今後20年で生き延びられるだろう大学の(辛口)推測
少子高齢化による18歳人口の減少から、大学受験者の減少が危惧されているが、現在のところ女性の四大進学が大幅に上昇したことから何とか体裁を保っている。しかし、一定以上の学力を保持している層が大きく減少していることから、大学側は一般入試での偏差値低下を防ぐべく推薦入試に力を入れるようになった。その結果、上智や関学のように一般入試率が50%を切る大学が現れ、さらには、私立最高峰の一角である早稲田が推薦率を60%まで引き上げる公言をするに至っている。
一方、中堅以下の私立大学に至っては、推薦入学を大学の定員確保に利用し、いわゆるBF大学を増殖させている。
(軽量すぎる私立の一般入試)
受験業界では、国立大学が圧倒的に優位である。まず、試験問題のボリュームが全く異なり、難関と言われる国立大学に合格するためには、6教科9科目の難しい共通テストで7割以上の点数をとり、二次試験においても比較的難しい論述問題を解かされる。一方、私大の科目数は多くて3教科、今となっては、2教科や1教科すら常態化している。総合的な学力という点では、私立は国立に太刀打ちできない。そういう点では、難関国立大学からみたら、多くの私立大学は大学と呼べるものではない。
(私立の3教科入試こそ総合選抜)
国は、欧米に見習って受験者の能力の多角的に評価するという観点から総合選抜などの推薦入学を推進している。しかし、国立大学からすると、私立大学の入試自体が特定の科目に特化した推薦入試とも言えなくない。5教科でみるのではなく、得意とする1~3教科で勝負する選抜入試とも言える。とは言え、早慶はもとより、MARCHなどの上位私立大学は上位国立とそん色ない活躍をしている人も少なくない。平たくいえば、国語的な論述能力と社会科目全般に強ければ、社会の至るところで活躍できるという証明に他ならない。5教科全てに対して長けている必要はないということだ。
(早慶の少子化戦略)
今となっては、早慶ともに一般入試率が50%台である。約半数を推薦の対象にするとなると当然であるが、学生の人的リソースの低下を招くのは必須である。しかし、マンモス大学である早稲田は、たとえ6千人の非一般試験の学生を確保しても、残り4千人に対し学力の高い学生を集めれば、1学年あたりほんの1~2%の成功者を生み出せることに自信を持っているのであろう。100~200人の成功者を毎年排出できれば、東大と並んで日本を代表する人材輩出をする大学を維持できる。まさに数の論理による運営哲学である。慶応においては、欧米の名門大学のように社会的成功が約束できるエスタブリッシュメント層を囲い込んでいる。これら層が慶應のブランドを維持させるだけでなく、慶応大学は学生全員が「慶応ブランド=エスタブリッシュな特別な人々」という幻想を世間に抱かせるのにも成功している。一般試験においては、早稲田よりも東大と一橋のおこぼれ層を取り入れるのに成功している。推薦率の大小に関わらず大学運営になんの影響は生じない。
(階層の相違による進学先選択の相違)
国立大学において、社会的に活躍している大学は、東大、京大、一橋くらいしかない。それ以外の大学は難易度に関わらず総じて活躍度という点では早慶の足元に及ばない。そして下位旧帝大や横浜国立などの周辺大学になるとMARCHクラスとほぼ変わらなくなってしまう。この違いは何か、それは学生の家庭環境の差と言ってよい。東大、京大、一橋大にはアッパーミドルクラスの良家の子息が少なくないということだ。これら大学に入れない子息は進学先の矛先を早慶に向ける。地方名士の子息は、九大や東北大、名古屋大、横浜国立大などに向かわず、東大や早慶に行かせるという現実が横たわっている。地方旧帝大など学生は、総じて一般家庭での秀才がほとんどであり、その多くは大企業を支える優秀な中堅技術者や事務員として活躍に留まるのが実態である。
(少子高齢化の打撃を被る大学)
2024年の出生数は70万人を切った。これをトレースしていけば、過疎化した地域に設置している大学は、歴史的に由緒があっても凋落していく。それら大学の最後の砦は地方旧帝大となる。しかし、少子化の影響による地方旧帝大の追い込まれ方は想定以上で、東北大、筑波大学でさえ共通テストを止めて総合選抜での個別試験形式に移行する計画を立て、優良な学生の青田買いの動きを加速させている。そういったことを考慮すると、関東、関西、そして次点で中部(名古屋)にある大学だけが当面の間、凋落を免れることになるであろう。
関西は、国立優先であるので、京大、阪大、神戸大。そして滑り止めである大阪公立、同志社までであろう。中部は、名古屋大学は大丈夫であろうが。それ以外は関西、関東に向かう可能性がある。
そして関東は、日本における知識層の一極集中という現状を考慮し、東大を筆頭とする国立群が安泰であるだけでなく、私立は早慶、マーチの中でも明治、青学、立教あたりまでは体裁を保てる可能性が高い。しかし、私立は偏差値維持のために推薦比率を6~7割まで引き上げることも珍しくなくなり学生の玉石混合が一層高まっていく。旧来型の試験勉強で難関国立を落ち私立に流れた学生には、入学後のジレンマは相当なものになるだろう。
(W合格の進学先の無意味さ)
早慶と北大、東北、名古屋大、九州大、筑波大学などのW合格データで早慶が惨敗している事を示し、本当の大学ランキングを探ろうしている人がいる。これの最大の誤謬は学生の親側の社会的な階級や資産面を考慮していないことである。良家の子息は将来の社会的指導者としての役割を担う事を考えれば早慶を選択する。一方、一般家庭になればなるほど、高い学費、さらに都心の高い下宿代に躊躇しているに過ぎない。一般の家庭の子には名古屋大に行こうが、東北大に行こうが、早慶に行こうが卒業後の活躍度合いに変わりがない、せいぜい大企業の中堅管理職がよいところである。それなら学費安く、自宅から通える国立を選択するのは当然の流れである。
この手のランキングを見る限り、日本は1億総平等社会の考えが心底に根付いていることを痛感させられ、そういった点ではよいことなのでしょう。
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