為替レートと政策金利から債券投資を考える

 


資産運用においてリスク分散は大切で、株式相場が低迷しているとき、元本保証でかつ利息が確約されている債券投資は魅力的に映ってしまう。さらに、外国債券については、金利動向だけでなく為替レートを組み合わせることで,利回りにレバレッジをかけることが出来る。これらを上手に利用すれば、債券でもそれなりの運用ができてしまう。

1.外債投資

1.1 日本国のファンダメンタル等から見た為替レート

為替レートの動向を当てるのはそう単純ではない。一見、円安局面一色にみえても、数年後には円高になっていることも少なくない。逆もしかりである。日本円は、ファンダメンタルの物差しを変えれば、円安にも円高にも振れてしまう要素を持ち合わせている。

①世界一の債権国と未曾有の金融緩和

日本は世界一の債権国であることを忘れてはいけない。そしてIT分野を除けば世界有数の技術大国でもある。通常なら円高圧力がかかるはずだが、現状においては無視され続けている。

これは、デフレ退治という大義名分でアベノミクスによる未曾有の金融緩和を行った結果であり、ドル円は日本の国力に比べ安すぎる水準で放置されてしまった。さすがに10年近くも放置したことにより、発展途上国並みの物価水準になるなどの副作用がでている。しかし、日銀にとっては、この金融緩和政策終了宣言ことこそ最大の関門で、日銀の国債保有額は、植田日銀総裁になってからも、2023年3月末の576兆円から11月594兆円に増加している。

②基軸通貨国である米国の強み

 日本は世界一の債権国。一方、米国はダントツ世界一の債務国。さらに、米国国債の債務膨張も加速的に進んでいくことが予想されている。これだけなら為替レートは限りなくドル安水準に進んでいくものである。しかし、為替レートの動向はファンダメンタル的な要素だけでなく米国政府の意向も無視できない。米ドルは世界の基軸通貨であり、今のところ世界有数の信用力の高い通貨でもある。そういった強みを生かして、米国当局が、米国経済をより適切な方向に誘導するために為替レートを調整している。為替動向は個々のファンダメンタル以上に米国政府の政治意向が見え隠れしている。

2.インフレ基調の復活

①米国の政策金利引き上げ

中国が世界のサプライチェーンの重要な役割を担い始めたころから、世界中人々が品質の良い製品を比較的安い値段で手に入れられるようになった。これがインフレ抑止圧力となり、世界の長期金利は低下の一途をたどった。先進国においては、昔のような高い政策金利とインフレは来ないだろうという論調が主流になった。しかし、コロナ禍による世界中のサプライチェーン寸断と、リーマン・ショック及びコロナ禍対峙による未曾有の金融財政政策が眠っていたインフレを呼び覚ますことになる。

こういった動きを受けてFRBは、22年に利上げを7回実施し、年末には4.5%とした。FRBはインフレ率が一定の目途がつくまで金融引き締め政策を続けると公言している。歴史を振り返れば、一度火のついたインフレはそう簡単に消火で出来るものではなく、これの意味する所は、賃金上昇と物価上昇のいたちごっこであり、金利は当面の間3~4%で推移していくものと想定される。 


②日本の超低金利政策の潮目の変化

 日本政府、そして日本銀行もインフレ率の高まりから超低金利政策の修正に動き始めている。令和5年1月17日の日経報道によると、財務省は2026年の10年債の想定金利を1.6%と想定している。財務省は、金融緩和の一部解除を前もって意識したものと考えられる。しかし、金利上昇は、国債の利払い膨張を意味するだけでなく、市中においては中小事業者のローンだけでなく、一般世帯の住宅や教育などの様々なローン金利にも影響する。政治的に野放しにできるものではない。日銀と政府は一定以上の金利上昇を防ぐ目的から、日銀による国債購入に踏み込み続ける可能性が高い。とはいえ、低インフレ基調の経済では長期金利を市場に委ねても金利が青天井に上昇するものでもない。そうなると、当面の長期金利は、せいぜい良くて1%台で留まるのが関の山で、これは財務省の予想と皮肉にも合致することになる。

3 債券投資スタンス

①外国債券

為替予想は様々な要因のバランスで成り立っているので予想することが非常に難しい。為替レートを細々と研究し為替動向を予想するよりも、円安・円高の双方に振れても儲けられるようなポートフォリオを組んで。投資家として為替レートの変動を楽しむほうが賢い投資スタンということになる。

円安ならば、円→ドルでの投資を控える。逆に現状保有しているドル資産を円に戻すなどの検討をすべきである。又は、米国の長期国債の利回りが良いときは米国株を売って米国債にシフトすることも検討の一つである。逆に円高なら、円資産をドルに換えて長期国債や外貨MMFなどで運用し、米国株が安くなった時にドルベースで優良な米国株に投資することも視野に入れた方が良い。そうしているうちに、不思議なもので為替レートは円安にふれるのでれるので何もしなくても為替利益を享受できてしまう。

②日本の債券

長期的な金利動向の推移はともかく、中期での投資スタンスを考えていくと、私は、日本国債の利息の低さを嘆いた記事を21年に載せた。何故なら、このようなマイナス金利がここ10年程度揺るがないと思っていたからだ。まさか、2年もしないうちにこのような状況に環境が変化するとは思わなかった。投資家は、今ある基準で未来を語るべきではないとつくづく思わされてしまった。

投資家として長期金利が1%を目指す展開が見えてきたことで、2~3%台の債権を発行する優良企業が視野に入ってきた。円ベースで一定の利回りを得ることが出来る商品が現れるようになってきたことは、資産のポートフォリオを考える上で嬉しい限りである。

バッフェット先生の教え、「投資は損しないこと。そしてそれを守ること」の格言に従って。長期視点で資金を投入することは大切なことである。

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