ネットワーク専業企業からの脱皮に苦戦 シスコシステムズ
初版 20220326
1.はじめに
シスコシステムズは、ダウ30にリストアップされている世界有数のネットワーク機器企業です。この会社の戦略は、ジョンチェンバース元CEOの「市場をセグメント化して、そのセグメントでNO.1かNO.2になることを目指す」に代表されます。
2.中途半端なM&A戦略
シスコシステムズは、ネットワーク機器を主軸にしながら、長年に渡って積極的なM&Aを実施してきました。その数は優に200社を超えています。こういう戦略は、年代的にはGAFAの先輩格とも言えます。ちなみにこの会社は、1999年に世界一の株式時価総額を記録しています。ほんの短い期間ですが、一昔前のGAFA的な役割を担っていました。
これだけM&Aをしながら、今もってして、この会社はネットワーク機器という領域から大きく脱皮していません。同時期の雄であるマイクロソフトはWindowsの呪縛から離れ、更なる成長軌道に移行させた事を考えると非常に残念です。当然ですが、その結果は株価の差となって表れています。
3.成長性の乏しい業績推移
下記のとおり、GAFAMと好対照に売上は、長年に渡ってほぼ横ばいです。M&Aの実施状況から類推するにネットワーク機器と関連ソフト以外の事業を大きく飛躍させる実力がないことを物語っています。これではIT分野のオールドエコノミーも同然です。
4.「ズーム」躍進に見るシスコシステムズの限界
その代表が「ズーム」です。この会社のCEOは、シスコシステムズ出身です。もし、このCEOの力量をシスコシステムズ内で如何なく発揮することが出来たなら、ズームの原型であるWebexMeetingは、シスコシステムの主力製品になっていただけでなく、投資家は新事業領域の開拓に成功させたシスコシステムズの経営に対する力量を評価することになり、そのプレミアとして株価は現状の2倍近くで推移することでしょう。 まことにもったいない話です。
私自身が勘繰るには、これは一例に過ぎず、幾度となく、シスコシステムズはこういった大魚を逃がし続けていると推測されます。マイクロソフトなどのように主力製品を広範囲の事業分野でラインナップできる会社ではなさそうです。当然ですが、これは企業に深く根付いた文化でもあり、これからも同じことを繰り返することは間違いありません。いい悪い関係なく、シスコシステムズはネットワークコングロマリットではなくネットワーク専業メーカーとして突き進んでいくことが正解のようです。
5.投資対象としてのシスコシステムズ
IT分野は、最も野心的で優秀な人材が集まる業界で、かつ日進月歩の技術トレンドに乗り遅れないよう絶え間なく事業再構築の必要性に迫られます。シスコシステムズは、この点でGAFAMに対抗できる会社ではありません。限界が垣間見えます。
その一方、ネットワーク機器分野はアメリカの国策産業でもあります。他国にその優位性を奪われることをアメリカ政府は国防上の観点から認めることはないでしょう。そういった意味では、シスコシステムズは政府に守られた安定した事業分野で勝負しており、他のIT企業と違って、弱肉強食の波に飲まれて消え去ることにはなりません。
その反面、IT銘柄に要求されるような成長や株式投資のリターンは見込めません。コカコーラ、いやベライゾンと同格の投資対象と位置づけた方が無難です。
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