ロボット技術が製造業における先進国回帰を誘発

 (労働の法的規制)

人権に関する取り組みの一環として、労働環境の法的整備は重要な課題の一つである。特に工場や建設現場などにおける労働条件や安全衛生の基準は、国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)によって国際的な指針が定められている。日本においては、労働基準法や労働安全衛生法などの法律により、土木工事、建築、化学工場などの現業に従事する労働者の作業環境が保護されている。危険物を取り扱う業務に従事する場合には、定期的な健康診断の実施が義務付けられており、労働者の健康と安全を守る体制が整えられている。

 一方で、こうした安全対策や法令遵守を徹底することは、製造コストの上昇につながる場合がある。企業にとっては、コスト競争力の維持が重要な課題であり、その結果として、製造拠点を規制の厳しい先進国から、労働関連の規制が比較的緩やかな新興国へ移転する動きが見られる。

(「世界の工場」の推移)

イギリスで起きた産業革命は、「世界の工場」という概念の始まりであった。これにより、それまで手作業で行われていた生産が機械化され、大量生産が可能となる。蒸気機関の発明と普及により輸送技術も飛躍的に発展し、一定の品質を保ちながらも安価な製品を大量に供給できる体制が整った。

時が経つにつれて、周辺国であるドイツなどが化学産業で優位性を発揮するなど、イギリスは次第にその地位を低下させた。こうした中で、アメリカ合衆国が新たな工業大国として台頭する。アメリカは、移民による豊富で安価な労働力、広大な消費市場、石炭・鉄鉱石・石油・木材といった豊富な天然資源を背景に、急速に工業化を進めた。特にフォードによる自動車の大量生産方式は、標準化・機械化・分業体制を確立し、20世紀にはアメリカがイギリスに代わって世界の覇権を握るとともに、「世界の工場」としての地位を確立した。

アメリカは経済的に豊かになるにつれて労働賃金は上昇し、1960年代ころからコスト競争力が低下する一方で、第二次世界大戦で敗戦したドイツや日本が急速に発展し、米国に食い込むようになる。特に日本は高度経済成長期に入り、「欧米に追いつけ、追い越せ」のスローガンのもと、繊維などのローテク産業からスタートし、1980年代にはハイテク分野においてもアメリカを凌駕し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されるようになった。

日本も米国と同様、経済大国となるにつれて賃金水準が上昇し、繊維などの労働集約型産業は次第に中国などの他国へ移転させていく。一方、改革開放政策を進める中国は、先進国からの工場誘致を積極的に行った結果、21世紀を迎える頃には「世界の工場」としての地位を確立させ、世界第二位の経済大国になるまでに成長した 。

(参考)

 1920年頃の世界人口ランキング(推定) は、1位   中国: 約 450〜460百万人、2位 インド 約 320〜330百万人、3位ソビエト連邦  約 130〜140百万人、4位 アメリカ合衆国:約 106百万人、5位日本  約 56百万人、6位      ドイツ:  約 60百万人、7位  イギリス: 約 45〜47百万人、8位フランス :  約 39〜40百万人、9位 インドネシア: 約 40〜45百万人、10位ブラジル: 約 30〜35百万人

(次なる「世界の工場」)

 「世界の工場」と呼ばれる地位を築くには、単に製造能力が高いだけでなく、国力、国民の能力、そして豊富な人口という要素が不可欠である。人口の多さは、労働力の供給源だけでなく、巨大な消費市場を作り上げることができる。現時点においては、中国がその座を確保しているが、中国も一人当たりのGDPが1万ドル超えをした結果、繊維などのローテク産業はバングラデシュやミャンマーなどのより低コスト国々へと移転している。そうなると次の製造拠点は大国インドにシフトするというのが自然な流れだが、今の時代、安価な賃金で長時間労働を強いる過酷な労働環境は人権の観点から国際的に容認されにくい。さらに、森林や農地を犠牲にして工場を建設するモデルも、地球温暖化や環境保護の観点から問題視されており、先進国グローバル企業はこうした開発に対して慎重な姿勢を取るようになる。

(ロボット革命はベーシックインカム理論に発展する)

 今後、ロボットが製造業の主役となる流れは、もはや不可逆的である。製造業の未来は、人手による大量生産から、技術によるスマート生産へと移行しつつある。この変化は、コンピュータが約50年の歳月をかけて産業の中枢に躍り出た歴史と重なる。ロボット産業もまた、いくつかの波を経て進化してきた。第一の波はIBMによる基礎技術の確立、第二の波はマイクロソフトやインテルによるパーソナルコンピュータの普及、そして第三の波はGAFAMの隆盛によるクラウド・AI・IoTの統合である。

この流れの中で、テスラやアマゾンなどの米国企業が先導し、アメリカが再び製造大国として台頭する可能性も、決して絵空事ではない。高度なロボット技術とAIによる自動化が進めば、従来の労働集約型モデルに依存せず、国内回帰型の製造体制が現実味を帯びてくる。

さらに、技術革新は労働のあり方そのものを変えつつある。特に西欧諸国では、ベーシックインカム理論が本格的に議論される可能性が高まっている。ロボットによる生産性の向上が人間の労働を代替することで、従来の雇用モデルが崩れ、社会保障の新たな枠組みとしてベーシックインカム理論が注目されるようになるだろう。

              wikiより引用

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