NISA貧乏が示す若者の厳しい社会環境

 近年、「NISA貧乏」という言葉が話題になっている。

これは、将来への不安が強い若い世代ほど、安心を得たい一心で過度に投資へ資金を振り向け、日常生活を犠牲にしてしまう現象を指す。

その背景には、20〜30代が抱える根深い将来不安がある。

たとえば、メディアで紹介された例では、20代で年収800万円という十分な収入を得ている男性が、毎月25万円を投資に回す一方で、昼食は「おにぎりとインスタント味噌汁」、交際費ゼロという極端な節約生活を自らに課しているという。

こうした行動は異様に見えるかもしれないが、その根底には

「努力しても賃金は伸びず、税や社会保障負担は増える」

働いても生活が大きく向上しないという閉塞感がある。

 この閉塞感が解消されない限り、形を変えた「今を犠牲にした投資行動」は今後も続く恐れがある。

■ 若者の生活の変化

 これらの親の世代は、若い時には高級車に興味を持ち、サーフィン、スキー・スノボ、キャンプ、ゴルフ、釣りなどを趣味を持つだけでなく、平日でも週末などは仲間と居酒屋などで酒を飲みかわすことが半ば当たり前であった。そういった生活をしていてさえ、結婚すれば家を買い、収入が高ければ子供を中高一貫の私立校にすら通わせていた。

 明らかに今の若者生活環境は親の世代と比べ厳しくなっているのである。

 そうした環境下を吹き飛ばすようにSNSではインフルエンサーが、

 「若いうちに満額を埋めて」

 「手取りの大半を投資に回して」

 「オルカン、S&P500一択で投資」 

 「その結果年収500万円でも10年で5000万円達成」

といった“再現性が不明な成功例”を競うように発信されている

■ 手取りと居住形態からみた“適正な投資額”とは

手取り年収の目安は以下のとおりである。

•       一般層   :年収400万円 → 手取り約320万円

•       上場企業層 :年収600万円 → 手取り約460万円

•       エリート層 :年収800万円 → 手取り約590万円

投資に回せる金額は、居住形態によって大きく変わる。

賃貸暮らしの場合、手取りの40%以上を投資に回すと生活費が圧迫され、いわゆる“修行僧”のような状態になりやすい。一方で、親元で生活コストを抑えられる環境なら、手取りの70〜80%を投資に回すことも不可能ではない。

■ 市場環境への理解不足

日経平均・S&P500・NASDAQは、2010年以降歴史的な上昇を続けてきた。しかし長期の市場史(約150年)で見れば、この期間は非常に恵まれた特殊な相場環境だったかもしれないのだ。

インデックスは長期的には右肩上がりだが、単純な右上がりではなく、上下を繰り返しながら上昇し平坦ではない。

実際、2010年代前半には「リーマンショックの後遺症が長期化する」といわれ、その後は中国の台頭から「日本は再び失われた時代に入る」などの悲観論が主流だった。一方米国株はコロナ以降の円安と未曽有の金融緩和が米国株のリターンを押し上げた。これらの成功例は偶然が重なった追い風に過ぎないのである。

こうした“環境要因による高リターン”は、今後10〜20年で同じ伸びを保証できるものではない。

■ 最終的に大切なこと

投資は本質的にリスクを伴う。このため、若いうちに投資を集中させても、10年後に期待通りのリターンが得られる保証はない。

無理なく続けるためには、あくまで「余裕資金」で積み立てる姿勢が基本であり、過度に投資する場合も、必要なときには生活を立て直すために一部を売却するなど、柔軟な対応が求められる。資産形成は長期戦であり、“続けられる設計こそが、最大の成功要因”であろう。

最も避けたいのは、SNSの成功例を真に受けて、ストイックな生活をしたにも関わらず、10年後に大した投資結果が得られなかった場合、大切な20代、30代が台無しにしてしまうことであるる。人生は一度しかない。時間は逆戻りはしない。そういった事を意識しながら、自分の生活や価値観に対するを犠牲とのバランスの考慮が必要となる。

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