21世紀中盤に活躍するテンバガー産業を占う(投資手法の研究)

  21世紀中盤に成長が見込める産業は、脱炭素、AI・ロボット、電子マネー、そして医療の4分野が想定される。これら産業のそれぞれについて今後の動向について考えてみた。

1.脱炭素関連

①脱炭素社会

 脱炭素は、地球温暖化という観点からは今後避けられないテーマとなるだろう。とはいえ、大多数の発展途上国は脱炭素より自国の発展を優先させざるを得ないのでエネルギー需要は依然として強く、国連気候変動枠組条約(COP21)などの取り組みだけではこの問題が解決できず、世界全体としての二酸化炭素の排出量抑制はおのずと限られてくる。

脱炭素の本格的な取り組みは、全世界で地球温暖化が人々の日常生活に深刻な影響をもたらした時であり、それまでは今の状況がダラダラ続く可能性が高い。言い換えれば、コロナ禍のように世界が一丸となって危機意識を共有されるようになって初めて、世界中の人々が、本気になって脱炭素への取り組みを加速していくのであろう。そういった脱炭素の取り組みについては、以下が想定できる。

・すべての家庭、ビル、工場に対し、太陽光発電のような自家発電設置の義務化と電力自給自足の促進

・すべての製品に対しソーラー等の発電機能の内蔵を義務化

・自動車と飛行機、列車、船舶、軍事機器にも自家発電、そして二酸化炭素をださない燃料やエンジンの仕組み導入し排出量ゼロへの取り組みの厳格化

→これらの施策が軌道に乗れば、特定産業でバブルを引き起しながら、汎用製品は中国、高級品はドイツや米国がシェアを握り、日本メーカはその基幹部品で市場を独占することが想定される。現時点では、どの企業がその波に乗れるかを特定することは難しい。さらにいつ頃、こういった状況になるのかの想定すら難しい。

②再生可能エネルギー(発電方法の転換)

 再生可能エネルギーには、風力発電、太陽光発電、地熱発電などがあるが、どれも火力発電に対抗できるほどの発電量を確保することは困難である。再生化エネルギーが本当意味で浸透するには、もう一段上の革命的な技術革新が必要とされる。この分野では、もしかしたら長期低迷しているが技術力のあるGEヴェルノバの活躍も期待できるかもしれない。

③電気自動車

脱炭素の波に乗って、ガソリン車から電気自動車への切り替えが進んでいる。しかし、一定数以上の普及は、電力供給及び廃車処理の問題などを深刻にさせてしまう。さらに中古者のリサイクル市場においても、ガソリン車などのようなコスト面や修理面での利便性は乏しく、発展途上国、特に東南アジアやインド、アフリカでの大衆への普及にはかなりのハードルがある。一方、新車販売に限ってみれば、安さで勝負する中国メーカがシェアを握りそうだ。

このように現状の技術レベルでEV車を普及させ続けるには、おのずと限界に見舞われてしまう。この分野も、本当の意味で普及を促すにはもう一段上の革命的な技術革新が必要となる。当分野は、テスラなど新たに参入する新興銘柄等ではバブルを起こすが、既存の大手自動車メーカーにとっては、ガソリン車からの切り替えにすぎないので投資対象としての妙味はそれほどない。

参考)鈴木(スズキ)会長:「電動車は、電池のコストなどが大きな課題がある。電池の開発は、ノーベル賞ものの技術革新が必要。仮にEVで排気ガスを減らしたとしても、火力発電で電気をつくれば脱炭素にはならない。」

2.AI・ロボット

①AI関連

 AI関連は幅広い産業分野への波及が期待され、GAFAMが引率しながらバブルを起こすことが予想される。というより、今時点でもバブルがスタートしているといっても良い。そして次のステップとして、ビジネス分野でどのように展開されるかであり、具体的には、AIによって第三の社員が誕生する事でのホワイトカラーの仕事の代替。例として、各種資料作成や様々なデータ分析、企画書の作成。AIによる管理職(社員査定や業務指示)、AIが担う総務・会計などのバックオフィス部門、AIが担うお客様相談室(コールセンター)、AIが担う経営戦略室など、様々な職種でAIが活躍するようになる。これら基礎技術はGAFAMを中心にスタートしていくが、IT情報ソリューション事業会社のSEが事業会社ごとに開発するアプリケーションに組み込むようになればIBM、NTTデータ通信などがその恩恵に預かることになる。



②ロボット関連

 中国の一人当たりのGDPが1万ドルを超えた現在、中国に代わる製造拠点は、インド、インドネシアなど残り少なくなった。さらに、長期的な視点で見れば出生率の低下が世界中で顕著になり、安いコストで品質の良い製品を作る人材が不足する傾向にある。ロボットは、これを代替する役割を担っており、そういった意味では、産業用ロボットは間違いないなくこれからの製造業に欠かせないものになる。さらにこれら技術と連携するようにネットワーク業界において6G、76Gなとの通信技術の普及が促進されてくるであろう。

 次のステップとして日常生活で活躍するロボットも視野に入ってくる。これらは、それぞれのロボット(ハードウエア)にロボット用独自AIを搭載することになるが、それをどれだけ安価な価格で市場に提供できるかがカギになる。このAI技術の覇権を握りそうなのは、現時点ではGAFAM、テスラである。当局の規制はなければ、これら企業が有力なロボット技術を保有する企業を買収し。独占的なシェアを確保する可能性が高い。しかし、当局が規制をすれば、GAFAMはその事業部を切り離してロボット産業を独自に発展させるであろう。また、その間に新しいベンチャー企業が登場し隆盛を極めるかもしれない。また、世界視点を見渡せば、中国は汎用的なロボットを安価に提供することで、新興国でシェアを握る公算が高い。そして、日本だがいつものように特定の部品において独占的な技術を保有することになるであろう。こういう視点でみれば、高度な技術を保有する日本のデバイス(部品)メーカーは、10~20年間のスパンで考えれば、多少変動はあっても、その株価は今の2~3倍になっても不思議ではない。

3.仮想通貨及び電子マネー

 デジタル人民元の加速により、他の先進国もデジタル法定通貨の整備を急ぎ始めている。一方、電子マネーによる通貨の電子化がかなり普及しており、貨幣の使用量は年々低下し、この傾向は今後さらに加速していくものと見込まれる。このため、デジタル法定通貨は今の電子マネーを補完する程度の役割でとどまり、電子マネーはその決済を含め、そのプラットフォームを独占し続ける、そして、ビザ、マスターカードなどの電子決済に強い企業が優位なポジションを当面維持していくものと思われる。

4.医療・健康関連 

 世界中で少子高齢化深刻になるにつれ、世界各国で医療保険制度が瓦解・破綻の危機にさらされ、構造改革の一環で民間委託の方向に舵を切ることが想定される。特に、富裕層や上流中流層(アッパーミドル)などは自費払いの比率を相当高められるであろう。

この分野では米国が先行しているが、米国と言えども民主党が公的保険プログラム(オバマケア)を打ち立てるなど政治圧力の強い業界でもある。医療は公的な側面を抱えているため、米国以外の国で民間企業が暴利をむさぼるのは相当難しいと言える。

とはいえ、財政債務膨張を避ける上でも、各国政府はできる限り民間にその役割を担わせるであろう。その範囲は、今後は未病にまで及びヘルスケアや製薬メーカーまで裾野が拡がっていく可能性が高く、医療保険ビジネスはこれからも形をかえて拡大していくとも思われる。

米国株でいえば、大手医療保険会社は今後も堅調に経営していくことが予想され、ユナイテッドヘルス、エレバンス・ヘルス、CVS、ヒューマナ、シグナなどの経営動向をウオッチしていくことが必要である。現時点での経営能力という点ではユナイテッドヘルスが他社を大きく引き離しているようだ。

5.まとめ 

これらをまとめると、当面はAIを中心としたバブルが期待され、その後はロボットなどAIが本格的に人間に代わるところまで進化することになる。一方、各国の深刻な政府債務問題により、医療や健康などの産業も違った意味で脚光を浴びるようになるであろう。そして、いつになるかは分からないが、地球温暖化の深刻化により脱炭素ムーブメントが起きる。その時に本当意味でのEV自動車の真価が問われることになる。電子マネーは、今時点においても相当普及しているが、欧米各国政府が紙幣の印刷を無くす方向に動いたときに、電子マネーの決済会社を中心にバブル相場を引き起こす可能性が高い。

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