2040年頃に迎えるであろう日本における二極化社会

（日本経済黄金期（1985-2005年）が二極化の認識を歪ませる。）

　最近感じてきたこと。それは現40代～70代前半が歴史上稀に見る日本の黄金期を体現した世代ということだ。海外旅行を例にとれば、最も安価で豪華なツアーを体験できたのはこの世代だ。実際、日本での生活に余裕はなくても、10万円あれば東南アジアで比較的裕福な旅行を満喫できた。西欧旅行も20万円あればそれなりに楽しめた。こういった比較的裕福な海外旅行もコロナ以降のインフレ・円安により困難になった。さらに深刻なのは若い世代が海外旅行に行かなくなったことである。これは興味がないという事ではなくお金がない若者にとっては海外旅行が贅沢品にグレードアップしたからにほかならない。

　Louis Vuittonなどの高級品も1985-2005年まではお金を持っていない層まで購入できた。海外の高級品が簡単に手に入るほど日本円は海外通貨に対して強含んでいた。車においても、新卒の新入社員が彼女とのデート等を目的にプリウス並みの高級車を躊躇なくローンで購入し、長時間労働による多額の残業代で返済をしていた。さらにデフレが進行し、あらゆる商品が安く購入できた。この時期はバブル崩壊という経済的な負の側面による社会的な不安が蔓延し「失われxx年」と呼ばれる暗黒時代で表現されるが、安定的な収入を得られている層は、相当裕福な生活を享受できた。歴史的に見れば日本経済力の黄金期であったのは間違いなく、この認識ギャップこそが、日本における格差問題の本質を歪ませている。

（１憶総中流の幻）

間違いなく、日本は一時的に１億総中流を体現できた。しかし、その裏で日本経済はステルス格差を拡げることになり、2010年代後半から表面化し始めた。このころになると、女性の高学歴化と社会進出が定着し、パワーカップルが登場する。さらにネット経済が台頭し、有能な人たちは起業や投資で一定の財産を獲得できるようになった。これら層が新たなる消費を誘発し、タワマンなどの億近い案件すら購入している。今の日本は高度成長期のように真面目に生きていれば報われるのではなく、才能のある人たちが恩恵を被る社会に変貌した。

もう一つは世代間の格差である。団塊世代と現在の若者では同じ能力（スペック）でも、人生における恩恵の享受具合が全く異なってしまった。団塊世代は、難なく大企業や優良企業に入社し、そして水準以上の給与と年金を生涯に渡って受け取れた。しかし、若い者が同じ会社に就職しても会社は実力主義の給与体系に移行し、年金も確定拠出での各自の運用に移行し、受給額は自己責任とした。今の若者が団塊世代のような恩恵を受けるには、会社における一握りの勝ち組にならなくてはいけなくなった。

（格差と税制の狭間）

　今の日本において、格差社会、二極化社会と騒がれているが全体的に見れば日本はまだまだ諸外国に比べれば平等社会である。経済成長を優先し格差を放置した国では、驚くような格差社会に陥っている。米国はその代表例だ、日本と西欧諸国はなんとか踏ん張っているが、この平等政策によって経済成長率は低迷を余儀なくされている。

日本政府は、格差拡大を放置するはずはなく、中～高所得者層に対してステルス増税を繰り返しながらの所得再分配をすることで、手取りベースでの格差を出来るだけ小さくしている。そして相続税の強化によって次世代に対して安易な資産の継承を防いでいる。表向きの格差は縮小されるが、これの本当の被害者は、世帯収入600万円～1000万円の中所得者層であり、日本経済におけるマス層であるこれら層の手取りが年々減っていく事で、日常生活の様々な消費行動や生活スタイルを貧相なものに変えてしまった。

（日本社会の変化）

日本の社会を考える時、「バブル世代と団塊世代」が一線を退いた後は、日本高度成長期の恩恵をこうむった層が激減する。この辺から日本も深刻な二極化構造が出来上がってくるのではないかと感じている。最近は高齢での就業も増えているので多少のズレはあるが2040年頃には間違いなくそういったモードに突入するのであろう。

　これから日本人は、強い経済力に支えられたジャパンプレミアムを享受できなくなることから、各人の実力が収入や資産の大小に繋がり、ひいては海外旅行、贅沢品、日用品の購入等が区分けされてしまう。もはや、お金のない層はそれに応じた消費しか出来なくなる。最終的には海外のように住むエリアの分断や子供が通う学校にも区分けが出来上がってしまうかもしれない。富裕外国人の移住組とそれ以外の外国人移住組の区分けもこれに加わり、社会がモサイク化も予想される。こういったことに日本政府は毅然とした対応を取るとは思うが、一定レベルでは実現してしまいそうな勢いである。

最後にこの流れ（トレンド）に立ち向かうためには、過去の黄金時代をひたすら懐かしむのではなく、日本は普通の国になった事を念頭に変化を見据えた未来志向で物事を進めていくしかない。当然であるがこれらを解決する教科書など世界中どこにいっても存在しない。わかりやすく言えば、1980年代、1990年代に今の日本の国力低下や現状を予想した本や識者はいない。強いて言えば、非科学的な思考の人が唱えたがる悲観一色の当てずっぽうな未来予測（日本経済の壊滅や破滅）が少しかすめる程度であろう。とはいえ、優良な書物の中にも、未来に対するヒントが散りばめられている。自分がどのように立ち回るのが良いのかについては、常に勉強を怠らず、試行錯誤をして探していくしか方法はない。

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