アップル社の今後を考察する。

 (膨大なる株主への恩恵)

アップルは言わずとしたGAFAMの一員であるビックテック企業であり、かつ世界を代表する優良企業の一つである。株式の時価総額に至っては3兆ドルを超える途方もない規模に膨れ上がった結果、2015年頃に投資家がこの株を保有していたらテンバガー程度の利益を享受したことになる。それだけではない、リーマンショック前に保有していたなら、この株だけで日本円で億に近づくくらいの富を得ることができた計算になり、アップルが投資家に莫大な恩恵をもたらしたことがわかる。

 


(ティム・クックという稀代の経営者)

アップルの社長ティム・クックは非常に優秀な経営者である。アップルは2013年頃にはアイフォンの成熟化懸念から一度沈みかけて普通の企業に戻ると思われたが、ティム・クックの采配で3兆ドル近くの時価総額を築くまでに復活させることに成功した。

スマホの普及率から考えるとアップルの成長余地は限られ続けている。このため、アップルの今後を占うには単純に言えば、ファンダメンタルで判断しても意味がいない。ティム・クックがいつまで現役CEOでいて、経営のマジックをやり続けられるかだ。アップルに問題が起こるとしたら、ティム・クックの次のCEOがどれだけ優秀であるかだ。


(バークシャー・ハザウェイの動向)

さらに、この銘柄を考えるにあたってもう一つのポイントはバークシャー・ハザウェイの存在である。ウオーレン・バッフェットは、現在の株価がその銘柄の根源的価値より安い銘柄の投資することをモットーにしており、その投資姿勢は世界中の投資家の見本になっている。

 しかし、バークシャー・ハザウェイは、この根源的価値をバークシャー・ハザウェイ側の経営者への圧力によって実現している面も否定できず、その代表例がアップルでもある。バークシャー・ハザウェイはアップルに事業を対する現状打破に向けた圧力、そして10兆円を超える自社株買いをさせるなどをアップルは余儀なくされている。

 このため、バークシャー・ハザウェイ、特にウオーレン・バッフェットが現役でいる限りには、アップルはウオーレン・バッフェットの期待に応えるべく、様々な施策を打ち出してくるだろう。しかし、ウオーレン・バッフェットが現役を引退したとき、ティム・クックはウオーレン・バッフェットからの経営圧力から解放された後に懸念が生じる。


(FTC(連邦取引委員会)の動向)

GAFAMはもはや市場そして世界経済への影響力が巨大化し過ぎてしまった。このため、FTCも市場の健全な競争原理を整うべく、今後何らかの対応に踏み出すのは間違いない。そして、次なる技術覇権をGAFAMに握られないように手を打ってくるであろう。もっとも有力な想定は、会社を分割させてそれぞれの分野で競争させる。当然であるが、米国の覇権を損なわないようにソフトランディングを図っていくことになる。


アップルの今後の動向を占うには、もはやファンダメンタル分析など役に立たない。GAFAM全般に言えることであるが、これら企業は規模という点では一線を越えている。本来なら独占禁止法などが適用され、2~3社に解体してもおかしくないほどの規模感がある。米国政府は、これら恐竜をいつまで放置するのか、それとも、ティム・クックなども力尽きて、普通のスマホ会社に成り果てるのか。これがはっきりするのは5年後あたりからであろう。

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