投資家から見た日経平均のバブル越えについて(温故知新)

  


 私自身、日経平均がバブル最高値近くに上昇するなど予想だにしなかった。この反省点として、自分自身が物知り顔してエコノミストを真似るように日々の経済情報を分析して、見当違いの仮説を立てていたことに他ならない。とはいうものの「最も危険なことは、時代のトレンドに陶酔する」「高度成長期の投資事情から現在に通じる投資法を学ぶ」などで大局的な視点で投資を考えることはしてきたつもりだ。



やはり、相場は、長期時間軸で見ると「浮き沈みを繰り返しながらゆっくりと長期トレンドに沿って、一定方向に進んでいく」というのは、紛れもない法則に違いない。この領域になると、経済分析ではなく、我々生命のもつ特定の周期論と重なってくるのであろう。今回は、日次、月次、年次の経済情報の相場分析と株式市場のベクトルは長期軸では必ずしも一致していないことを深く痛感させられることになった。


(長期トレンドから見た投資法)

今回の上昇相場の始点を遡ると、やはりアベノミクスが相場の転換点であったのは間違いない。その間には、2016年、2020年と何度かトレンドの転換を思わせる状況下もあったが、それでも長期軸でトレースをすると日経は上値を切り上げてきた。しかし、この流れは、違った視点でみれば、あの奇跡的な上昇をみせた高度成長期と変わるものではない。例として1974年~1975年の新聞を斜め読みしてみれば、経済欄の記事は暗いニュースや経済危機的な論調のオンパレードであり、その数年後に福田内閣は大量に赤字国債を発行して景気を刺激させることでこの流れを食い止めることになる。そんな混沌とした状況の中で10年後にバブル経済が起きるなど誰も想像することすら出来なかった。つまり、1975年の世相や経済記事に流されて、悲観的な投資をしていたら大儲けをすることが出来ず、逆に、悲観的なニュースに惑わされず馬鹿になるくらいに日本の将来を信じて10年程度ほったらかすくらいの投資をした人が大儲け出来た。

 とはいえ、この長期トレンドの転換期である1989年から1990年以降になると、楽観的な人が大損を喰らうことになる。そして、アベノミクス以降は、楽観的に日本株を持ち続けていた人が勝ち組に代わる。投資をする場合、長期トレンドとの擦り合わせが非常に大切なことが分かる。


(有名な格言を参考にする)

 日経がどこまで上がるかは当然であるが誰にも分かるはずもないが、日本株はGDP100%を超えており、割安水準とは言い切れない。とはいえ、PER水準を見ると上昇余地がある。これは、日本企業の海外収益が米国企業と同じように想定以上に大きいことを示している。つまり、海外でのビジネスが順調に推移しているため、日本国の経済規模より民間企業の収益規模が大きくなっていることを示唆している。しかし、この程度のことは単なる知識であって、株式投資に役立つものではない。そこで相場の有名な格言から今後を類推してみることにした。

「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」

これを具体的に当てはめていくと、

1.市場が絶望ともいえる悲観に包まれた時、地中深くに次の強気相場の種が生まれる

2.先行きの景気動向には不安要素が数多くあるものの、相場は短期的な上昇と下降を繰り返しながら長期軸では上昇基調が続ける。

3.相場が一定水準以上に上昇すると、企業の業績動向だけでなく、街角の景気にも明るさが見られるようになる。

4.相場環境が格段に良くなり、市場の雰囲気が強気一色になる。そして、相場に関係のない人たちの生活もその恩恵を受けて幸福感に浸れるようになる。しかしマーケットは、好景気に反比例するように個別銘柄の株価を次から次と下降トレンドに追い込んでいく。

そして、相場は一定の低迷期間を迎えて、絶望に包まれ始めたころ、市場はステージ1に戻り、地中深くから次なる上昇相場の種が生まれるサイクルに変遷する。この循環に、世代間の交代も絡んでおり、次なる強気相場は過去の強気相場と無縁の世代によって引き起こされる。


(高度成長期の幸福感) 

この格言を高度成長期に当てはめると、第三ステージの「楽観」は85年頃であり、88年から90年が第四ステージの「幸福感」となった。これを今に例えると、令和6年から、どうも「第三ステージの楽観」に突入したように思われる。今回の場合、高度成長期から類推すると、当面は上昇基調を維持し、日経平均はバブル高値越えどころか5万円近くまで到達し、第四ステージの「幸福感」に突入することになる。その期間は最大5年程度を見込める。個別銘柄では、日経が4万円を超えるころから低PERで放置されている大型株が見直され始め、そういった銘柄に資金が流れるようになる。80年代バブルでは、優良株相場→名門企業→業績低迷株(最後はボロ株)と買いの裾野を拡げた。今はまだ、優良株の段階で止まっている。しかし、日経がこれ以上の上昇を続けるには業績の割に安値で放置されている企業を見直していくことが必要になる。銘柄によっては数倍に跳ね上がることも考えられる。これら銘柄の上昇が一巡したあと、どのように「消えていくのか」が残念ながら想像できない。

なぜなら、日銀は景気が低迷し始めると、間違いなく大規模金融緩和で景気、そして株式市場の上昇を促そうとするからだ。さらに、日経を押し上げている優良企業の経営者は、20年近い失われた株式市場を経験していることから、損益管理をしっかりとおこなって筋肉質な経営をしている。米国相場は、優良銘柄の留まることのない成長で高株価を維持しているが、日本市場も欧米と同一の基準で株価が動いているため、前回のバブルのようなどんぶり勘定の異常な過熱感は起こりにくくなっている。


(もしトラで相場の変転?)

 この相場を変えるのはトランプ大統領の就任かもしれない。トランプは米国第一主義を掲げる手前、ドル高政策の是正を各国に迫るであろう。そして日本には、膨大な貿易黒字に対して強硬策を打ってくると同時に為替操作国扱いにして円安是正の圧力をかけてくることが考えられる。前回は安倍総理が上手く交わしていたが、今度はそういった対応を取れる政治家がいない。このため、トランプの厳しい要求に四苦八苦することになる。それに為替市場が反応しドル円が100円近くまで突き進むことも想定できる。

さらに欧米の莫大な政府債務に対し、市場が反旗を翻した場合、トランプは反旗の原因を日本の異次元金融緩和にすり替えて、日本に対して金利水準の適正化を要求してくる事も考えられる。

こうなると、優良企業の海外収益が為替レートの調整だけでも激減するだけでなく、金利コストの増加で減収減益となり、株式市場を下落トレンドに追い込んでいく。今後は、日本企業が潤えば潤うほど、トランプ大統領の要求は過激化する可能性も否定できない。 

 逆にバイデンが大統領なら、現状の延長で経済が進むことになり、日経は更なる上昇を見込むことが出来て、上記の通り、数年かけて日本経済は幸福感に包まれるかもしれない。


しかしながら、今回の選挙状況を見る限り、米国のメディアはトランプを執拗なまでに落とし込むことはしていない。これはバイデン政権における何らかの問題解消を望んでいるようにも感じられる。

正直、これらは私自身の勝手な想像であり、こんなことを深堀していたら、冒頭の反省に対し、元の木阿弥なってしまう。

結局のところ、投資家は最大限に経済を分析して収益の最大化を狙うのではなく、右にいっても左にいっても儲けられるようにポートフォリオを組むのが最も賢明なやり方であろう。


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