エクソン・モービルは21世紀のフィリップモリス 

 

 時代は脱炭素に舵を切っている。それは20世紀のメガ名門企業であるオイルメジャーのエクソン・モービル、シェブロン等に多大なダメージを与えることになる。誰もがエクソン・モービルを将来性のないオワコンの企業と見なしている。しかし、ここで逆説的な提案をしてみよう。エクソン・モービルは21世紀のフィリップモリスになり、脱炭素のムーブメントを逆手にとってしぶとく好業績を叩きだしていくというシナリオである。


1.コロナ禍がエクソン・モービルを低迷サイクルから脱出させた

 エクソン・モービルは、約100年近くに渡って、米国企業トップの座に君臨するキングオブキングにふさわしい企業だった。21世紀初頭には原油高による未曽有の高収益で米国企業の時価総額ランキング上位に昇りつめた。しかし、2016年以降の原油安により売上は半減し純利益で配当をまかなえないほどに業績は低迷した。そして、2020年のコロナ禍では、度重なるロックダウンでエネルギー需要が急激に減少したことと、バイデン大統領の脱炭素政策でクリーンエネルギーへのシフトが加速したことで、エクソン・モービルは数兆円の赤字を出すなど存続が危ぶまれるほどの危機に陥った。

誰もがオイルメジャーは終わったと感じた。しかし、エクソン・モービルはコロナ禍によって会社の危機感が最高潮に達し抜本的なリストラを行ったことで、あらゆる事業の贅肉が取り除かれ、悪しき組織の官僚化とコスト硬直性を打破することに成功した。

2.脱炭素がエクソン・モービルを高収益体質にさせる 

 皮肉なことに世界中で脱炭素を掲げてもエネルギー需要は減ることはない。逆に増加傾向である。このような状況下で原油増産を制限させることは、原油価格の高値を常態化させることにも繋がり、脱炭素化のムーブメントがエクソン・モービルに莫大な利益が流し込んでもいるようだ。

 各国政府が脱炭素と声高々に叫んでも、太陽光発電や風力などの再生化エネルギーは化石燃料の代替ができるほど技術の成熟には程遠く、EV自動車も末端までの普及には高いハードルがある。脱炭素を達成するには、エネルギー消費量を減らすのではなく、工場や自動車、電力会社等で排出する二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を外気中に排出しない仕組みを構築するほうが効率的だ。エクソン・モービルは世界有数の化学メーカーであり、二酸化炭素回収技術に積極的に関与していくのは明白だ。

4.エクソンは21世紀のフィリップモリス

 フィリップモリスは、体に有害なタバコを売ることから、長年にわたって社会的な圧力を加え続けられてきた反面、株主から見るともっとも投資リターンの高かった銘柄の一つでもあった。このような逆説的な動きは石油産業にも当てはまるであろう。エクソン・モービルはこれから様々な団体から提訴され、かつ圧力を受け続けるだろう。そういう圧力が強まれば強まるほど、原油生産が制限され原油価格を高値で推移させることになる。そんなジレンマをエクソン・モービルは上手く立ち回っていくことになる。

5.投資対象として

 エクソン・モービルの株価は100ドル近辺を推移するようになり、上昇余地は限られている。しかしながら、この手の会社の経営能力は、世界でも屈指のメジャー級の優秀な連中が経営を行っている。アナリストが指摘すること等は彼らの戦略の中にしっかりと織り込まれており。エクソン・モービルはその先を見て経営している。

エクソン・モービルは成長銘柄ではない、とはいっても、当面の間は高収益が期待できる銘柄でもある。株価は大きく飛躍することはないが、莫大な自社株購入で地道な上昇は期待でき、ダウ30以上の株価の上昇は見込めそうである。また、配当も現状の0.91ドルから順調に増配を発表していくことが予想され、10年後には1,5ドル位の水準は見込まれそうだ。

このため、配当を重視する投資家にとっては、もっとも美味しい部類の銘柄になるかもしれない。

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