トマ・ピケティの資本論(資本収益の爆発力)の凄さ
トマ・ピケティは、『21世紀の資本』で「資本主義は、どのようにしても富の不均衡は解決できずに格差は広がる。これを解消するには政府などの干渉が必要」と述べている。 そして、「r>g」という不等式を提示した。(r:資本収益率、g:経済成長率)。
この主張は、世界で騒がれている格差社会に突き刺さった。つまり、金融資本主義とはいうのは放置すれば格差を助長させてしまうことを投げかけた名著である。
○資本主義のからくり
お金の発行元である政府は、景気が悪くなると市場にお金を供給し、景気が過熱すると市場からお金を引き上げる。この理論は誰もが知っていることだが、この理論の盲点は、政治の圧力で供給量>>引上げ量となってしまい、市中にお金が溢れることでインフレを引き起こしてしまう。それと同時に政府債務も返済不能の状況まで悪化する。その一方、市中に溢れるお金の分配は一部の人に集中し、貧富の差は容認できないほど拡がるシナリオを起こす。歴史では、これを訂正するために革命や反乱が起こる、又は海外からの侵略で国自体をリセットすることを繰り返してきた。しかし、現在、特に先進国においては、日本、西欧、米国がリセットして、新たな国になることはない。政権や政策が変わるだけだ。
そういったお気まり格差社会の過程で強みとなる資産が、不動産と金である。なぜなら、インフレに併せて価格を調整してくれるからだ。現物のお金はインフレによる目減りをするが、不動産や金は半永遠にその価値が担保される。そして現代においては株式も加わった。
「神の見えざる手」の創出
実際、富の創出は、不動産と株などに顕著に表れ、実労働では追いつくことができないほどの差を生じさせてしまう。それはアベノミクス以降の日本においても同じで、その恩恵を最大限に被ったのは投資家にほかならない。このからくりの厄介なところは、偽善者による作為でそうなるのではなく、まさに「神の見えざる手」の構造下に人間の行動原理が踊らされているにすぎないということだ。
○資本収益の爆発力
資産も億を超えるころから徐々に労働を追い越す収益を獲得できるようになる。平均株価が1年間で10%上昇したと仮定すると、1億円なら1000万円の含み益と200万程度の配当を享受できる。
実労働での年収1200万円は、ほんのひと握りの勝組みだけが享受できる。これを資本収益では何もしなくても手に入れてしまう。
こういったことは複数年単位、又は10年単位でブレが生じる。悪いときは半値にまで下がることがあるが、50年単位で見れば、1億円の額面は4億円から5億円に膨れ上がり、配当も額面1千万というのも夢の話ではない。
しかし、実労働において、年収が1000円万から4000万円~5000万円までの上昇は期待できない。その前に一線で働けなくなることが先だ。
○資本収益理論の盲点
ここに資本収益率に爆発的な威力を見せつけられることになる。しかし、この理論は机上だ。なぜなら人の寿命はそれほど長くない。例として、1億円を貯めるなどの資本収益が爆発するくらいの資本を持つまでに相当な期間が必要になること。さらに資本収益にも一定程度の波があり、10年単位で利益を得られないということも度々起こる。そうなると、その恩恵を被るまでに存命でいる確率はかなり低く。たとえ存命でもか老体で何も楽しめないという事がザラだ。
だから、多くの人にとってこの理論がピンとこない。とはいえ、この名著は資本主義の底流に横たわっているカラクリに踏み込んでおり、長期投資するものにとって、そこを理解しているかどうで投資行動に大きな違いが生じるのは間違いない。
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