投資家視点での経済・金融政策の向き合い方
初版 2023.03.18 (旧タイトル:経済政策は進化している)
1.経済・金融政策の著しい進化
〇この100年間に株式市場には様々な経済変動(大ショック)があった。古くは1929年の世界大恐慌から、日本のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、そしてコロナ禍危機。そういった荒波の中において米国相場は大恐慌を除けばほぼ右肩上がりに推移してきた。これは米国の政府関係者及び経済学者が、これら発生要因をとことん研究し、大恐慌と同じことが起きないように対策を立てたことに他ならない。
〇資本主義経済はは国家としての発展期を除けば、国内需要は成熟状態「企業の供給>消費者の需要」にある。これは株式市場から見ると相場の低迷を意味する。このため「中央政府は金融政策や財政政策により消費者の購買意欲や企業の需要意欲を喚起しながら、技術革新が導く新たな産業の需要創出力を待つことになる。
リーマン・ショックは、米国政府の世論に押されたゆえの政治の失策であるが、中央銀行はマネーの供給量調整,需要喚起の点で世界中が協力して大規模財政政策を実施することで大恐慌を回避させる等で、株式市場の調整サイクルに構築に成功した。
〇コロナ禍という未曾有の疫病による世界経済のクラッシュ危惧に対しても、リーマン・ショックを克服したノウハウを応用したことで難局を逃れることが出来た。過剰な金融緩和はリーマンショックでは起きなかった激しいインフレの副作用は表面化した。
〇今の金融技術なら1929年の世界恐慌は、間違いなくちょっとした暴落で済んだであろう。80年代の日本の不動産バブルも今の金融技術を駆使すれば、長期に渡る経済低迷を避けることができて失われた経済にならないほどの市場を操作するテクニックを中央銀行は持ち合わせるようになった。
〇こうなると、次なる惨事は、必然的に過去の事例に当てはまらないケースに限られてしまう。実際、「第三次世界大戦を思わせるような戦争」、「巨大隕石による地球への壊滅的な打撃」等くらいしか大恐慌を引き起こすトリガーが見当たらなくなっている。
2.中央銀行の金融市場のコントロール例
これは現場感覚に落とせば、将来儲かる又は値上がりすることが分かっていても、購入できるだけの余剰資金がなければその投資に躊躇してしまう。その一方、生活資金に余裕があって潤沢な余剰資金があれば、こういった局面をチャンスと捉えて果敢に投資する。それはプロの投資家も同じで、市場に投資する資金をどれだけ集められるかで株式市場への運用度合いが変わってくる。投資する資金が不足している時は株式運用が活発に行われないため市場は低迷する。先進国の当局は、このような株式市場の性質を利用して、必要以上に金融資産を膨張させながら、マクロ経済的には、景気サイクルを平たん化させている。
例1:コロナ禍の大不況の回避
その当時のニュースは、コロナ禍の猛威による経済的な打撃を受けた人たちが発する恐怖記事で覆い尽くされていた。世界各地でロックダウンが頻発して、物流のサプライチェーンは寸断した。多くの人々は1929年の世界大恐慌、軽度だとしてもリーマン・ショック級のダメージを覚悟していたが、株式市場は大規模金融緩和による潤沢なマネーを背景に強気に反転し、GAFAMなどのIT銘柄は最高益を記録することで時価総額2兆ドルを膨らませるだけでなく、ダウ3万を伺うまでなど異様な活況を呈した。一方、経済や時事ニュースを真剣に追いかけた投資家ほど自分自身の今後の不安と次なる相場の二番底を危惧そして投資することに尻込んでしまった。結果的には過去の経験則とは無縁な新規参入の投資家を中心にその恩恵にあずかることとなった。
その2:コロナ禍後の悪性インフレ対峙
21年の中ごろから、強烈な金融緩和の副作用で、世界中が10%近い深刻なインフレに見舞われた。世界中で庶民は物価高によって、生活水準を実質的に切り下がり、日々の生活を一層厳しくさせ、経済ニュースでは欧米諸国が経済破綻に陥りそうな報道を繰り返していた。FRBなどの中央政府はインフレ鎮静化のために政策金利を0%から5%近くにまで引き上げたことで金利負担に耐えられない銀行や企業の破綻、バブル状態にあったIT銘柄を中心にNASDAQ指数は最高値から4割近く値を下げた。そして、企業や個人の債務ローンの延滞も深刻なものとなった。それは2001年のネットバブル崩壊と同じ光景に映ったが、GAFAMなどの大手テック企業はこの局面でも好調な決算を維持したことで株価に下値抵抗線が出来て、さらには2023年にはマイクロソフト社のChatGDP発表によって世界中でAIブームによって、IT銘柄は再び上昇基調に推移する。
3.それでも定期的に投資チャンスは訪れる
こうなるとインフレなどの副作用はあるものの、米国相場などは大きく崩れる危険性はほとんどなくなった。しかし、歴史は形を変えて繰り返す。投資家は、そんな機会をチャンスに捉えるべきである。
どこの国も政治家は国民の選挙で選ばれる。このため、政治家は国民からの支持を得ようと限界を超えた財政政策や金融緩和で国民を喜ばせようとする。そういった無謀な政策が次なる暴落の源泉となって地中深くにうずくまっている。株式市場は少なくとも数年間隔に1度はその源泉を爆発させて一時的であるが大暴落を起こす。
投資家は、特に米国政府の動きをしっかりとウオッチしていく必要がある。しかし、どの政治家も経済の根幹をなす株式市場をないがしろにはできない。そのため、構造上、暴落を放置することはできない。投資家はそういった視点で市場と向き合うべきである。
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