「日本貧困化」への国民の怒りが自民党大敗北を導いた
1.変化の兆し
2024年10月27日の選挙結果で自民党が惨敗し、立憲民主党が躍進した。これと同じ事は2009年に起こり、その時は民主党政権に交代した。国民は政権運営機能の低下した自民党政治に嫌気をさして、次なる希望を民主党に託した。しかし、民主党には政権運営能力が乏しかった。というより、政権運営の要になるはずの小沢一郎が政治と金のスキャンダルで身動きが取れなくなったことが一番の要因であると私自身は感じている。その後は、鳩山由紀夫、菅直人等が引き継いだが、政権運営能力が自民党以下であることが露呈された。結局のところ、国民が民主党政治に嫌気のさしたところにアベノミクスを打ち出す安倍晋三が登場して、現在に至っている。
その10年続いたアベノミクス政治にも陰りが見え始め、政権も自民党内のリベラル派である石破茂が政権をとり、今回の惨敗にいたる。
この惨敗理由を、「政治とカネ」と片付けるのは簡略的であるように私には見えてならない。この、根本的な原因は、日本経済の相対的低下が国民の許せる範囲を超えてしまったことにあると私は思っている。
2.日本経済没落のすさまじさ
①欧米列強からの脱落
日本人の賃金水準は世界一の債権国とは思えないほどに低下し、明らかに先進国水準から脱落してしまった。日本人は中韓などの近隣諸国に生活レベルを追い抜かれてしまうほどの低迷を余儀なくされてしまった。それでも、いまだに感情的というべき日本人優位性をアピールしている識者が少なくないという絶望的な状況に陥っている。バブル崩壊の超不況の真中と言えども、98年の長野オリンピックでは日本にお金を落とせる外人は少数であった。国内景気はどん底でも日本経済は世界一流であり、中韓からみても圧倒的な差が横たわっていた。
②インフレによる生活水準の低下
アベノミクスの失敗は、物価上昇前に賃金上昇のサイクルを作れなかったことである。経済構造上の問題で賃金を上げることが難しいなら、緩やかな円高政策をとるべきであった。極論かもしれないが、2024年段階で1ドル50円なら、今起きているインフレの問題は十分に対処できたはずである。さらに、海外勢が発展途上国程度に安くなった日本の物価を安い安いといって買いあさる屈辱的なインバウンド消費も発生せず、海外に出稼ぎまがいの労働に出かけるという現象も起きなかった。海外勢による日本の不動産投資もハードルも高いままだった。よく言われる、円高による中小企業の資金繰りの問題は、10年程度のタイムスパンで数回にかけて補助政策を繰り返せばよかった。経営の下手な経営者は景気動向に関わらずいつどんな時も経営は苦しく赤字経営を繰り返す。そういった経営者には退場していただき、ゆっくりと産業構造を変化させればよかった。自民党は選挙での報復を恐れてゾンビをゾンビのまま放置したため、それに引っ張られておかしな政策を連発した。それを繰り返しているうちに、諸外国に追い越されてしまった。
3.安倍晋三事件の意味する事
90年代は自国の景気が悪くても、海外に行けばジャパンプレミアムが享受できた。だから東南アジアなどの海外に行けば幸せな生活を送れた。今となってはそれすらできない。庶民レベルの生活水準では先進国を脱落してしまった。とはいえ、日本はいまだに世界一の債権国であり、膨大な経常黒字もある。だから話がややこしくなるし、エコノミストの経済分析も訳が分からなくなる。しかし、実態経済では庶民はこれ以上の生活苦を容認しないほど追い込まれている。だから政治という点では反乱が起き始めた。しかし自民党に第二の安倍晋三なるべき人はいない。安倍晋三がいたら彼が総裁に復活し、第二のアベノミクス構想を打ち立てて、国民の支持を再度得たであろう。つまり、あの事件以降、日本は違うフェーズに入ったと思っても不思議ではない。
4.波乱は長期間にわたって続く
そもそも政治家は日本という国のあるべき姿を描いていない。隣の国、中国は14億人の国家である。このなかで10%が先進国並みの生活をしていると仮定しても日本以上の数を誇るのである。これの示唆する事は、どんなにマスコミが中国の惨状や問題点を報じようとも、一握りの中国人の財力が世界各国で富の猛威を振るう事に変化は生じないという現実である。
日本は一部の人達だけが富を独占するのは政治的にも国民的感情としても不可能である。それならば、世界に対抗するためにどのような経済構造にするのかの見取り図を描いている政治家はおろか経済評論家ですら皆無である。経済学者にいたっては畑違いの欧米の経済政策を聖書にして論じているという嘆かわしい状況だ。さらに、未来の日本経済を背負う大学生の受験制度においても推薦制度を強化する愚かなことを推進している。基礎学力の乏しい大学生を量産し、どうして欧米諸国と肩を並べられるのか、さらに日本より過酷な受験戦争を勝ち抜き、欧米流のビジネスを取得した中韓台のビジネスマンにすら後塵を拝するのは明らかだ。
この状況は当面続くので政治的な波乱は続く。しかし、国民は現状のリベラル色の強すぎる立憲民主党に日本を託したいとは思わない。そういった点では戦国時代のように混とんとした政策を試行錯誤しながら、二大政党時代がやってくるのであろう。しかし、対抗馬となる政党の形はまだわからない。その形がはっきりしてくるのは、10年以上の月日を要するのかもしれない。
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