨万の富を得ることは出来ません。逆に、ソニー、村田製作所、HOYA等の新興成長企業に投資していたら株価は数十倍に膨れ上がり相当な蓄財が出来たが、そういった銘柄はなんと100社以上にも昇ります。しかし、玉石混合の入り混じっている成長銘柄群のなかでその将来性をしっかりと把握し、有望銘柄に絞り込んで投資することは、現在の私たちでさえ至難の業です。このように投資家が日本株で富を膨らせるのは相当難しかった。

一方、優良な新興成長企業で働き、投資のイロハなど考えず持株会でコツコツと自社の株を購入した人たちは、自動的に相当な額の利益を享受していたという。なんともいえない皮肉がある。 

6.ロナルドさんから学ぶ事

 投資は後付けではいろいろと言えますが、日々の投資ではいろいろな誘惑や間違った常識に惑わされて儲けることができないようです。それは、今もって多くの投資家が同じ行動を繰り返しています。

 

 世の中は二匹目のドジョウにはもらいが少ないものです。これから20年後には別の投資手法でロナルドみたいな人が出現して資産を築くでしょう。しかし、それは世間一般からの注目は浴びません。誰かが成功し大儲けしたという話が出回った途端、多くの知識人がその手法を推奨し、一般投資家が怒涛のように流れ込みます。でも、その頃には宝の山のほとんど掘り尽くされています。

「投資は孤独を好む」と言われます。誰も見向きもしないところに宝の山があるのです。

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