米国株投資の黄金時代の黄昏(インデックス投資の低迷)(経済情報との向き合い方)

 

唐突な結論だが、これからの10年間は、インデックス投資は旨みのない投資法になるかもしれない。

 確かに、過去10年間の米国株式市場は、一極集中の黄金時代であった。そして、その旨みはインデックス投資に凝縮されていた。しかし、そんな時代も黄昏を迎えようとしている。これは米国市場が衰退し、他の国が隆盛を極めるという構図ではない。NYダウ指数やS&P500のインデックスパフォーマンスが著しく低下するということである。

 米国以外の先進国市場は成熟期を迎えて久しい。西欧諸国(ドイツを除く)の2000年以降のインデックス指数は全くと言って上昇していない。中国も米国を伺うまでの経済大国になってはいるが、上海市場はリーマン・ショック前の高値から6~7割の水準でしか推移していない。2000年のドットコム・バブル、そしてリーマン・ショックを経た世界の株式市場において、上昇基調を維持しているのは米国市場だけである。そんな世界一強い米国にも成熟化の波は忍び寄っている。

その根拠は、以下の通りである。

米国株式市場の時価総額のGDP比は、2012年100%、2019年150%。そして2021年200%近辺で推移している。そもそも株式市場の時価総額はGDP比で100%を超えると危険水域と見なされてきた。それでも、様々な要素から200%の水準を肯定できたとしても300%は現実的な値ではない。逆に、今後は膨れすぎた時価総額という風船に対して実経済への乖離を縮小する方向に向かうと考えるほうがが妥当であろう。

インデックス指数は、GAFAMを中心とした大型ハイテク株の占める割合が高い。今後もこれら銘柄の株価が上昇すればインデックスも上昇するが、残念ながらGAFAMの時価総額は臨界点に達していると私は見ている。

21世紀前半に世界経済を支えてきた中国経済にも偏重が見られそうだ。中国経済の国富は世界の工場で築かれたものではなく、驚くほどに上昇した不動産価格が運んだ富によるもの。その不動産市場も、恒大グループに代表されるように曲がり角を迎えている。共産党政府は、日本の二の前にならないように秀逸な対応や政策を打ってくるのは間違いない。しかし、不動産価格がこれ以上の上昇をして、中国の富を膨らませていくのは到底困難である。

そうなると、次はインド,アフリカの出番だが、これらの国が本当の意味で台頭するにはもう少し時間が必要である。

⑤さらに、それに輪をかけて世界を襲ってくる問題がある。それは少子高齢化問題である。どうもコロナ禍でこの流れが加速する勢いである。生産人口と言う点では米国はピークを過ぎている。そして中国もピークが過ぎ始めている。それ以外の主要国は既に人口オーナス期に突入している。これはGDP成長率の低迷を意味し、結果として株式市場の時価総額もこれに追随することが予想される。

⑥そうなると、革命的な生産性向上ということになる。これらはいずれAI技術などの台頭で人間の仕事が機械に置き変わっていく時代がやってくるであろう。そして人々の生活はベーシックインカムで最低限の生活を保証されるようになり、社会生活の安定が図られる。しかし、そういった社会の実現は、最低でも20年近い歳月は必要だ。今はまだ、黎明期である。それはメタバースも同じである。

 私が書いているのは異端中の異端かもしれない。しかし、日本のインデックスも1989年を境に逆回転をした。その時の日本企業の競争力は紛れもなく世界一であり、少なくても2000年まではその流れが続いていた。

 今となっては誰も唱えなくなったが、1990年代まで多くの識者は、「バブル後遺症はあるが、投資家は日本の優良企業に分散して投資すれば必ずやその恩恵に被ると言われ続けた。なぜなら、東証株価は1949年から1989年までの40年間に250倍に膨れ上がった。バブル崩壊は深刻だが日本の優良企業の競争力は永遠に続くものであり,Made In Japanは世界最強のブランドだ。だからこそ、不良債権処理による社会不安はあっても、優良企業に長期投資をすれば、結果として投資家に膨大なリターンをもたらす」。という論調だった。しかし、現実にはそれら優位性は周辺の東アジア諸国に移管されてしまった。

 米国株が長期調整局面に突入すれば、世界中の市場が調整局面に入る。そうはいっても、インデックス投資は株式投資の王様であり、過去100年以上に渡って、幾度となく繰り返された調整局面を打ち破ってきた実績がある。だからこそ、どんな悲観論に覆われても、多くの投資家は過去の実績を拠り所としてインデックス投資を支持し続けている。しかし、そんなときこそ「人の行く裏に道あり花の山」という諺の意味を噛みしめたい。

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