トランプ政権が目論む新たな世界スキーム
トランプ政策については、オールドメディアなどが非常に偏った報道をしているため、トランプが行っている政策の本質を見失ってしまう。しかし、これを放置すると、今後の米国株投資を大きく見誤ってしまう。
私は、トランプ二期期政権に関して、以下の投稿をしているが、
トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること(2025/01)
https://investment-v3.blogspot.com/2025/01/1988.html
トランプ政権後の金融市場を占う(2024/11)
https://investment-v3.blogspot.com/2024/11/blog-post_23.html
トランプ政権誕生による世界経済への影響(2024/07)
https://investment-v3.blogspot.com/2024/07/blog-post_20.html
どうしてもオールドメディアの偏向報道に振り回されがちになってしまうため、トランプ政策については私の考えを試行錯誤の一環として時系列に書いていこうと思っている。
①第二次世界大戦後のスキームからの脱却
トランプの主張は、「アメリカを世界一の大国として維持をさせるが、世界の警察官からは脱退する。」という第二次世界大戦後のスキームからの脱却である。これまでのスキームは、第二次世界大戦後の東西冷戦を念頭に、世界の過半の経済力を持つ西側陣営のリーダーとしての米国の立ち位置があった。それは東側陣営のリーダーであるソ連についても同様である。日本においては、日本の再軍備阻止等の観点から日米安保を締結している。しかし、今の米国の世界GDP比率は20数%程度にすぎず、中国に肩を並べられるまでに低下した。このため、米国が世界の警察官を維持できなくなっているのは明白である。
現状を踏まえれば、日本が他国と軍事衝突しても、経済大国である日本は自分たちの力でその問題を解決するのが筋であり、それは西欧の軍事紛争においても同じである。まさに世界の軍事スキームの転換点に突入したといえよう。
②財政均衡への試み
トランプが次に狙っているのは、米国のとてつもない経常赤字からの脱却とドルの復権である。本来なら倒産してもおかしくない国が倒産しないのは覇権通貨がゆえに湯水のようにお金を発行し借金を帳消しできるからである。トランプはこの構造にメスを入れようとし、世界中の国々と相互関税を敷いて、取引の正常化を図ろうとしている。それだけで莫大な経常赤字が解消されるとは限らないが、それと同時に国家財政の規律にも力を入れており、小さな政府を目指そうとしている。実のところ、これはまさに共和党の理念に他ならない。
関税の効果は、一定程度において他国輸出企業の米国移転を促し、米国民、特にブルーカラーの雇用を安定化させるであろう。関税をするとその分だけ物の値段が上がると論じる向きもあるが、商品の値段が上がりすぎると消費者は購入を控えるものだ。このため資本主義の競争社会では企業はそういったハードルを上手に潜り抜けている。例として、第一期政権の時に中国に関税を強いたが、それが原因で深刻なインフレに陥ったという形跡はない。それどころか中国企業は米国に膨大な輸出を続け、コスト面で見合わなくなると他国経由で米国に物を売っている。日本では、急激な円高局面においても、対応力の弱い企業はダメージを受けたが、優良企業はしっかりとそういった障害を跳ねのけている。当然であるがトランプもそういった事は承知であり、農業のように柔軟性に乏しい分野に対してのみ細心のケアを払っている。
③オールドメディアと民主党
21世紀は民主党政権が隆盛を極めたといって良い。民主党の本来の主張は弱者に対するいたわり、そして高福祉を実現する社会である。民主党の目標は、世界の国家間、人種間、性別間のいがみ合いなど様々な問題を解消していくユートピアであり、これは西欧諸国が中世の封建主義から試行錯誤を経ながら現在の民主主義社会を築いてきた流れの続編と言ってよい。しかし、このような理想は今後100年、いや200年にかけて試行錯誤を経ながら実現していくテーマであり、世界の多くの国は、今もって本当の意味での民主主義国家を実現できておらず、日本や西欧のように適正な富の分配すらままならない。これら理想を定着できるほど人々の社会や考えは成熟していない。あまりにも性急すぎたのである。その例はカルフォルニア州の状況をみれば一目瞭然である。移民であるイーロンマスクがカリフォルニアと民主党を捨てたように明らかに理想論と現実社会のギャップが容認できる状況でなくなった。このため、トランプ大統領は急ぎ過ぎたこれら政策を巻き戻して、現状の社会の成熟度に併せての政策を戻したのだ。それは、米国だけでなく、それら政策に追随する国も同意見なのであろう。
④トランプ大統領の本気度
トランプ大統領の本気度は相当なもので、人生をかけて改革を行っている。トランプは大統領の報酬のうち1ドルしか受け取っておらず、残りは必要なところに寄付を行っている。さらに二期政権に入ると、生き急ぐように土日など関係なく様々な政策を打ち出し続けている。政策による多少の混乱に対しても「少しの辛抱」を要求し、自分の理想とする政策に邁進している。4年の間に一定の目途をつける覚悟なのであろう。この政策が成功すればトランプの改革は歴史上の1ページを飾る可能性もあるが、今時点においては成功するかは不明瞭である。
⑤投資家の行動
投資家が意識するのは、トランプのこのインタビューである。
「自分は数十年先、さらには1世紀先を見据えた米国の富の再構築を進めており、アメリカ株式市場の四半期毎の結果ではこれを測ることができない。」
長期的な目線で米国に富を蓄える仕組みを作っている過程においては、短期的な株価動向と乖離することも容認しなくてはいけないということである。これを見る限り、株価の動きは不明瞭である。トランプの視点は労働者の生活向上であり、安易な米国相場の活況ではない。今の米国相場はマグ二セントセブンの暴騰に支えられており、米国内の貧富の差を拡げただけにすぎなかった。そういった点では、10年以上続いたGAFAMの一極集中の相場に一区切りがつく可能性もあり、労働者寄りの政策を打つことで10年以上に渡って見放されていた内需銘柄がリバウンドすることも考えられる。日本における為替政策は、関税戦争などによるインフレ動向を見極めながら一区切りがつくまでは今のレンジで推移し、それ以降は120円を伺うまでの圧力をトランプ政権から受けることを覚悟した方が良いのかもしれない。
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