長期投資家視点でAmazonは投資対象になれるのか?
Amazonと言えばGAFAM の一角であり、ジョフ・ペゾスにより、将来性のある事業を多角的に展開している巨大コングロマリットである。
しかし、私はGAFAMの中で、Amazonに関してはこれから厳しい局面が控えていると予想している。
1.Amazonの強み
Amazonの強みは、既存店舗型の産業構造をデジタル店舗型に移行するビジネスモデルである。実際、この20年間、Amazonのビジネスモデルは人々に未来への夢を与えながら企業規模を拡大し、多くの店舗型の既存企業を駆逐してきた。最近は、オンライン診療の参入を試み、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、CVSなどのドラッグストア業界を低迷させたのも記憶に新しい。
2.万年低収益体質
Amazonのビジネスは、そういった壮大な夢とは相反するように、企業業績は長年に渡って赤字計上をしてきた。Amazonは未来に向けた設備投資や税金対策などの諸々の理由で、意図的に低収益体質を堅持したが、将来性のあるビジネスモデルと売上の成長性は投資家に好意的に受け取られ、株価は常に右肩上がりを形成してきた。それは、投資家にとってテンバガーどころでは享受を与えた。しかし、Amazon企業規模がどんなに肥大化しても、低収益から脱却する兆しはなかった。というより、株主が長期にわたって低収益体質を容認していたことで、企業風土として染みついてしまったというのが正しいのかもしれない。
3.Amazonの斜陽を断言できる理由
Amazonの収益性の低さはまるで、高度成長期の日本企業と何ら変わらない。高度成長期の日本企業も技術力や将来性での期待から「JAPAN AS NO1」と持てはやされ、株価はうなぎ昇りの上昇をしていたが、その一方で財務的には未来に向けた設備投資を優先していたことから収益性が低かった。「JAPAN AS NO1」の時は財務内容を意識されなかったが、バブル崩壊後の需要が低迷する日本経済において日本株式会社は見事なまでに凋落をしていくことになる。の後は収益性を高める経営にシフトしていくが、今度は日本株式会社の本来の強みを失う結果となってしまった。
4.Amazonの転換点と今後
Amazonの転換点は、なんといってもジョフ・ペゾスの引退と株主が安定的な高収益性を求めるようになってきたである。私自身は、ジョフ・ペゾスの引退は企業の成熟度から見て、少し早すぎたと思っている。ジョフ・ペゾスが引退する前にAmazonに対し、夢を追いかける挑戦的なベンチャースピリットのある企業ではなく安定的な高収益企業に転換すべきではなかったのかと。
後任のアンディ・ジャシーは、AWS事業を屈指の高シェア&高収益事業に育ててきた実績がある。アンディ・ジャシーは、ジョフ・ペゾスのように未来への夢物語で勝負する経営者ではなく、現状を踏まえながら経営をするタイプであるようだ。
つまり、各事業部門にしっかり利益を得られるような体制を要求していくだろう。一方、株主に対しては、株式分割や自社株買いなど株主還元を精力的に行っていく姿勢を見せている。それは、1997年の上場の際にジョフ・ペゾスは株主への手紙のなかで「短期のウォール街の反応に左右されない」と言った成長いちじるしいベンチャースピリットによくある発言とは対照的に、世界を代表する巨大コングロマリット企業であるAmazonとしての身の振り方に徹している。
株価というのは、その企業の将来性に裏打ちされた成長性と収益性に比例してくるもの。この手の企業の定石の結末シナリオは、投資家の期待が消えたとき、株価は崖を転がり落ちるように下がっていく。
巨大コングロマリットが高収益事業体の集団に変身できなかった時、アンディ・ジャシーはスピンオフか分割を視野に入れるであろう。もしかしたら、10年後には、クラウド(AWS)事業、EC(電子商取引)、その他で3分割する方向に向かうのも絵空事ではないかもしれない。
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