日本株投資銘柄の選定基準

 1.長期的な視点での日本株投資

 90年代のバブル崩壊以降、日本のマーケットは下降トレンドを突き進んできた。その一方、アベノミクス以降は未曾有の金融緩和により日経は3万円を超えるまでに上昇しているが、未来軸で見た日本は悲観一色であることには変わりない。とはいえ、日本政府と日本銀行は、景気や株価が低迷すれば更なる金融緩和を打ってくること。日本の一部の優良企業がグローバル市場で収益をバランシング化できるようになったことで日本国又は一国の経済状況に依存しない経営スタイルを確立したことで、30年前なら膨大な赤字を垂れ流しそうな景気悪化局面でさえ好決算を維持できるほどに売上やコスト面で筋肉質な経営が出来るようになった。日本株投資においても世界は一つに集約され始めているのである。


2.社会民主主義である日本株投資の難しさ

日本の製造業には世界有数の技術力やシェアを保有している企業が無数にあるが、そういった優良といえる企業であっても、利益水準が低く株主還元を疎かにしていることが少なくない。

日本企業の経営者は、日本国民から社会的責任を強いられ、株主より、従業員の雇用や地域経済の安定性を求められてしまう。そのため、大抵の経営者は経営のプロに徹することなく労働者代表となってしまう。会社経営の構造も経営層と労働者層の境目が希薄なボトムアップスタイルが主流で、米国流のトップダウン式資本主義と一線を画している。会社として成長戦略を打ち出しても、それぞれの部署が自分たちの自己権益を守る部分最適に走ってしまう。人事においても後先を考えない猿山のボス猿争いのような配置を当たり前のように繰り返している。

ここでジャック・ウェルチを添えておく

「自分の地位を守るために嘘をついたり、昇格した同僚をうらやんだり、人になにかをさせるために無駄なルールをつくったりと、そういう「さもしい体裁を涼しく整える魂胆」が会社に政治を持ち込み、スローダウンさせ、やがて企業が死んでいく」


 このことは日本株投資において、投資のプロに徹底できるオーナー系企業以外投資対象になりにくいことを示唆している。


3.日本株投資の選定基準

一般的に優秀なビジネスモデルの定義は、「①他社が真似できない特殊な技術や商品がある。②消費者からの圧倒的というべき信頼やブランド力を勝ち得ている。 ③シェアを独占しているため、他社が参入しても勝ち目がない。④国策事業として政府に守られている。」などであろう。しかし、上記要素を満たせば、その銘柄が投資対象になるほど日本株投資は単純ではない。実際には、以下の要素が不可欠になる。

①「オーナー企業」又は独裁的な経営

 オーナー企業には、外部目線で経営のプロに徹する優秀な経営者が出やすい。実際、会社内では独裁者といえるほどの絶対的な権限を持ち合わせているため、ボトムアップにありがちな様々な調整を排した経営判断ができ、日本企業でありながら米国優良企業とそん色ない経営をすることが可能になる。

 21世紀以降に飛躍している日本企業のほとんどはオーナーまたはそれに近い企業である。例として、信越化学工業は厳密にはオーナーではないが、金川会長という存在があった。ファナックは稲葉親子という存在がある。それ以外でもトヨタ、京セラ、村田製作所、HOYAなどは全てオーナー企業である。さらに、パナソニックも松下幸之助が存命中はオーナー企業であったが、その後は、普通の日本株式会社になってしまった。


② 財務が超健全、かつ長年に渡って売上や利益の成長を継続

売上や利益が伸びているという事は、時代の変化に適合した経営をしている裏返しである。これに財務が良好なら常にコスト意識の強い経営をしており、夢だけを追いかけて莫大な研究開発や設備投資を行っていない。たとえ10年間赤字を照れ流しても、債務超過などにならないほど安定した財務を保持しているにもかかわらず、ちょっとした業績不振でさえ、全社一丸となって、ドラスチックなコスト削減や構造改革に取り組むような、危機意識の強いまさに戦う集団となっていることが多い。

配当性向へのこだわり

 配当性向に準じている企業は、一見株主還元に積極的な企業に見えるが。実はその逆で、業績が悪いときはダイナミックな減配に走る危険性がある。まさに自分たちの経営の失敗を株主に負わせていることになり、どんな優良銘柄であろうともその姿勢に賛同をすることはできない。株主還元という点では、業績が思わしくなくても配当を現状維持するような企業に投資すべきである。


4.具体的な選定方法

〇世界の経済構造を分析する。

 日本は、ジャパンアズナンバーワンと言われた80年~90年初旬までの経済構造から次のステージに移っていない。西欧も、日本の高度成長期頃から発展している産業はない。一方、米国は、グローバルスタンダード戦略によりIT産業を制覇した。アジア諸国は、日本の製造技術を積極的に取り入れて、特定の分野で世界のトップを争うまでに成長している。これら産業を エネルギー 繊維 重工業 自動車 エレクトロニクス IT  宇宙に分けて各国の強みや弱みを分析していくと、

中国:中品質&低価格(繊維 重工業 自動車 エレクトロニクス) 

韓国:中品質&低価格(重工業 自動車、エレクトロニクス)

台湾:半導体、エレクトロニクス

日本:高品質の化学材料、各種高度な機械及び電子部品、その他

西欧:高価格帯(アパレルブランド、自動車 エレクトロニクス等)、高品質の化学材料、

米国:IT、宇宙、製薬、あらゆる産業における世界ブランドの企業群

となる。

細かなところを見ていくといろいろと誤差はあるが、大雑把には上記に集約される。ITなどの成長分野のハードウエアは、ハイスペックな製品を米国、大衆品を中国が握ることになる。日本企業勢は、これらの総合製品に組込まれる機械や電気部品、高品質の化学材料などの素材に強みを発揮するが、市場規模が大きい分野でなく、地味でニッチな分野のガリバー企業が多い。このため、総合製品で多くの国民から見て存在感のある企業は、次なる技術革新か中国・韓国の猛追で相対的地位が低下する危険性がある。例をあげれば、トヨタなどの自動車産業、キャノン、コマツ、クボタ、ダイキン工業などである。


〇投資対象銘柄

 a.グローバル市場でガリバーな強みを発揮し、又は他社が容易に真似できないような特殊な技術を有しているだけでなく、市況や各国の経済状況に左右されない経営に成功している企業。コカ・コーラやP&Gと同じような投資が期待できる銘柄

SMC 、HOYA、ダイフク、ディスコ、シスメックス、ヤマハ、ユニ・チャーム、キッコーマン、ヤクルト、栗田工業、リンナイ

b.グローバル市場でガリバーな強みを発揮し、又は他社が容易に真似できないような特殊な技術を有している。長期的には右上がりを期待できるが、市況や各国の経済状況に左右されやすく中長期でみるとアップダウンを繰り返しながら右肩上がりをしていく企業。

マキタ、マブチモーター、キーエンス、ファナック、エンプラス、シマノ、ローム、参天製薬、TDK、京セラ、村田製作所、ソニー 、信越化学、日本火薬 、アサヒHD、NIDEK


c.伝統のある名門企業であるが、長年に渡って特定の分野で優位性を保つことで企業価値を維持するだけでなく、高収益に即した組織形態を維持しており、伝統的な日本株式会社ではあるが収益性や財務に対し健全な企業である。当然の結果であるが株主還元も期待できる。  

NTT、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、三菱UFJ、三井住友、東京海上、花王、リクルート  


5.インデックス投資の妙味

 金融緩和の副作用はなんといっても株式市場の暴騰である。大規模な金融緩和による余剰マネーは株式市場の株価の閾値を幾度となく引き上げた。例として、14年の黒田バズーカーで日経を2万円近くにまで、次の黒田バズーカーでバブル崩壊の最高値を更新させ、コロナ禍による無制限に近い金融緩和で日経を3万円近くに、退任前の長期金利上昇を抑えるべく膨大な国債の買取りで日経をバブル高値超えまで引き上げた。

金融緩和政策は、ルビコン河を渡ってしまい後戻りはできなくなった。そうなると、景気如何に関わらず日経平均も下がりにくい環境を長期にわたって続く可能性が高い。

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