米国株投資の選定戦略

前回更新日:2024/05/25
1.米国市場の弱肉強食の非情さ
ここ40年間、ダウは右肩上がりを続けている。このため、米国株に投資をすれば無条件に儲かりそうなイメージを持たれやすいが、米国株は日本以上に企業業績と株価が連動している。このため、たとえ米国市場が上昇相場でも、企業業績が振るわなければ非情なまでにその銘柄の株価を奈落その底に突き落とす。このように甘えの許さない米国市場では、長期間に渡ってインデックスと連携している銘柄など殆どない。
2.銘柄分析
①ファンダメンタル分析の無意味さ
株価が上昇しやすい銘柄は未来に輝くような期待値のある企業であり、投資家は無意識に企業における現在および数年後の企業業績を逆算している。こういった期待値は、①企業が販売する商品の将来性 ②増収増益を繰り返すことでの投資家からの安心感 などにより投資家からの高い評価の蓄積から始まる。そういった期待を獲得した銘柄には投資家から多くの資金が流れ込んでくる。たとえ、決算が一時的に振るわなくても株価は下がらない。一方、現状の業績が良くても未来の業績が尻すぼみになると判断される場合は低PERで放置される。このように株価は投資家の期待値という非定量的な信用具合の評価基準で上下に変動し、そのブレ幅は、PERは10倍以下から30倍後半まで約4倍近くに及ぶ。これだけの開きがあれば収益や財務分析などのファンダメンタル分析で株価を予想しても期待通りの結果など得られない。
②IT業界の超高収益モデルが時価総額を天空にした
2010年中頃から、GAFAM等がIT分野で独占的なシェアを獲得したことで、製造業が到底太刀打ちできない高収益率ビジネスが可能になり、時価総額を天空の領域に導いた。さらに、コカ・コーラやマクドナルドなどの国際優良企業はフランチャイズのような形式を取り入れて、低収益の事業分野を最大限に切り離して高収益を実現している。昨今の時価総額上位銘柄はこういった高収益ビジネスでかつ独占的な地位を築いた企業に集中している。
③「成長性」が株価上昇の根源
 株価は常に現況におけるすべての材料を織り込んでいる。現状のPERや高収益ビジネスだけで上昇軌道を描けるものではない。市場が嫌うのは飽和であり成熟であり、いつでも市場は、企業側にさらなる好材料か更なる成長期待を求めてくる。
こういう要求に応えて成功した例が、①マイクロソフトのビルゲイツ及びインテル:Windows 普及によるパソコンの大衆化。②アップルのスティーブ・ジョブス:スマホ普及によるインターネットと日常生活の融和。③アマゾンのジョフ・ベゾス:電子取引の普及による商取引の電子化。そして、④テスラのイーロンマスク:電気自動車普及による脱炭素社会への誘導である。
とはいえ、こういった企業でさえ成熟化したと判断されれば、株価は下降線か横ばいを描くようになる。例えば 2000年前半のマイクロソフトは、Windowsの市場が飽和したことで株価は長期低迷に陥った。その後は、ゲームやクラウドなどの次なる高成長かつ収益ビジネスに成功し、第二期成長期を迎えることができた。一方、同時期の花形企業であるインテル、オラクルやシスコシステムズは次なる成長軸を見出せず、株価はゆったりとした上昇に留まっている。

2.銘柄選択のコツ
① 長期連続増配の優良オールド企業への投資
 多くの投資家は長期連続増配銘柄に過大ともいえる幻想を抱いているようだ。これら企業の多くは、成熟したガリバー超優良企業であり、売上や利益の大幅な成長性は望めない。そのため、株価の値上がりに乏しく、増配率も低い。さらに、エリート企業であるがゆえに組織は気高い官僚的な構造になり、世の中の時流への対応の遅れと硬直的なコスト構造に陥りやすく、長期にわたる深刻な業績停滞や凋落に陥りやすくなる。最近では、GM、AT&TGE、IBM、3M、WBAなどがこの状態に陥った。その間はダウ指数と反比例するよう株価は低迷し、時には数分の1までに下落することもある。
とはいえ、投資家から見ると、このような経営上のミスで危機的な状況を迎えているときこそ投資チャンスである。「腐っても鯛」だからである。逆張り的に購入する分には妙味がある。数年間程度辛抱強く待てば、構造改革が実を結び、株価もそれなりにリバウンドするだけでなく、大幅な増配も期待できるので5年いや10年保有すれば購入価格ベースでの配当利回りが10~20%も視野に入る。こういった銘柄は通常時に購入するのではなく危機が発生した時に妙味があると言える。
②テンバガー銘柄探し
 株価の値上がりを求めるなら優良IT企業である。次のテーマはAIやロボットなどになるが、このままだとこれら分野で新しいスターが出現しても、GAFAMが上手にそれら企業を飲み込んで自分達の事業に取り込んでしまう。もはや手の付けられない恐竜ともいうべき存在になってしまった。
米国政府は健全な資本市場を確保するためにも今後のGAFAMの扱いを真剣に検討するのは間違いない。国の経済政策としてGAFAMをこれ以上に肥大化させたら国益を大きく損なってしまうからである。民主党政権はGAFAMを分割によってこれを阻止しようした。一方トランプは技術動向の変化による覇権交代でGAFAMの相対的地位を下げようとしている。とりあえあず、AIやロボットの動向が次なる覇権産業となり、その産業においてGAFAMの浸食を上手に振り切れる新しいキラ星企業が誕生できれば、次なる巨大テンバガー銘柄が生まれることになる。

③インデックス投資
 インデックスが大きく上昇するためには、常に新しいキラ星如くの新興の天才企業が出現しなくてはいけない。これらの銘柄がダウやS&Pに登録され、その間に株価をテンバガーのように上昇させればインデックスもつられて大きく上昇する。実際、米国のインデックスは、90年代後半からはマイクロソフト、シスコシステムズ、オラクル、2010年代はGAFA→GAFAM,2020年代前半はGAFAM+テスラ、エヌピディアなどが指数を押し上げた。ダウ指数を6万近くまでに押し上げるために、これら企業だけではなく、新たに指数を押し上げる企業の出現が必要になる。
 たとえこれら銘柄が出現しなくても、インデックスは一番安定した投資銘柄であるのは間違いない。それは、政府の重要な経済政策の一つに金融市場の安定化があるからだ。このため、政府は緩やかにでも株式市場を右方上がりにする政策をとらなくてはいけない。投資という点では、大きな上昇が見込めない場合でも、程々の上昇を維持できるよう政府が頑張ってくれるので、億以上のお金を保有している者、そして安定的な投資を求める高齢者には資産棄損リスクの低く、ほどほどのリターンや配当を享受できる投資法と言える。

                       
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