投資家視点の戦後経済(2) 1950年代  戦後初の株式ブーム

70年前の日本は今の日本とだいぶ異なっているのが分ります。今の日本は、よく言えば成熟し大人になった。悪く言うと高齢化社会となって活気がなった。この頃の活気にあふれた日本はある意味幸せな時代だったのかもしれません。

1.戦後初の株式ブーム(1951~1953) 

1951年7月には朝鮮戦争が休戦状態に入ったことで、実態経済は再び調整局面に入った。それでも、株式相場は下げ相場に転換することなく上昇基調を維持し、同年10月には170円台、翌年には多くの業界で生産過剰が表面化し操業短縮に陥ったにも関わらず、4月に200円、10月に300円と株式相場は暴騰した。その頃の状況は、下記の 「昭和29年 年次経済報告」にて垣間見ることができる。

~抜粋~

「動乱勃発後海外需要の増加に刺激されて繊維、機械、金属、化学、製材など関連産業部門の生産が急激に上昇し、1年後の昭和26年6月には動乱前よりも4割も上回るに至った。しかし、海外需要は26年春頃から後退に向かったため、かかる異常な増産は26年春頃から夏にかけて急増した輸入原材料の到着とも相まって、国内市況を圧迫することになった。ことに、高値買付を行った油脂、ゴム、皮革などの新三品や、輸出不振に陥った繊維品などは価格の著しい反落を招いたが、夏と年末に行われた滞貨融資や救済融資で食い止められ、国内市況全般への波及が防止された。その後も化繊、ソーダ、薄板、ゴムなどにみられる操短、綿紡の価格調節あるいは鉄鋼の建値協調などの市況安定措置がとられ、また滞貨融資も必要に応じて行われた。 しかし、消費の実勢は鈍化したとはいえなお上昇を持続しており、経済の他の部門例えば金融、財政、商品市況など既に現れつつある景気後退現象はまだほとんどみられない状況である。」

       


上記経済報告書の通り、1953年には、株式相場はいっそう白熱して、2月4日には474円を付け、1950年7月の最安値から、ほぼ2年半で5倍強の上昇をした。

1945 年から 50 年頃までの日本経済は、極端な供給不足による未曽有のインフレ圧力に襲われ、市場メカニズムによる需給調整が機能しなかった。このため、政府は統制的手段で需給の調整を図った。その後、政府は市場メカニズムでの需給調整に切り替えるべく、ドッジラインで諸統制を解除した。このように終戦直後の成長経済は、統制に頼った経済を復興期、市場メカニズムに任せた経済を成長期と区別することができる。

2.スターリン・ショックと投資ブーム(1953~1954) 

1953年3月スターリン死去のニュースが世界中をかけ巡った。これを受けて、翌日の東京株式市場は主力株や軍需関連株を中心に売り物が殺到し340円を記録する大暴落。その後も売り基調が続いて4月1日には295円を付けた。この暴落によって1950年から続いた戦後初の株式ブームが一旦収束したように見えたが、一般企業マインドは市場の停滞をよそに強含みで推移し、急ピッチに下値を切り上げ、9月には450円と2月高値(474円)近辺まで戻した。こうした経済の過熱は国際収支を悪化させ、貿易収支の赤字幅は7.9 億ドルにまで膨らみ、経常収支も2.1億ドル の赤字となった。これを受けて、政府は1953 年 秋に金融の引締めを実施して国際収支の悪化を食い止めようとした。

政府の金融引締め政策は、翌年から本格的な浸透をみせはじめ、  まず商品市況が軟化し、卸売物価は 3 月以降下落基調となった。生産者在庫(製造工業)は年明け後に急増し、鉱工業生産も、4 月以降下降 カーブを描 くよう になり、中小企業等を中心に企業倒産が増加した。株式市場も不況期に入り、1954年3月には314円まで下落した。

参考 万田日銀総裁は、金融引締め方針について


「最近の金融引締めについては、決して楽観していない、周到に注意して現状把握に努めている。しかし今日言論界、財界の少なくない部分の声は実情を誇張し過ぎている嫌がある。今日不況といえても戦前とは大分条件が違う。今のデフレ政策は昔とは違ってそう大きな物価引下げを図っているわけではない。世界経済を恐慌におとし入れるような物価低落はない。金融引締めによつていろいろのものの価格が下がる。その下がつたものを使って生産すればコストは下がるのは当然である。……こうして大きな摩擦なく国際競争に耐え得るようになると思う。だからそう過大な声に惑わされないようにしなければならない。


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