高度成長期の投資事情から現在に通じる投資法を学ぶ
〇日本の青春時代。
高度成長期は日本が一番輝いていた時代である。戦後の焼け野原から世界一の技術大国になるまでの奇跡的な成長を成し遂げた時代であり、年を追うにつれて人々の生活水準は向上していった。株価も驚くほどの上昇をし、ほぼ一貫して上昇基調を貫いた。日本がここまで飛躍できた背景には、東西冷戦期に日本が西側の重要な同盟国としての太平洋側の拠点となったこと。米国の軍事的な庇護下で国力を経済成長に注ぎ込めたこと。さらに、主要な産業及び企業は政府の護送船団方式によって外資の参入を拒みながら開発力を付けていったことなどが要因になる。
このようにして、日本は世界有数の技術大国にまで伸し上がって、やがては米国を凌ぐまでに成長した。さすがに米国も危機感を感じて、日本を経済面でのライバルと見做し、日本政府が敷いた自国の企業に優位な法規制を次々と撤廃させ産業の自由化させていった。それがバブル以降の不景気と時期が重なりあって、自由化に対応できなかった主要企業の低迷や衰退につながっていくことになる。
〇誰がこの大暴騰の利益を享受したのか
高度成長期時代、日本株は149円から38915円まで上昇した。しかし、これだけの大暴騰にも関わらず、この恩恵を授かって大金持ちになったという話はあまり聞かない。もし、多くの人が莫大な利益を享受していたら、書店にはそれに関する多くの本が並んでいるでしょう。
逆に、その当時の本を見ていると、株式投資はうさん臭く、仕手筋などの安易な投資情報を鵜呑みにして損したという話が多い。実際、戦後の超名門企業である製鉄、旧財閥系企業、重工業になどに長期投資しても大した投資リターンを得られたわけでもない。ましてや繊維、商船などに投資したら日経の上昇と反比例するような惨憺たる結果になった。さらに、誰でも儲けられるだろうインデックス系ETFなどの商品はこの時代にはなかった。つまり、大暴騰の利益は一部の有能な投資家だけが享受していたことになる。
〇高度成長期に日経指数に大きく貢献した銘柄
その当時の新興成長銘柄はパナソニック、トヨタ自動車、ソニーなどであった。これら企業はその当時においては、近未来に向けた最先端のハイテク企業であった。
このように見ていくと、10年後に活躍が期待でき、長期的には収益、財務内容の良い成長銘柄だけが株式指数で重要な位置を占める構図は、今の株式市場と何も変わらない。唯一つの違いは、高度成長期という時代背景もあり全産業の銘柄にそれなりの成長期待があったことである。
こういった事実にも関わらず、今となっては、高度成長時代はとにかく株式を買うだけでそれなりに儲ける事ができたと勘違をしている論評も少なくない。
〇株式投資手法は古今東西において不変。
どうも株式投資というのは、いつの時代も一部の成長性のある優良銘柄が指数を押し上げているようだ。日本の産業史を眺めていくと、繊維産業が基幹産業だった1950年代からハイテク企業が主導する1980年度までの数回にわたる基幹産業の変遷がその当時の株式市場のスターとなって日経平均を大きく押し上げていったのは紛れもない事実である。
これを今に例えると、米国の株価指数が、5千ドルから1万ドルまで上昇させたのはマイクロソフト、インテルを中心としたIT企業群であり、1万ドルから3万ドルに押し上げたのはGAFAMとその周辺の優良企業群であったことに符合する。平均株価を大きく押し上げらるには、それを引導する成長かつ優良企業の存在が不可欠になる。投資家は明るい未来を築くことができる企業に資金が集中させる傾向にあることは古今東西において何も変わらない。逆に、一国を代表する国策的な超名門企業は優良企業であることに違いがないが、成熟性を考慮すると株価指数を大きく押し上げることはできない。
〇高度成長期の本当の投資先
では、この時代の投資家はどのような行動をとったのかということになる。結論を言えば、この時代の投資家は、株式ではなく不動産に目を向けていた。実際、大都市圏などでは昭和30年頃に100万円程度で土地を購入すれば、その後には数億円の価値にまで跳ね上がっている。さらに不動産投資は株式投資とは異なり、緻密な銘柄分析など必要ない。端的に言えば都市部やその周辺なら、土地に対する目利きなど必要なく、単に購入すれば勝手に地価が上昇していった。実際、世田谷さえも高度成長期の初めころまでは原野があった。投資家はその土地を安く買って放置すれば自然と価格が暴騰した。つまり、元手さえあれば、不動産投資は最もおいしい確実な投資であった。
しかし、そんな極上の投資環境も、バブル経済による異常な地価上昇とその後の少子高齢化を迎えることで、一等地を除けば地価の上昇は見込めなくなった。株式でいえば成熟化と同じ状態になったのである。 そうなると投資環境は逆回転し、目的のない不動産所有は、固定資産税や雑草刈りなどの管理手間などで、負動産に成り果ててしまった。
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