日銀利上げに垣間見る潮目の変化
日本の金融政策は一つの転換期に入ったようだ。アベノミクスから続いたマクロ的な金融政策が終焉を迎え、格差の少ない社会を目標とした政策に移行しているように思える。
ここでキーになるのが、日銀の政策会合である。
7月31日に、植田日銀総裁は金利を0.25%に引き上げた。しかし、これは日銀の判断というよりは、その数日前から政府要人から金利引上げ容認発言が目立っていた。政府としての判断を日銀がくみ取ったというのが正しいのであろう。
〇7月31日の日銀決定事項については、まず金利引上げについて
「利上げといっても金利の水準、あるいは実質金利で見れば非常に低い水準での少しの調整ということなので、景気に大きなマイナスの影響を与えるということはない」
と判断し、さらに
「現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、今回示した経済物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」
と述べ、政策金利について中立金利を1%視野に入れている様子でもあった。
さらに、これに併せて、国債の購入額も6兆円から3兆円に減額することにした。つまり、金融政策を少しずつ正常に戻していくことを宣言したものといえる。
〇株式相場暴落の摩訶不思議。
米国相場の動きをみると、トランプが大統領選に勝利することを意識し、ビックテックに偏った経済構造に訂正が入ると予想し、それを織り込む動きとなっていた。ビックテック株の調整は想定の範囲内で進み、日経はそれにつられながら値を下げていた。しかし、日銀の金利引上げにより円高が加速してしまった為、投資プログラムによる弱気が弱気を生み、パニックを起こして大暴落となってしまったというのが現実解であろう。ある意味、今回の利上げタイミングが非常に悪かったと言える。しかし、日銀が利上げをしなくても、米国側は今年度中に間違いなく政策金利を引き下げてくる。それと合わせてトランプ大統領もドル安政策にうってくるだろう。そうなるとその時に日本株は大規模な調整局面に突入することになる。たとえ、ハリス大統領になるとしても政策金利引下げ分だけは円高に振れ、日経の下押し圧力なるのは間違いない。
〇1億総格差のない社会
最近しきりに感じること。岸田政権の政策は社会主義的な思想が強いということである。どんな状態下においてもできるだけ格差を開かせないような社会構築を目指している。この政策の是非はさておき、米国などを筆頭とした深刻な格差社会、そして社会性民主主義を唱えるフランスなどの疲弊を目のあたりにすると、この岸田政権の政策で多くの国民が助けられているのは確かだ。逆に割を食っているのはエリート層を筆頭とする小金持ち層なのかもしれない。
この路線は、岸田総理後も継承していくものと考える。つまり政府は安易な株価上昇よりも、国民の生活を引き上げる政策に注力する。このことは、断定はできるものではないが、日経インデックス上昇の宴の終焉を示唆している。
〇不労所得生活も遠くなりにけり
投資家にとっては、夢の不労所得生活。しかし、それすら打ち砕かれそうだ。厚労省側は自営業者などが加入している国民健康保険に対し、金融所得を反映させる意向を固めたからだ。まさに出ている杭に対して増税をかけていく。
これによって、金融資産が5000万以上あるような隠れ富裕層世帯の老後の夢は大きく縮小せざる得なくなるだろう。NISAを使えば非課税扱いになるがインデックス投資の宴が終われば、投資家は大した利益は得られない。この政策に対し、最も打撃を受けるのは、FIRE組などの不労所得組である。
私は、日銀がこれ以降もアベノミクス継承し、お金をばらまき続けることで、少子高齢化社会の下支えをするものと思っていた。しかし、政府の動きを見ると、観光立国を目指し、治安に影響のない範囲で移民を受け入れることでこの難局を乗り切ろうとする感じがしてならない。
外国人によって日本社会文化は大きく変貌するが、少子化による国家財政や景気の下押し圧力は、非常に緩やかなものになるかもしれない。
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