高市政権の衆議院選挙大勝が示唆すること

1.高市政権大勝の分析 

①弱い日本への疲れ

 日本は20年前までアジア唯一の先進国であり、1990年代前半には米国に迫る経済大国であった。円はスイスフランと並ぶ強い通貨とされ、日本人は海外旅行に出ればその信用度と購買力を実感できた。しかしその後、日本の相対的地位は低下を続け、2010年頃にはGDPで中国に抜かれ、2024年にはドイツ、近い将来にはインドにも抜かれることが既定路線となっている。

 さらに、アベノミクスによる長期的な金融緩和で円安が進行し、日本は「物価の安い国」へと変貌した。いまや海外では日本人の購買力は大きく低下し、中国などの富裕層と比べても不利な立場にある。

 こうした中、岸田政権・石破政権や、オールドメディアと呼ばれる主要マスコミは、依然としてかつての経済大国の延長線上の議論を続け、国民感覚との乖離を広げてきた。国民の側には「自国がこれほど衰えた」という失望感と、「もっと自国民を大切にせよ」という意識がネットを中心に広がり、参政党など新興勢力の台頭はある意味で必然の流れと言える。

②産業競争力の低下

 日本人が抱く痛みの一つに、中国・韓国企業に主要産業の地位を奪われた悔しさがある。戦後、日本は過去の反省から両国への技術移転を惜しみなく行い、その結果として両国の産業基盤が急速に発展した。しかし日本企業はそのあおりを受け、市場から退けられる例も少なくなかった。一方、両国では自国の産業発展を「国家政策と自国民の努力の成果」と位置づけ、対日観に大きな変化は見られなかった。

 これは政治外交やオールドメディアの情報発信の不備の結果でもある。現在に至っても日本企業の最新技術が流出し続け、気がつけば海外企業に市場シェアを奪われている実態を政府は十分に抑止できていない。高市内閣が機密情報の海外流出を防ぐ規制強化を打ち出し、これにリベラル派議員が反対して国民の支持を得られないのは当然とも言える。

 もっとも、現在では両国は日本への依存を脱し、自前で産業を構築できる力を有している。日本が巻き返しを図るには、少なくとも10年以上の時間が必要である。

③日本国民の購買力の著しい低下

 過去30年で、日本国民の購買力の低下は著しい。国内ではこれが長期デフレを招き、デフレが終わった頃には日本は物価の安い国へと変わっていた。いまでは海外旅行に出ても、日本人は以前ほどお金を使えなくなっている。

 さらに、タワーマンションなど高額物件が外国人富裕層に買い占められ、日本の中心部に外国人が居住し、日本人は郊外に押し出される構図も生じている。加えて税制面でも負担増が続き、日本人は追い詰められている。

 年金についても問題は深刻だ。1990年代初頭、日本の年金支給額は月23万円前後で世界トップクラスだった。欧米ではインフレに合わせて年金を増額し日本を追い越したが、日本はステルス増税によって実質的な手取りが減少し続けた。現役世代が重い税負担を抱えるだけでなく、かつて「裕福」とされた高齢者層も物価高で購買力が目減りし、年金のみでは生活が困難な状況へ追い込まれている。それでも政府は世界最高水準の政府債務を理由に増税姿勢を緩めず、国民は明確な不満を示している。

④西欧型リベラル疲れ

 米国では民主党・西欧型リベラルへの不満が蓄積し、移民政策への反発を背景にトランプ台頭を招いた。もし欧米が大規模移民を受け入れていなければ、国家の分断はこれほど深刻化しなかったとの指摘もある。

 その影響は日本にも及びつつある。中華系・イスラム系移民が増加する中、日本は十分な法整備を行っていない。日本国民は「日本語を学び、日本社会に同化する移民」には同意する一方、現在の移民政策は単なる人手不足対策にとどまり、「国内にリトル外国を形成する」状況が少しずつ進行している。移民拡大が続けば、日本でも米国のような分断が生じるのではないかという懸念が高まっている。

2.高市政権の課題と今後の政局

 国民が高市政権に期待しているのは、これらの問題を“国民目線で”解決することであり、それが今回の大勝につながった。しかし課題の解決は容易ではない。自民党議員の多くが既得権益を抱えており、改革が骨抜きにされるリスクが高いためである。

 とはいえ、アベノミクスのように「できるところから改革を進める」戦略で国民の支持を長期化させる可能性もある。もし高市政権が失敗すれば、岸田・石破政権と同様に自民党は過半数を維持できなくなり、野党との連立を余儀なくされる。その状態が続けば、自民党内部のリベラル派と保守派の対立は修復困難となり、最終的に解党が現実味を帯びる可能性もある。そうなれば、それぞれがリベラル野党や保守野党と連携する構図が生まれ得る。

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