EV車業界のモータもいずれニデックがシェアを握ることになる(個別銘柄:日本株)

  私の銘柄調査の一つとして経営者のインタビュー記事の探索がある。経営者の言葉の中には、経営に対する手腕とポリシーが散りばめられており、これと決算推移を重ね合わせたら会社の実像がはっきりと映し出されてくる。そして、今後の業績推移さえ推測できるようになる。

ニデック永守会長は1973年に日本電産を創業し売上高1兆円を超える大企業に育てた優れた創業経営者の一人である。ここでは日経BPのインタビュー記事から、永守会長が考えるEV自動車産業の企業戦略を抜き出し、ニデック株式会社の今後について考えてみることにした。

EV時代の到来

自動車産業は100年に1度の技術革新に直面している。もうEV車の時代が来るということは、はっきりしている。今、米テスラが先を走っているが、従来の完成車メーカーと何が違うかと言うと、化石燃料の車を造ったことがない。完成車メーカーはまだエンジン車で稼いでEV車で利益があるところはない。全部赤字。要するにテスラはエンジンというレガシーがないので身が軽い。さらに小型車は儲からないから高級車ばかりに力を入れて利益を稼いでいる。しかし、テスラのような高級車路線ではいずれ限界にぶち当たるだろう。EV車が隆盛を極める頃には、安い車を造るメーカーが台頭してくると踏んでいる。

EV車産業の今後

今までいろいろな事業分野で部品を販売してきたが、サプライヤーも競争相手も、お客さんも全部大赤字なんていう業界はなかった。EV車業界はそれでも値段を下げ続けて、中国では300社ぐらいが参入し200社ぐらいが潰れている。製造コストと販売コストが全く釣り合っておらず健全な競争にはなっていない。とはいえ、基本的には値段を安くすることが今後のEV車普及のカギとなる。実際、電池の値段は年々下がっている。初期の携帯電話は肩からかけて電池が大きかったが、現在では技術革新によってこれほど小さくなった。すぐにとはいかないが、全固体電池とか新しい技術が出ているので電池は進化していく。またモーター効率もどんどん向上することで電池の使用量を少なくさせる。製造コストが大幅に下がったら、モーターなどの部品を買ってきて誰でもすぐにEV車を造れる時代がやってくる。

〇ガソリン車の今後

プラグインハイブリッド(PHV)の需要は、例えば車が雪国で走っていて、どこかで動けなくなると非常に危険だ。ただ、ガソリン車には戻りたくないので、ちょうど中間の(PHV)を購入する。ガソリン車のメーカーにしてみたら、それがなくなったら莫大な減損になる可能性があるから、少しでもエンジンを残せる良い機会になった。EV車には、まだ解決しなくてはいけない技術的な問題があり技術改良には時間がかかりそうなので、ガソリン車メーカーには時間稼ぎになる。

〇部品メーカーの今後

EV車の完成車メーカーは自分のところで部品を造ると言っているが、完成車メーカーでは値段が合わずそんなにうまくいっていない。 これは家電業界の時も一緒で、かつては殆どの家電メーカーが社内でモーターを造っていたがだんだん競争が激しくなり、家電メーカーがモータ部門を身売りするようになり、そのいくつかを日本電産が購入した。EV業界も同じようになると踏んでいる。そんなに焦る必要はない。

〇企業経営にあり方

不健全な競争をしたら経営者として失格。国で半導体をかなり使う企業は、補助金を貰える。そんなところと戦っていたら当分の間、利益は出ない。中国もだんだん補助金も打ち切り始めている。事業というのは健全なら利益を出さないといけない。大赤字覚悟の不健全な競争をしたら経営者としては失格!。中国企業に対しては赤字覚悟になるような新しい受注を断っている。最近は日本や欧州のお客さんが増えてきた。そこではある程度の利益が見込める

※※感 想※※

このインタビューから読み取れるのは、①「遅かれ早かれEV車時代は到来し、ガソリン車は衰退する。」。②テスラが高級車路線で台頭しているが、技術が向上したら安く品質の良いメーカーが台頭してくる。③コスト、品質面を考慮すればEV車部品も特定の部品メーカに専業化される。(ニデックはそのシェアを獲得する。)④赤字を垂れ流すくらいならある程度の機会損失を逸しても良い。

 こういった言葉の裏を返せば、自社の技術力への相当な自信があるということだ。EV車メーカもいずれは、自社の自動車を安く、そして品質の高くするためには、いずれはニデックのような高技術な部品メーカが必要になる。技術力さえあれば、市場が自社にすり寄ってくる。実際、過去も同じことを繰り返した。ということであろう。

このインタビューを通して、ニデックは当面は安泰であろう。しかし、これだけの見識のある人が引っ張って大きくしてきた会社に対し、後継者問題は深刻である。永守氏は後継者選定に何度か失敗している。上記構想も、ニデックがEV車の果実を勝ち取るまで永守氏が現役でいられるかという不安も残る。あと10年若ければ、ニデック社を10年以上の長期保有をすれば、株価は最低でも2倍以上、そして莫大なは配当を享受できるのは間違いない。とは、永守の経営遺産が10年程度で瓦解するとは考えにくい。株価が程よい水準になった購入するすべき銘柄である。

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