投稿

9月, 2025の投稿を表示しています

ロボット技術が製造業における先進国回帰を誘発

イメージ
 (労働の法的規制) 人権に関する取り組みの一環として、労働環境の法的整備は重要な課題の一つである。特に工場や建設現場などにおける労働条件や安全衛生の基準は、国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)によって国際的な指針が定められている。日本においては、労働基準法や労働安全衛生法などの法律により、土木工事、建築、化学工場などの現業に従事する労働者の作業環境が保護されている。危険物を取り扱う業務に従事する場合には、定期的な健康診断の実施が義務付けられており、労働者の健康と安全を守る体制が整えられている。  一方で、こうした安全対策や法令遵守を徹底することは、製造コストの上昇につながる場合がある。企業にとっては、コスト競争力の維持が重要な課題であり、その結果として、製造拠点を規制の厳しい先進国から、労働関連の規制が比較的緩やかな新興国へ移転する動きが見られる。 (「世界の工場」の推移) イギリスで起きた産業革命は、「世界の工場」という概念の始まりであった。これにより、それまで手作業で行われていた生産が機械化され、大量生産が可能となる。蒸気機関の発明と普及により輸送技術も飛躍的に発展し、一定の品質を保ちながらも安価な製品を大量に供給できる体制が整った。 時が経つにつれて、周辺国であるドイツなどが化学産業で優位性を発揮するなど、イギリスは次第にその地位を低下させた。こうした中で、アメリカ合衆国が新たな工業大国として台頭する。アメリカは、移民による豊富で安価な労働力、広大な消費市場、石炭・鉄鉱石・石油・木材といった豊富な天然資源を背景に、急速に工業化を進めた。特にフォードによる自動車の大量生産方式は、標準化・機械化・分業体制を確立し、20世紀にはアメリカがイギリスに代わって世界の覇権を握るとともに、「世界の工場」としての地位を確立した。 アメリカは経済的に豊かになるにつれて労働賃金は上昇し、1960年代ころからコスト競争力が低下する一方で、第二次世界大戦で敗戦したドイツや日本が急速に発展し、米国に食い込むようになる。特に日本は高度経済成長期に入り、「欧米に追いつけ、追い越せ」のスローガンのもと、繊維などのローテク産業からスタートし、1980年代にはハイテク分野においてもアメリカを凌駕し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されるようになった。 日本も米国と同様、経...