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3月, 2025の投稿を表示しています

金利のある世界の投資行動

 私は、「元本保証商品の運用利回りは壊滅状態」 https://investment-v3.blogspot.com/2021/07/blog-post_15.html でゼロ金利のトホホな利息事情を書いた。しかし、その後3年で日本の金利事情は大きく変化した。私は2021年時点では、金利の上昇は膨大な政府債務への悪影響から実現性に乏しいと思っていたが、日本にインフレ基調が根付き始めた事でその流れが変わった。日銀はインフレ率と符合するように政策金利を調整する姿勢に方向転換した。僅か数年で日本の金利トレンドがこれだけ変わってしまう事に驚嘆するばかりである。 (デフレの再来はない)  コロナ禍により世界中で深刻なインフレを経験する一方、日本は長らく続くデフレの余波からインフレは軽微であった。しかし、海外輸入の材料高と円安が重なったことでインフレ基調に転換した。さらにインバウンドの外国人はラーメン1杯2000円など価格の上限を気にせずに消費してくれることから、企業側はかつてのデフレ圧力に悩まされなくなった。日本のデフレは日本経済が世界的に見て圧倒的に強かったからであり、その時は日本円も強かった。そして、今のようなインバウンド消費をできる外国人は少数だった。今日の日本の国際競争力は中国に大きく突き放され、特定分野では韓国や台湾に追い越されている。こういった要素を勘案すれば、日本にはデフレになるだけの強い経済力は持ち合わせていない。日本がいまだに世界一の債権国であるものの、産業競争力の著しい低下というという点の側面を見過ごすべきではない。 (日銀の政策金利引き上げ状況) 日銀は、インフレ率と国内景気を勘案しながら政策金利を引き上げている。2024/3(0.1%)⇒2024/7(0.25%)⇒2025/01(0.5%)。これに付随して国債金利も上昇し、3月には1.5%を記録するまでになった。大手銀行の普通預金の金利が0.2%、1年物定期預金が0.275%まで引き上がった。欧米諸国と比較すると政策金利はまだ低いままだが、長期10年もの国債で比較すると、もはやスイス(0.7%)を大きく引き離し、韓国(1.7%)、中国(1.8%)とは射程圏に到達し、西欧諸国2%台まで近づき始めている。このままだと西欧諸国とは長期金利で肩をならべ、その後政策金利で近づいていくという方向に流れてい...

トランプ政権が目論む新たな世界スキーム

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 トランプ政策については、オールドメディアなどが非常に偏った報道をしているため、トランプ政策の本質を理解しづらい。しかし、これを放置すると、今後の米国株投資を大きく見誤ってしまう。  私は、トランプ二期期政権に関して、以下の投稿をしているが、 トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること(2025/01)   https://investment-v3.blogspot.com/2025/01/1988.html トランプ政権後の金融市場を占う(2024/11)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/11/blog-post_23.html トランプ政権誕生による世界経済への影響(2024/07)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/07/blog-post_20.html  トランプ政策については、今後も試行錯誤を繰り返しながら考察をしていきたい。 ①第二次世界大戦後のスキームからの脱却  トランプの主張は、「アメリカを世界一の大国として維持をさせるが、世界の警察官からは脱退する。」という第二次世界大戦後のスキームからの脱却である。これまでのスキームは、第二次世界大戦後の東西冷戦を念頭に、世界の過半の経済力を持つ西側陣営のリーダーとしての米国の立ち位置があった。それは東側陣営のリーダーであるソ連についても同様である。日本においては、日本の再軍備阻止等の観点から日米安保を締結している。しかし、今の米国の世界GDP比率は20数%程度にすぎず、中国に肩を並べられるまでに低下した。このため、米国が世界の警察官を維持できなくなっているのは明白である。  まさに、自国の領土は自国の資金で、かつ自国の軍隊で守る時代に突入しなくてはいけなくなったのである。日本においても、第二次世界大戦のトラウマを払しょくし、新たな防衛政策を打ち立てる必要性が出てきたのだ。 ②米国の再構築の試み  トランプは、MAGA( Make America Great Again)を掲げている、トランプ政策で誤解されているのは、米国は再び強力な覇権国家を取り戻すということであり、これの意味する事は、中国との覇権国家争いにほかならない。このまま自由貿易を続けたら、いつかは中国に国力を追い抜かれ、覇権...

富裕層分析 新富裕層分析?

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 (世界有数の平等国家)  日本の税制は世界でも類を見ない社会主義的な性質を持っており、日本政府はそれをさらに強く推し進めている。そのおかげで日本には、他国のような一部の大富豪が国の大部分の富を占めるようなことにはなっていない。しかしながら、富の格差というのは雑草と同じように想像以上に強い。日本においても現実問題として格差はそれなりに拡がっている。例えば、東京都心部で一軒家を持つことはサラリーマンである限り不可能に近いと言えるが、実際にはそれなりのサラリーマンが一軒家を購入している。国の平等政策にも関わらず、そのズレはどこから出てくるのだろうか。 (旧富裕層の没落)  富裕層のイメージとして、古くからの資産家や名家を思い浮かべる人も多い。しかし、今の日本では代替わりにおいて膨大な相続税を課せられるので、次世代まで富は続かない。これは戦前から続く名家だけでなく、一般人であるが高度成長期に成功してそれなりに贅沢な生活をしてきた層でも言える事であるが、高級住宅地において代々に渡って住み続けている例はそれほど多くない。著名人をみても、かつては超一等地に豪邸を構えていた森繁久彌、加山雄三、そして梅宮達夫、石原慎太郎etcなどそうそうたる面々の屋敷は今や売払われている。さらに、多額の金銭面での相続は意外と少なく、残された立派な屋敷や骨董品は売却しても大した額にならないのが実情である。社会的成功者はその人の活躍に応じてセレブな生活を体現しても、その人の没後は過酷な相続税などの要因で子供や孫の代まで引き継がれるということは今の日本においては非常に困難である。 (新富裕層の出現) 旧名家や社会的成功者が没落する一方、賢い一般人から富裕層が生まれている。その実態として、バブル崩壊以降は賃金水準の高い大企業ほど頻繁に早期退職者制度を実施し、社会に不安を与えているにも関わらず、超多額とも言える割増し退職金(一時金)が得られ、かつ賃金水準をそれほど下げずに転職できた人。それ以外に、IPOによる持ち株の成金。勤務先株価の暴騰による莫大なストックオプション。高賃金の外資系企業を渡り歩くビジネスマン。最後は、企業の大小関係なくアベノミクス相場で資産を増やせた層の中から、自らの不安解消のために大きな支出を控えながら蓄財し、不動産や株式などの投資に積極的な一部の人達が該当する。 (高度成長期の...

「メキシコの漁師」に見る人生と労働の皮肉

 (ファーストリテイリングの入社式)  ファーストリテイリングの入社式に関する日経記事があった。柳井正会長兼社長は「新しい報酬体系で初の新卒社員になる。世界中で活躍してもらい、付加価値のある高い利益を生むビジネスを作り出す。そのフロントランナーになっていただきたい」とエールを送った。この会社は2025年より新卒社員の初任給を33万円にした。全体の新入社員数は約1300人を予定しており、新入社員の代表は、「プレッシャーもあるが、その分期待をしてくれているということだと思う。その期待をモチベーションにして頑張っていきたい」と意気込みを話した。  この会社に勤めるということは、会社の好業績を支えるための歯車になることを意味している。この激務な会社で働いている間は、この会社に全てを捧げるような生活になるのは間違いない。つまるところ、社員は柳井指揮官が率いる軍隊と相違ない。  こういったものを見ていると、リベラルが平等平等と叫んでも、こういった会社への奉仕は、厳しいビジネス競争の打ち勝つためというお題目の合法的な奴隷制度なのかもしれない。  しかし、こういった企業があるから日本の国富は先進国に留まれるのだ。だから、日本に取っては、一定数以上、このような企業は存在しなくてはいけない。 (「メキシコの漁師」にみるビジネス社会への皮肉) 「とても魚釣りが好きな漁師がいた。漁師は好きな時間に起き釣りをし、子供や友達と楽しく遊ぶ毎日を過ごしていた。そこに、アメリカの観光客を運ぶ小さな漁船がメキシコの小さな島に着いた。船から下りると、旅行者人の一人がメキシコ人漁師に尋ねた。「すごいね、どれくらい漁をするとこれだけ大量に釣れるの?」「いや、昼のちょっとした時間、海に出て漁をしただけだよ」  それを聞いた旅行者はビジネスの好機ととらえ「漁をする時間をもっと増やして、もっと多くの金を稼いだらどうだい」というと、漁師は「なんでそんなことしなくちゃいけないの?。これで十分生活が成り立っているよ」と言った。すると旅行者は、「それなら、余った時間は何しているんだい?」と聞いた。漁師は「朝はゆっくり起きて漁に出る。その後は子どもと遊んで、女房とシエスタする。 夜になったらバーで友達とギターを弾きながら歌をうたって。これで一日は終わる」と説明した。 今度は旅行者がビジネスマンの立場から漁師に言った...

AI革命は両刃の剣

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 (目まぐるしい科学技術の進歩)  科学技術の飛躍的な発展により、人々の生活はより高度にそして快適になった。しかし、これらの発展は人間の作業を簡便化する役割が大半だ。例をあげれば、車や飛行機、テレビ、ラジオ、コンピュータなどで、さらにこれら製品を作るための画期的な大量生産方法や生産設備、農業においては食糧増産の化学肥料となどである。これらは、大衆化の均一性に対し生産性を高めるものであり、更なる発展を促すためには、人のもつ闘争本能や感情などの多様性制御を促すツールが必要になる。 (競争がない社会は発展しない)  人間社会は、ちょっと前までは王政を強いている国が多く、ほんの一部の支配者層と既得権益層が国富を独占し、圧倒的多数の国民は貧困生活を余儀なくされる封建社会が一般的であった。その後、産業革命により資本主義が台頭するが違った意味での壮絶な格差社会が引き起こされ、これに反するように貧富のない社会を目標とした共産主義思想の国家が台頭する。しかし、競争がない平等下の社会では、人は自堕落になりやすく、良悪はあるが過酷な競争でしか富や科学的進化が生まれない事が判明した。現在においては、西欧諸国では資本主義でありながら格差をできるだ少なくする社会性民主主義国家が一般的になっているが、科学技術や産業の発展という点では、資本主義国家である米国と圧倒的な開きが生じている。 (科学技術は人類の感情コントールにまで踏み込んでいない)  そもそも人の才能は均一ではない。例として、教育において40人クラス全員に東大目指した学力をつけさせる。スパルタな練習でプロ野球選手やサッカー選手を目指させる。こういった取組のもとで、どんなに頑張ったとしても東大合格、プロ野球選手になれるわけではなく達成率は極めて低い。そもそも才能格差に対する社会の答えは曖昧なままである。  さらに能力が均等であっても、組織内においてはパーレートの2:8法則に従って活躍できる人と出来ない人に分かれてしまう。組織内では上り詰めるためには、大抵の場合、実力ではなく、特定の人に気に入られる裁量の側面が大きい。さらに、国家間においてもその国のメンツが正義より重きをおかれ、マスコミの報道も真実というより当事者が信じる正義感というフィルターでの報道に終始している。 (AIによる人の管理という革命)  AIの発展は著しい。2030...