連続増配記録の正念場 スリーエム
初版220403 旧タイトル:増配率の長期低迷懸念 スリーエム
スリーエムは、60年以上続く連続増配銘柄であり、古参のダウ採用銘柄である。かつてはGEと並び称される優良コングロマリット銘柄としてもてはやされたが、GEが退場した現在、同社に対するコングリマリット経営の評価は年々厳しいものになっている。
①産業部門(Industry) 30%強
工業用テープ、接着剤、研磨剤等
②セキュリティ部門(Safety&Graphics) 20%程度
防塵マスク、滑り止めテープ
③ヘルスケア部門(Health Care) 20%程度
病院向け機器 サージカルテープ他
④電子・エネルギー部門(Electonics&Energy) 15%程度
絶縁テープ モニター用フィルム等
⑤一般消費者部門(Cimsumer) 15%程度
ポストイット、粘着テープなど
まさに、コングロマリットであり多岐の製品を扱っているが、接着系技術をベースとした製品も多く、そういう面では特定の技術に対して、応用的な利用を提唱し、様々な業種に多面的な展開を図っていこうとする経営戦略を垣間見ることができる。
3.企業業績
上記の通り、長期に渡って理想的な経営を行っていることが分かる。老舗企業でありながら持続的な成長を続けており、これに連続配当年数を加味すると優良企業の鏡であるのは間違いない。そして米国を代表する企業であることも間違いない。
3,増配率の低下懸念
しかし、配当という側面から当社を見ていくと、当社の苦境も見え隠れする。長期軸での配当性向は以下の通り。
一株当たりの配当は、2018(1.36)⇒2019(1.44)⇒2020(1.47)⇒ 2021(1.48)⇒2022(1.49)に推移している。
ここ3年は、わずか1セントしか増配していない。このことはスリーエムの増配余地が上限に達していることを意味している。どうも、経営陣から見て売上及び利益の更なる成長が見込めていないことの表れである。
逆な見方だと、ここ20年にわたって増配率を高く設定してきたツケが来ているともいえよう。一株当たりの配当が2022年時点で0.9ドルなら、2022年時点においても余裕のある経営を維持できたはずだ。
4,コングロマリットの限界?
高い成長性が見込めないと判断されたら、米国流経営はコングロマリット解体ということになる。 しかし、この会社は特定の技術に対して、様々な業種に渡って多面的に事業を展開している非常に頭のいいビジネスモデルを構築している。グリコの「一粒で二度おいしい」を上回り、「一粒で百度おいしい」というビジネスモデルなので安易な解体は逆効果のように思われる。
しかし、20%ほどの売上を誇るヘルスケア部門をスピンオフすることを発表。これの示唆することは連続増配の限界ではないだろうか。スピンオフをすることで、両社で連続増配の体裁をとり、本体は実質減配にすると予想される。
しかし、スピンオフで実質増配をできない場合は、当社のビジネスモデルに限界きていると判断してもあながち間違いではない。
5,投資の目安
私は、この銘柄をウオッチリストに入れていたが購入しはしていない。しかし、21年2月頃には200ドルもあった株価が今は120ドル。連続増配銘柄として購入した投資家の殆どが回復の困難な含み損を抱えているものと思われる。
しかし、60年以上も連続増配している企業の底力を軽視してはいけない。100ドル近辺なら安定的な投資ができることは間違いない。スピンオフするヘルスケアも並み以上の優良企業であることは間違いない。
私は、初版で
「ドルベースでの投資ができるなら140ドル近辺が狙い目。円ベースだと、米国株全体に言えることでもあるが円安という付加コストが付いてしまう。当面の間は様子見ということになる。」
と書いた。円安に助けられた格好だが、こういったところに投資の難しさが詰まっている。
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