投資家の最後の楽園 (インド) 

 


1.インドを考える

 インドは、その人口が14億人近くに昇る大国という位置づけでなく、人的リソースにおいても世界有数のレベルを誇る国です。しかし、現状においては一人当たりのGDPが3000ドルに満たない発展途上国にすぎません。その理由としては、①カースト制が近代経済への移行を阻害している。②世界中を見渡しても類を見ない多民族国家で単一民族である日本のように国民全体が団結して発展することの困難なこと。などが挙げられます。そんなインドにもじわりと現代資本主義の潮流が浸透し、長きにわたる眠りから目を覚まそうとしております。

 そもそも、インドの歴史を紐解くと、インドは長きに渡って世界の大国の位置にいました。むしろ現在のような停滞こそほんの僅かな期間でしかありません。この点ではかつての中国も同じような境遇でしたが、ここ30年で往年の立ち位置にまで回復しております。同系列の大国であったインドも、当然ですが同じようなリバウンドは期待されても可笑しくありません。

2、インドと中国の比較

現状では、インドは中国に大きく後れを取っていますが、これは一歩先に中国が発展した裏返しです。しかし、中国を含め世界中が少子高齢化の波に飲み込まれる中、インドは平均年齢が28歳と若く、これからその強みを発揮していくことが期待されています。ちなみに日本の平均年齢は48歳です。(これでは、日本という国の活力が失われるのも頷けます。)さらに中国と比べ一人あたりの所得が相当低いこともあり、中国がかつて歩んできた衣料や絹製品など特定の製造業の製造拠点としての役割が期待されそうです。



 3.インドの未来予想

① インドの発展形態

 たとえ人件費の優位性があったとしても、インドは中国のように世界の工場としての役割を担うのではなく、特定の業種に対してのみ製造業としての強みを発揮するものと思われます。それより、インドはIT分野での発展が期待されます。それは米国のIT産業におけるインド人の活躍からも見て取れます。そんな優秀な人材の一部がインドに帰国し、自国のIT分野の発展に貢献する。これが現実的な発展形態にも思われます。さらに都市部に世界中のマネーが入り込み、未曾有の不動産開発が起こる可能性もあります。それが廻り廻って不動産価格のバブルを引き起こして、国力を高めていく。不動産投資で潤った中間層が購買意欲を高めていく。インドの場合、中国と同じように僅か10%の中間層でも日本を超える人口です。日本のように1億総中流を目指さなくても、国民の10%が先進国と同等の生活が出来れば、世界有数の経済大国になれます。そんな経済に対する莫大なポテンシャリティーが隠れています。

②インドのGDP成長予測

長期のスパンで想定する限り、インドはこのまま経済成長を続け、中所得国のワナの直前に達するまで1人当たりのGDPが上昇していくことが期待されます。その一方で、債務のGDP比率は既に80%を超えており、新興国としては高水準です。これを意味することは、インドは国を発展させるための機動的な公共工事が行えないということです。これは、インドの発展のスピードを鈍化させます。それでも、歴史的な推移を紐解くとインドは海外からの投資とIT技術により、GDPは世界シェアの10~13%まで上り詰めていくことは十分に考えられます。逆なことを言うとそれ以上の発展は困難を極めるという裏返しでもあります。この線で考えていくと、インドのGDPは今の4倍強に膨らむことが可能であるのではないでしょうか。

③インドの株式市場


 株式紫綬においても、インド株式市場とGDPの比は、残念ながら100%近くに上っており、株式市場はインドの発展をかなり先まで織り込んでいます。これを見る限り、インドにおける株式インデックスが夢のように上昇することは期待薄です。その反面、インドのGDP成長幅を考慮するとそれと同程度のインデックスの上昇を期待できることもしかりです。そういう点では、インデックスはGDPの成長幅である4倍程度の上昇までは見込めないわけではなさそうです。

 又、投資家の保有する余剰マネーが、世界で数少ない成長市場であるインドの株式市場に対して、意図的にバブルを引き起こすことも十分すぎるくらいに想定されるシナリオです。その時は、インデックスは5~6倍まで膨らむことも予想されます。

4.投資スタイル

インドについては、当然ですが、その企業経営は新興国レベルの域を超えていません。個別企業への投資は新興市場と同じスタンスで望むことが求められます。私は米国以外の国の個別銘柄には原則投資しないようにしています。理由は、株主への忠実さや会計ルールの透明性を考慮すると何をどこまで信じて良いかを判断するのに苦労し、調査しても調査しきれないからです。それ以前に、インドは海外投資に対し、個別銘柄投資への門戸を開いておりません。このため、インド株に特化した投資信託という選択として考えられるのですが、ここではインデックスに連動した投資に絞って考えてみたいと思います。

その1.SENSEX市場の動向

下図のSENSEX指数を見る限り、インド株式について投資家から見た最盛期は過ぎている可能性があります。SENSEX指数は、80年からの40年間で既に450倍強の上昇をしています。それでも前回のブログで書いたように、SENSEX指数はこれからも一定程度の上昇は期待でき、2020年代後半のSENSEX指数は、現状の約2倍の8万~10万程度になるものと推測されます。最盛期は過ぎたかもしれませんが、日経と比べたらSENSEX指数は堅調に上昇していくことだけは間違いなさそうです。



その2.投資対象となるETF

① 1678(NEXT FUNDS インド株式上場投信)

 2010年1月の指数99、2020年1月の指数163です。ベンチマークはNIFTY指数ということもありますが、ルピー安が影響して実際のNIFTY指数よりパフォーマンスが低くなっています。しかし、逆に20年以降は円安が貢献して、2022年4月には指数が250を超え、20年1月に比べて1.5倍の値上がりをしています。このためルピー安がなければ、10年で2倍強のリターンは期待できそうです。それでも当ETFの残念なところは、配当が期待できないことです。運用するにはちょっと寂しいものとなっております。

② Ishare S&P BSE SENSEX

ルピー安等の為替の影響があり、本家のSENSEX指数には及びませんが、ほぼ相似形になっています。それでも2013年から約2倍にしか上昇していないということは、成長著しいインドETFである事を考慮するとちょっとも物足りない気もしなくもありません。





5.投資方法

 インドは投資家における最後の楽園と言われている割には、正直、思ったほどの投資効果は得られそうもありません。となると、制度上不可能ですが、インド株で大儲けするには個別株投資が望ましいということになります。そこには、たくさんのテンバガーを達成しそうな小型株がひしめいていると推測されます。

とは言っても、リターンが少ないインデックス株でさえ、インド経済の成長性を考慮すればゆっくりと確実に上昇していくのだけは間違いなさそうです。ただ、通貨ルピーの慢性的な弱さと現状における異常に安い円レートを考慮する必要もあります。この二つの要素で高い成長率の割に海外の投資家への旨味が激減する恐れがあります。

それらを考慮すると、私は保守的に以下を購入ターゲットとして設定いたします。

  1678(NEXT FUNDS インド株式上場投信) :200以下   

  2836 iシェアーズ インドS&P BSE SENSEX:25HK以下

この価格は成長著しいインド経済に対する低迷を待たないと実現しないレンジかもしれません。なので、購入できるのはいつになるのか判りません。もしかしたらこの先ずっと購入できないという事態になるかもしれません。

5.結論

 21世紀前半は、中国が世界を席巻し、今や米国を凌駕するまでに至りました。そんな中国にも、経済成長の鈍化の兆しが見え隠れしております。その一方、インドはこれから成長を享受する国です。インド人は中国人に劣らず優秀な国であり、それは、米国の超一流IT企業のCEOにインド人が多いことでも伺えます。マイクロソフト、IBM、アドビ...これら企業のCEOはインド人であるという輝かしい実績があります。そういった点からすると、インドという国が、何らかの形で隆盛を極める日がやってくるのは想像に難くありません。中国とはことなり様々なハードルあるものの数倍は期待できます。

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