株式投資「一極集中の時代」の落し穴

 私は株式投資歴が長く、バブル崩壊真っ只中、つまるところ90年代後半から株式投資をしている。

 90年代の日本経済はバブル崩壊による景気低迷に見舞われても、世界第二位という周辺国から見れば圧倒的な経済大国であり、ほとんどの日本人はバブル処理が解決したら、かつての高度成長期の日本に戻ると信じて疑わなかった。


(株式以上のトレンド変遷)

 90年代後半のITバブルをけん引したのは、NTT3兄弟、富士通、NEC,ソニー、ソフトバンクであり、重厚長大銘柄には資金が向かわなかった。まるで、今のマグ二セントセブンの偏在と似てもいる。一方、米国株は、マイクソフト、インテル、シスコシステムズが時価総額上位に躍り出たが、オールドエコノミーと言われる優良銘柄も堅調に推移していた。

 しかし、これら銘柄も翌年のITバブル崩壊とともに株価が底値を這うようになり、日本市場においては、特定に銘柄に資金が集中することはなく、いわば業績のよい銘柄に資金が集まる程度であった。


(2010年以降の一極集中トレンド)

 2010年以降の市場の変調、それはGAFAの台頭であり、市場は時を経るにつれてGAFAに資金が一極集中して行く。これにマイクソフト、エヌペディア、テスラが加わってマグ二セントセブン時代を形成していく。

 この一極集中下での投資は、何も考えずマグ二セントセブン、そして指数投資さえしていればよく、逆に、ファンダメンタル分析などでの銘柄研究をしても苦労が報われなくなっている。

 米国では、これの類似例として1970年代に「ニフティフィフティ」という現象があったが、10年もたたず崩壊した。


(資金一極集中の意味するところ)

 私自身は、長い間、投資資金の一極集中の意味を理解しかねており、それは私のブログの意見の変遷にも表れている。

しかし、ロイターの珠玉記事で、少し回答が得られたような気がする。

米国株、一部銘柄に投資集中 空前のレベルは危険な兆候か 

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/ME2ALQGNH5PL5PHMAB3HNYWRHQ-2024-06-13/

この「一極集中」相場は米国だけなく、世界の至る所で起きており、米国より一極集中していないのは、日本、中国、インドだけとの事。一極集中していない国の共通点は、「どの国も大国であり、国の経済が特定のトレンドに左右されていないほど広範に渡っている。」ことである


(世界経済成熟化の深刻さ)

 私なりに、この一極集中の示すところを考えてみた。その答えの一つとして、世界は想像以上に成熟化しているというこ。だからこそ、未来に向けて成長が見込まれる一部のハイテク銘柄にしか過剰なマネーが流れない。これの言わんとしている事は、長期目線で株式で利益を得られる銘柄はどんどん減少しているということ。日本においても、日本を代表する三菱重工、住友化学、王子製紙などの古参の優良企業に長期投資して莫大な利益が得られるとは思わないであろう。

 どうも、この流れは、世界中の投資環境において後戻りできないようだ。

https://toyokeizai.net/articles/photo/664329?pn=3
妄信すると痛い目見る「S&P500」超不都合な真実

 

(インデックス投資の長期停滞のシナリオ)

 日本においては、戦後の東証再開からバブル最高値までインデックは300倍にまで膨れた。それ以降は、バブル最高値を基準にすると2024年にやっとプラスになった程度。株式市場は、大きく上昇する時とそうでない時の格差が激しい。そういう視点では、米国相場が100年間にわたって右肩上がりというのは結果であり。未来永劫の法則でも何でもない。

 米国のインデックス相場を支えているのはマグ二セントセブンに他ならない。これら企業の成長期待とそれを裏付ける決算に支えられているにすぎない。もしこれら銘柄の成長性が鈍化した時、代替してインデックス指数を支えてくれる銘柄群は米国には存在しない。

 ただ、これが何時というのは推測するのは至難の業だ。それは10年後かもしれないし、来年かもしれない。それ以外に今後の米国市場を占う事としてトランプ大統領の経済政策がある。トランプ大統領は実業家Tとしての経験をベースに経済政策を行っており、一期政権ではそれが成功した。二期政権でこの手法が成功しない時、米国相場の一つの転換点になる可能性が高い。なぜなら、次の大統領は政治家であって、経済に詳しい実業家ではないからだ。もちろん、その答えは4年後になるのだが。


(日本の投資家が留意すべきこと)

 日本の投資家は、ここ数年の円安とマグ二セントセブンの上昇の恩恵によって資産額を大きく増加させている。しかし、これら投資家は、米国インデックス、世界インデックスなどの言わばマグ二セントセブンとその周辺銘柄による上昇の恩恵を被っているに鹿すぎない。ある意味、非常に偏った投資法でもある。これをどう捉えるかだ。

 とはいえ、私自身は、2022年時点のGAFAMの株価下落局面で2010年から続いたGAFA相場は終了したと思った。しかし、その後マグ二セントセブンの経営力の凄さを思い知らされてしまう。さらに神風のように円安がやってきた。今後の動向を見極める上では、この状況が何時まで続くかであるが、一般論として、歴史を紐解けば、投資においては多くの人が定石として唱える投資法は、長期的にみれば悲惨な結果として跳ね返ってくることが多い。

 こういった見解に対する答えも10年以上の歳月を必要とするだろうが、投資家は様々なことに懐疑的になって慎重に物事を進めるべきかと私は思っている。

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参考

米国株投資の黄金時代の黄昏(インデックス投資の低迷) 2022/02/20

唐突な結論だが、これからの10年間は、インデックス投資は旨みのない投資法になるかもしれない。

 確かに、過去10年間の米国株式市場は、一極集中の黄金時代であった。そして、その旨みはインデックス投資に凝縮されていた。しかし、そんな時代も黄昏を迎えようとしている。これは米国市場が衰退し、他の国が隆盛を極めるという構図ではない。NYダウ指数やS&P500のインデックスパフォーマンスが著しく低下するということである。

 米国以外の先進国市場は成熟期を迎えて久しい。西欧諸国(ドイツを除く)の2000年以降のインデックス指数は全くと言って上昇していない。中国も米国を伺うまでの経済大国になってはいるが、上海市場はリーマン・ショック前の高値から6~7割の水準でしか推移していない。2000年のドットコム・バブル、そしてリーマン・ショックを経た世界の株式市場において、上昇基調を維持しているのは米国市場だけである。そんな世界一強い米国にも成熟化の波は忍び寄っている。

その根拠は、以下の通りである。

①米国株式市場の時価総額のGDP比は、2012年100%、2019年150%。そして2021年200%近辺で推移している。そもそも株式市場の時価総額はGDP比で100%を超えると危険水域と見なされてきた。それでも、様々な要素から200%の水準を肯定できたとしても300%は現実的な値ではない。逆に、今後は膨れすぎた時価総額という風船に対して実経済への乖離を縮小する方向に向かうと考えるほうがが妥当であろう。

②インデックス指数は、GAFAMを中心とした大型ハイテク株の占める割合が高い。今後もこれら銘柄の株価が上昇すればインデックスも上昇するが、残念ながらGAFAMの時価総額は臨界点に達していると私は見ている。

③21世紀前半に世界経済を支えてきた中国経済にも偏重が見られそうだ。中国経済の国富は世界の工場で築かれたものではなく、驚くほどに上昇した不動産価格が運んだ富によるもの。その不動産市場も、恒大グループに代表されるように曲がり角を迎えている。共産党政府は、日本の二の前にならないように秀逸な対応や政策を打ってくるのは間違いない。しかし、不動産価格がこれ以上の上昇をして、中国の富を膨らませていくのは到底困難である。

④そうなると、次はインド,アフリカの出番だが、これらの国が本当の意味で台頭するにはもう少し時間が必要である。

⑤さらに、それに輪をかけて世界を襲ってくる問題がある。それは少子高齢化問題である。どうもコロナ禍でこの流れが加速する勢いである。生産人口と言う点では米国はピークを過ぎている。そして中国もピークが過ぎ始めている。それ以外の主要国は既に人口オーナス期に突入している。これはGDP成長率の低迷を意味し、結果として株式市場の時価総額もこれに追随することが予想される。

⑥そうなると、革命的な生産性向上ということになる。これらはいずれAI技術などの台頭で人間の仕事が機械に置き変わっていく時代がやってくるであろう。そして人々の生活はベーシックインカムで最低限の生活を保証されるようになり、社会生活の安定が図られる。しかし、そういった社会の実現は、最低でも20年近い歳月は必要だ。今はまだ、黎明期である。それはメタバースも同じである。

 私が書いているのは異端中の異端かもしれない。しかし、日本のインデックスも1989年を境に逆回転をした。その時の日本企業の競争力は紛れもなく世界一であり、少なくても2000年まではその流れが続いていた。

 今となっては誰も唱えなくなったが、1990年代まで多くの識者は、「バブル後遺症はあるが、投資家は日本の優良企業に分散して投資すれば必ずやその恩恵に被ると言われ続けた。なぜなら、東証株価は1949年から1989年までの40年間に250倍に膨れ上がった。バブル崩壊は深刻だが日本の優良企業の競争力は永遠に続くものであり,Made In Japanは世界最強のブランドだ。だからこそ、不良債権処理による社会不安はあっても、優良企業に長期投資をすれば、結果として投資家に膨大なリターンをもたらす」。という論調だった。しかし、現実にはそれら優位性は周辺の東アジア諸国に移管されてしまった。

 米国株が長期調整局面に突入すれば、世界中の市場が調整局面に入る。そうはいっても、インデックス投資は株式投資の王様であり、過去100年以上に渡って、幾度となく繰り返された調整局面を打ち破ってきた実績がある。だからこそ、どんな悲観論に覆われても、多くの投資家は過去の実績を拠り所としてインデックス投資を支持し続けている。しかし、そんなときこそ「人の行く裏に道あり花の山」という諺の意味を噛みしめたい。

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