(マグニセントセブン研究)GAFAMが辿るであろう終着点
初版 22.02.13 加筆 22.12.29 旧名 GAFAMの株価上昇終焉の兆し
GAFAMは、売上規模、そして株式時価総額において世界有数のスーパーメジャー企業である。かつ、インターネット環境における独占的な地位を乱用することで他社が太刀打ちできない強力なビジネスモデルを強固なものにするだけでなく、周辺企業の利益を貪欲に吸い上げながら企業規模を恐竜化させている。その手法はかつての盟主IBMの強固なる独占状態を彷彿させるに留まらず、S&P500やNASDAQ指数などの米国主要指標ですらGAFAMの経営状況に依存するようになってしまった。
〇株式市場におけるGAFAMの巨大なる存在感
資料は古いが21年度末のGAFAMの株式時価総額は、Apple 2.9兆ドル Microsoft 2.5兆ドル Alphabet1.9兆ドル Amazon 1.7兆ドル Facebook 0.9兆ドル であるのに対し、20年度の世界GDPランキングは 米国 20.8兆ドル 中国 14.9兆ドル 日本 5.05兆ドル ドイツ 3.84兆ドル イギリス 2.71兆ドル インド 2.66兆ドル フランス 2.62兆ドル イタリア1.88兆ドル カナダ1.64兆ドルである。両者を比較するとAppleは世界第5位、MicrosoftとAlphabetは世界第8位、Amazonは世界第9位と超巨大な存在であることが判る。
さらに、GAFAMのPERを検証してみると、 Apple 28倍 Microsoft 31倍 Alphabet 24倍 Amazon 31倍 47倍 Facebook 16倍 であり、これだけ巨大な時価総額であるにも関わらずPERが調整されていない。通常、時価総額が1兆ドルを超えた辺りから市場シェアが上限に達することで成長余力が枯渇してくる。それに併せてPERも次第に低下して株価上昇を抑制していくものだが、GAFAMはいとも簡単に2兆ドル、Appleに至っては3兆ドルにまで上昇した。これだけのガリバーであるにも関わらず市場はいまだに成長性を織り込んでいる。これは、彼らが如何にビジネス上の既得権を独占して、世界中からどん欲に利益を貪りつくした事を物語っている。とはいえ、彼らが投資家の期待に沿った決算を長年に渡って出し続けていたこと、アナリストが危惧する成長の壁を何度も突き破ってきた結果であり、これら経営者は他優良企業と比べても桁違いに有能であることの裏返しである。
〇GAFAMは21世紀の石油メジャー
GAFAMはIT業界のそれぞれ分野で寡占状態を作り価格決定権を牛耳ってしまうなど、ハイテクという枠を飛び越えて21世紀の石油メジャーの立ち位置になった。それは米国国内だけに留まらず、世界中の国々でも高シェアを獲得し、ローカルエリアの市場でさえGAFAMに対抗できる企業が現れにくい。
GAFAMは、常にそういった地位を盤石にするために、新しいキラ星のような技術を兼ね備えたスタートアップが現れても、GAFAMはそれら企業が成長できないように様々な手段を使ってその事業を妨害するだけではなく、最終的には買収という手段を使って自分たちの企業グループの中に取り込んでしまう。つまり、次なるGAFAMが育つ土壌など今の米国市場においても現れにくいのである。投資家が、他の投資先を探そうと様々な将来性のあるビジネスやテクノロジーの可能性を調査しても、リサーチの先にあるのはGAFAMが様々な手段を駆使してそれら技術を囲いまくっているという現実である。結局のところ、投資家はGAFAMに更なる投資を続けるしか選択肢がなくなってしまい、結果としてGAFAMの時価総額を恐竜化させている。
〇配当開始という潮目の変化
GAFAMによるIT産業の寡占化は問題ではあるが、GAFAMが米国の覇権維持に寄与し、米国の国力を担っている側面もある。そういったことを勘案すると、GAFAMは今しばらく放置され、米国の国力寄与に貢献させられるであろう。しかし、水面下で天空を這う成長に終わりが見えてきたようだ。それは配当を始めたことである。配当は株主に今までのような成長を保証できなくなったことへの意思負表示である。ビジネス上では今もってChatGPTに代表されるAI技術分野で大きな成長を期待できるにも関わらずでもある。これを推測するに、当局はGAFAMが手掛ける買収案件に対し相当厳しい態度で接しているということ。今までの事業拡大の方程式が当局の締め付けにより困難になっていることの表れかもしれない。
〇スピンオフによる新たなる成長戦略
GAFAMは間違いなくIT分野での恐竜である。歴史の示すところはこのような恐竜の末路は。企業グループの分割であり、解体であった。しかし、技術の変遷が著しいIT分野では新しい分野で覇権を握らないとその輝きは瞬く間に消えてしまう。その代表例が、シスコシステムズでありオラクルなどである。石油や通信設備などとは異なる状況下で当局が解体を実施するかは不明だ。
それより、もっと現実的に起きそうなこととしてスピンオフが挙げられる。この場合、企業の競争力について、古い技術を切り離すことで身軽な規模に変貌すれば、新しい技術に対して今までのような買収戦略が打ち立てやすくなるからだ。
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