仮想通貨の今後の動向

 世界初の暗号資産(仮想通貨)ビットコインは、各国の政治家の恣意にまみれた中央集権的な金融行政の不信から、国も銀行も関係ない自由な決済社会を目指す反権力的な思想でスタートした。

①政府によるビットコイン保有

 米国は世界一のビットコイン保有国であるが、これはシルクロード事件で摘発したビットコインにすぎない。ただ、国別の保有動向では、ブータンは積極的にマイニングなどを通じてビットコイン獲得に動いている。エルサルバドルは法定通貨としてビットコインを採用した。先進国ではイギリスなども異なるアプローチで多量のビットコインを保有している。個人ベースになるとベトナムやナイジェリアなどの新興諸国では、給与支払いにビットコインを採用するなど、通貨価値が不安定な国の人々には、ドル、ユーロと並ぶ通貨として仮想通貨を貯めこむ動きがみられる。仮想通貨の保有人口が5億人を超えている現状においては、米国政府でさえ制御することが困難になり、各国政府は仮想通貨と上手に付き合う必要が生じてきた。トランプ大統領が米国政府の仮想通貨保有を明言したのもこの流れからであろう。

②仮想通貨の今後の展望

結論つければ、仮想通貨は、新興国の通貨以上、先進国の通貨未満という立ち位置まで昇華したように見え、自国通貨の価値が安定しない国にはドルの代替として有益な通貨になりえるようにすら見えてきた。これらは、銀行間を挟まない低コストの国際送金などからはじまり、さらには国をまたがったビジネス上の取引などに発展していくことが予想される。ただ、これが米国ドルの信任と銀行間取引swiftの存在を脅かすほどには至らない。なぜなら、仮想通貨の価値の変動が激しいため日々のレートによって商品の購入量が変動し、安定的な取引への影響が懸念されるからだ。このため、反米勢力や破産国家やアングラな人々など正規取引が困難な案件程度しか用途は見当たらない。

 ドイツはマネーロンダリングの不正防止の観点として大量のビットコインを売却した。

そもそも仮想通貨は、株や不動産などでは賄いきれない余剰マネーのガス抜き的な役割を担っている。このため、米国の金融政策次第では、その価格が大きく変動してしまい、通貨が必要とすると安定性という点での脆弱性を拭えきることは難しい。

③デジタル通貨として黎明期

 仮想通貨は、各国政府が検討している電子通貨との関連性もある。時代の流れとしては紙の通貨ではなくデジタル通貨に向かっている。ビットコインなどの仮想通貨を当局が潰しても、別の誰かが別の電子貨幣を登場させ普及を促すであろう。仮想通貨はそういった時代の流れを迎合した一面がある。とはいえ、現状での仮想通貨は戦国時代みたいなもので、様々な仮想通貨が乱立して、まさに玉石混合の域を超えていない。それぞれの仮想通貨がこの先発展していくには無理がある。他のネットソフトの動きと同様に、ビットコインの1強で幕を閉じることは十分に考えられる想定である。

 仮想通貨のメリットとして中央政府のような管理者がいない点を挙げているが、オープンソースであるので開発者はいる。つまるところ、この開発者の恣意の上でこの通貨の運用が成り立っているということである。メインストリームに昇り詰めていくのにあたり様々な問題点の解決をオープンソースが担うことに無理がありすぎる。これをドルやユーロなどに匹敵する法定通貨にするにはあまりにも運用の仕組みが粗雑すぎる。

 本来なら国連のように国家間をまたがった組織によって管理されなければいけないが、そうなると大国間での運用の駆け引きが勃発してしまう。分散型の通貨運用はブロックチェーンによる情報の透明性を生み出すが、人間という生物は極左がいうほど綺麗に礼儀正しく出来ているものではない。

④全世界共通通貨の構築の困難さ

 仮想通貨の運用性としてはメタが提案した仮想通貨リブラの方がはるかに現実的である。世界の主要通貨をバランシングした仮想通貨であるから。そうなると特定の国の恣意は入りにくいのと、通貨レートのボラリティも大きくない。極めて公平な運用が可能になる。しかし、米国政府やFRBによる政治的な理由で潰された。

 そもそもマネーの発行元に利害関係が生じないということはあり得ない。通貨は国の経済政策を担う一面もあり、常にその国の政治的な恣意が付きまとう。これは領土と同じくらい紛争の火種になりやすい案件ともいえる。仮想通貨を通貨という扱いにしたら仮想通貨取引における政府統制の破壊を危惧して取引自体をシャットアウトする国が続出することは十分に考えられる

 現実的には金を代替通貨にするほうが世界各国においてはるかに不満のない公平な運用になろう。こういった事を踏まえれば、仮想通貨の売買は、相場の値動きに終始する投機(投資)的な取引の範疇を超えない。ベンチャー企業の株価と同一視点で見るほうが投資家は仮想通貨をより冷静な目でみることができるのではないだろうか。



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