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2050年の日経相場

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 (指数上昇の条件:主役銘柄の交代は起こるか) 日経平均株価が大きく飛躍するには、相場を牽引する主役銘柄が時代と共に移り変わる必要がある。1949年から1989年にかけての長期上昇相場では、繊維・食品から建設、重工業、自動車、エレクトロニクスへと主役が交代しながら、指数は堅調に上昇した。1989年のバブル期には、NTTに代表される景気敏感株が相場を牽引し、その後は日本の大企業を象徴する優良銘柄の上昇、最終的にはテーマ性を失った低位株まで物色され、材料出尽くしの形で相場のピークを迎えた。ある専門家は「このバブル相場は2000年頃迄の材料を消化し尽くした。」となぞらえた。 しかし、2010年以降の相場は様相が異なった。米国では GAFAM、日本ではファーストリテイリングや東京エレクトロンといった一部の巨大企業が突出して上昇し、その恩恵が市場全体に広がりにくい「勝者総取り」の構図が続いている。これらのビックテック企業が市場の成長テーマを独占し、かつ圧倒的な経営力を持っているため、かつてのような主役交代劇が起こりにくくなっている。  指数が現状からさらに倍増するためには、新たなスター銘柄の登場が不可欠である。現在の主役銘柄だけで日経平均が8万円、ダウ平均が8万ドルといった高みに到達できるない。これは、今後の市場を占う上で極めて重要な問いである。 (2050年に向けた3つのシナリオ) 今後、日本経済が緩やかなインフレ基調を辿ることを前提とすれば、株価には上昇圧力がかかる。ここでは、2050年の日経平均株価について、3つのシナリオを想定してみた。 シナリオⅠ:10万円(穏やかなインフレ) インフレは緩やかに進行し、物価は現在の2倍程度に留まる。為替は現状の延長線上で安定し、政治も自民党主導の体制が継続。日銀は市場の混乱時に適切な金融緩和を実施し、経済の安定を支える。個別銘柄では、米国の長期政策の波に乗った企業が暴騰する。 シナリオⅡ:14万円(インフレの加速) インフレが加速し、物価は現在の3倍以上に高騰する。牛丼が1杯1,000円を超えるようになる。国民の生活は二極化。社会的な不満の高まり、保守政権とリベラル政権が交互に入れ替わる様相を呈するシナリオ。 シナリオⅢ:18万円(ハイパーインフレと格差の極大化) 日本社会の構造が根本から変容するシナリオ。急激な株価上昇によ...

インフレ常態化が導く生活への影響

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 (金融市場の活況が富裕層をより豊かにさせる) 日米欧の家計金融資産(日銀25年8月末資料)の家計の金融資産構成では、 日本:「株式等」12.2%、「投資信託」は6.0%。 米国:「株式等」41.5%、「投資信託」13.1% 欧州:「株式等」25.3%、「投資信託」10.9% と、金融資産の割合は米国>欧州>>日本の順となっている。株式等の保有は上位10%程度の富裕層に集中している事が一般的であり、株式市場の活況に対する国への恩恵も、米国>欧州>>日本となる。そして投資好きな中国系や韓国系なども加えると、ここ10年の株高における資産効果という点で、日本は相当な遅れを取った事が示唆される。 (富裕層が誘導するインフレ下の消費社会)  世界中で深刻な物価高と不況を煽るニュース記事が溢れる中で、世界の金融市場は衰えをしらない。そういった中、日経の記事に「上位1割が支える米消費、高関税でも減速せず 8月小売売上高0.6%増 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16B4C0W5A910C2000000/)」という記事があった。  その記事には、「5月に価格を10%引き上げたが、4〜6月期は12%の販売増になった。ボリュームゾーンより高額品のほうが売れ行きが良い(エルメス幹部)」、クレジットカードなどの決済データでも、高所得層の支出額は順調に伸びている一方、低所得層の伸びは弱含み。この原因として、高所得層は株高による金融資産増加で家計に余裕が出る一方、低所得層や若年層は労働環境の悪化の直撃を受けている。これは、日本だけでなく、世界中で起きていることだが、二極化された社会での個人消費の動向は国民全体で諮るのではなく、富裕層の動向で決まり、その資金は株価市場などの金融相場からの含み益に依存している。つまり、ニュースで論争している世界とマーケットの世界は別次元になっているのだ。 (日本におけるインフレ経済の影響) こうした背景を踏まえ、2050年までにインフレ基調が堅調に推移した場合の物価動向を、以下の表にまとめた。  その他、パン屋(ベーカリー)のフランスパンは350円、クロワッサンは280円  スーパーでは、食パンが1斤480円、納豆が3パックで280円、牛丼はテイクアウトで980円。外食はランチでも1,800円以上が当たり前に...

遺伝子の生存戦略と、マネー資本主義社会の渡り術

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 (人の多様性と生存本能) 人は社会という仕組みに猫やペットのように「飼われている」存在だ。だからこそ、社会に対して愛想よく振る舞うことは、ある意味で自然な行動だ。道徳は社会生活を円滑にするためのルールだが、人間はそれ以前に「遺伝子による生存本能」に支配されている。 この生存本能は、画一的な行動を避けるよう人間を多様化させる。なぜなら、もし人類が一様な性格や行動様式に染まってしまえば、未知のウイルスや環境の激変といった予期せぬ危機に対応できず、絶滅リスクが高まるからだ。遺伝子はそのリスクを回避するために、人間を意図的に多様化させる。 (社会の常識と遺伝子の戦略)  人は道徳や宗教を通じて行動の指針を学ばされ、それに沿った日常生活を送っている。そして、社会の指針から外れる人々に対し、村八分のようにはじき出すような排他的な行動を起こしてしまう。歴史を振り返れば、宗教戦争に代表されるような考え方の異なる人たちに対しての深刻な対立や残虐性であろう。一方、私たちの生命の設計図である遺伝子は生存戦略の観点から画一的な人間を作り出すような設計はしない。様々なタイプの人を意図的に登場させる。その代表例がサイコパスや ADHD であり、こういった人たちが旧来の価値観や凝り固まった画一性な人たちに対して破壊的な力を行使する。実際、社会的権力者や成功者にはサイコパスやADHDが多い。とはいえ、遺伝子レベルにとってもこれら人々は異端であり、増殖をさせる事はしない。このような人は子孫という点では決して恵まれたものではなく、最悪は、家系図の消滅する事が多い。 (嘘をつけるサイコパスは知能犯) 嘘をつけるサイコパス的な人は、そうでない人よりも社会的に有利な立場を築きやすい。 会社生活を例にとれば、常識人が目を背きたがるような経営陣からの無理難題な要求に対しても上層部に正論を交えながら心地よい発言を終始し、虚飾を交えた報告を繰り返す。当然であるが、本人自身も無理難題を解決できるとは思っていないから、役員の興味が薄れるのを待ち、プロジェクトが上手くいかない理由を巧妙に作り上げ、時には人に転嫁して逃げ切ってしまう。まさに、自分の都合の良い「劇場」を作り上げる能力に長けている。  特に大企業のような矛盾を多く抱える環境では、業務遂行能力そのものよりも、いかにトラブルを回避し、円滑な人間関係を維持...

ロボット技術が製造業の先進国回帰を誘発

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 (労働の法的規制) 人権に関する取り組みの一環として、労働環境の法的整備は重要な課題の一つである。特に工場や建設現場などにおける労働条件や安全衛生の基準は、国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)によって国際的な指針が定められている。日本においては、労働基準法や労働安全衛生法などの法律により、土木工事、建築、化学工場などの現業に従事する労働者の作業環境が保護されている。危険物を取り扱う業務に従事する場合には、定期的な健康診断の実施が義務付けられており、労働者の健康と安全を守る体制が整えられている。  一方で、こうした安全対策や法令遵守を徹底することは、製造コストの上昇につながる場合がある。企業にとっては、コスト競争力の維持が重要な課題であり、その結果として、大企業は製造拠点を規制の厳しい先進国から、労働関連の規制が比較的緩やかな新興国へ移転しつづけた。 (「世界の工場」の推移) イギリスで起きた産業革命は、「世界の工場」という概念の始まりであった。これにより、それまで手作業で行われていた生産が機械化され、大量生産が可能となる。蒸気機関の発明と普及により輸送技術も飛躍的に発展し、一定の品質を保ちながらも安価な製品を大量に供給できる体制が整った。 時が経つにつれて、周辺国であるドイツなどが化学産業で優位性を発揮するなど、イギリスは次第にその地位を低下させた。こうした中で、アメリカ合衆国が新たな工業大国として台頭する。アメリカは、移民による豊富で安価な労働力、広大な消費市場、石炭・鉄鉱石・石油・木材といった豊富な天然資源を背景に、急速に工業化を進めた。特にフォードによる自動車の大量生産方式は、標準化・機械化・分業体制を確立し、20世紀にはアメリカがイギリスに代わって世界の覇権を握るとともに、「世界の工場」としての地位を確立した。 アメリカは経済的に豊かになるにつれて労働賃金は上昇し、1960年代ころからコスト競争力が低下する一方で、第二次世界大戦で敗戦したドイツや日本が急速に発展し、米国に食い込むようになる。特に日本は高度経済成長期に入り、「欧米に追いつけ、追い越せ」のスローガンのもと、繊維などのローテク産業からスタートし、1980年代にはハイテク分野においてもアメリカを凌駕し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されるようになった。 日本も米国と同様、経...