日本株投資銘柄の選定基準

1.長期的な視点での日本株投資のトレンド

株式市場は日々のニュースで上下するが、長期的な視点で眺めるとそこには数十年にわたるトレンドが存在している。東証を例に挙げると、戦後(1949年)の再開から40年間に300倍近い上昇トレンドを築いた。その後は、25年間にわたる下降トレンドを経験し、2013年のアベノミクスから再び上昇トレンドに転換し現在に至っている。1989年のバブル高値は戦後の高度成長期の終焉を示唆するものであり、2013年からの上昇トレンドは、異次元金融緩和によるか余剰マネーが作りあげた上昇相場である。日々のニュースで伺い知ることが出来ないが、歴史からみるにトレンドは行くところまで行って終焉を迎える。これの暗示することは、異次元金融緩和による副作用がどうしようもない状態まで表面化したときにこそ、今の上昇トレンドが終了するということが妥当な考えなのかもしれない。そういった点では、マクロという点では、日本株の投資には妙味があろう。

2.日本的経営の特徴

日本株の投資において、事業内容が良いとかエリート企業であるかという理由で銘柄選びをするのは好ましいとはいえない。そもそも、日本企業の経営者は日本国としての社会性民主主義の責任を強いられる。このため、歴史のある企業であればあるほど、従業員の雇用や地域経済の安定性を大事にする事を求められ、株主還元を後回しさせられやすい。また、大抵の経営者は経営能力というよりバランスのある人が求められ、米国のように経営のプロに徹し非常になることはできない。むしろ労働者代表の立場を留まることになる。このため、会社として成長戦略を打ち出しても、そもそも経営人が経営の素人によって運営されていることから、それなりの結果しか望めない。このため、銘柄選びには相当に留意しないと10年、20年持ち続けても日経平均の上昇とは裏腹に株価が一向に上向かないというケースに見舞われてしまう。

3.日本株投資の選定基準

①海外売上比率:日本の人口推移を踏まえれば、内需型の産業に長期的な右肩上がりは見込めない。そうなると、海外の売上比率が高い企業を選ぶ。

②圧倒的な製品力:「他社が真似できない特殊な技術や商品で高い参入障壁を築き、中間財など比較的目立たない分野に特化している。 

③「オーナー企業」又は独裁的な経営:創業家は小さな町工場や商店から様々な試練を乗り越えて会社を大きくした。このため、会社内で独裁者になって陣頭指揮をとることも珍しくないが、経営手腕は間違いなくプロ級である。一部優良企業では、日本企業でありながら米国優良企業とそん色ない経営をしている企業も少なくない。実際、株式市場で評価される企業のほとんどはオーナーまたはそれに近い企業である。例として、信越化学工業は厳密にはオーナーではないが、金川会長という存在があった。ファナックは稲葉親子という存在がある。それ以外でもトヨタ、京セラ、村田製作所、HOYAなどは全てオーナー企業である。

④財務が超健全、かつ長年に渡って売上や利益の成長を継続:売上や利益が伸びているという事は、時代の変化に適合した経営をしている裏返しである。これに財務が良好なら常にコスト意識の強い経営をしており、夢だけを追いかけて莫大な研究開発や設備投資を行っていない。たとえ10年間赤字を照れ流しても、債務超過などにならないほど安定した財務を保持しているにもかかわらず、ちょっとした業績不振でさえ、全社一丸となって、ドラスチックなコスト削減や構造改革に取り組むような、危機意識の強いまさに戦う集団となっていることが多い。

⑤株主還元へのこだわり:日本企業においては、株主をどこまで大切にしているかも重要である。家族経営を基本とする企業には、株主をないがしろにする経営者も少なくない。そういった企業は総じて、自分たちの経営の失敗を株主に負わせ減配を躊躇なくする。株主還元という点では、どんな局面でも配当を現状維持するような企業に投資すべきである。

参考 日本の創業家 宿願のROE10%超えが4割に「日経ヴェリタス」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB185XR0Y5A410C2000000/


4.具体的な選定方法

〇世界の経済構造を分析

 米国は、グローバルスタンダード戦略によりIT産業などの先進分野の制覇を死守している。日本は、ジャパンアズナンバーワンと言われた80年~90年初旬までの経済構造から次のステージに移っていない。この点は西欧諸国も同じである。一方、アジア諸国は、日本の製造技術を積極的に取り入れ日本の地位を追い越している例も多い。こういった点でのそれぞれの国の強みや弱みは、

中国:中品質&低価格(繊維 重工業 自動車 エレクトロニクス) 

韓国:中品質&低価格(重工業 自動車、エレクトロニクス)

台湾:半導体、エレクトロニクス

日本:高品質の化学材料、各種高度な機械及び電子部品、その他

西欧:高価格帯(アパレルブランド、自動車 エレクトロニクス等)、高品質の化学材料、

米国:IT、宇宙、製薬、あらゆる産業における世界ブランドの企業群

と詳細には誤差もあるが、大雑把には上記に集約される。


5.投資対象銘柄

 上記条件を照らし合わせながら、下記カテゴリで投資家視点での優良企業をまとめてみた。

 a.グローバル市場でガリバーな強みを発揮し、又は他社が容易に真似できないような特殊な技術を有し、株主にも一定の配慮をしている企業。

SMC 、HOYA、ダイフク、ディスコ、シスメックス、ヤマハ発動機、ユニ・チャーム、キッコーマン、ヤクルト、栗田工業、リンナイ、住友林業、マブチモーター、キーエンス、ファナック、シマノ、参天製薬、TDK、京セラ、村田製作所、信越化学、アサヒHD、NIDEK、住友林業


b.伝統のある名門企業であるが、長年に渡って特定の分野で優位性を保つことで企業価値を維持するだけでなく、高収益に即した組織形態を維持している企業。当然であるが株主還元も積極的である。  

NTT、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、三菱UFJ、三井住友、東京海上、花王、リクルート  


トヨタなどの自動車産業、キャノン、コマツ、クボタ、ダイキン工業などは含めなかった。これは、これ企業が提供する製品は総合製品であり、これら企業は中国や韓国などとの熾烈な競争を強いられる。運が悪ければ、敗退する可能性の否定できない。


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