AIバブルの結末 ― 技術革命は続くが、株価は別の道を歩む

 このAIブームは今後どのような結末を迎えるのだろうか。

私が最も可能性が高いと考えるのは、「AIそのものは社会インフラとして定着する一方で、現在のAI関連株に織り込まれている過度な期待は大きく修正される」というシナリオである。


(現在のAIバブルの盲点)

現在の米国AI企業の評価には、世界市場の大部分を獲得できる.高い利益率を維持できる.AI需要が半永久的に拡大する.という前提が織り込まれている。

さらに、GAFAMは過去10年以上にわたり驚異的な業績成長を続けてきた。彼らはクラウドや検索、通販、SNSといった、いわば「21世紀の石油産業」とも呼べる巨大なデジタルインフラの利権を握っている。

そのため、多くの投資家は「今回も彼らが勝者であり続ける」と考え、AI関連投資を安心して継続している。実際、現在の株価指標は2000年のドットコムバブルほど極端ではなく、そのことも強気相場を支えている。


(2000年ドットコムバブルを振り返る)

2000年のドットコムバブルを振り返ると、当時の市場は「インターネットが世界を変える」という期待に沸き、多くのIT企業の株価が急騰した。しかし、期待値を支えに過大とも言える設備投資をし、挙句には絵空事のような事業に対しても将来を夢見た投資家からの多額の資金が流れ込むようになった。エコノミストはそんな状態をその当時は否定すらせず、「ニューエコノミー」としてもてはやした。その後のFRBの金利引き上げなどによってバブルは崩壊し多くの企業価値は失われた。

一方で、インターネットそのものは消滅するどころか社会基盤となったが、IT業界の主役はマイクロソフトを除けば株価は長期低迷を余儀なくされ、主役の座はドットコムバブル銘柄からGoogle、Amazon、Appleなどにバトンタッチされた。このように今のAIバブルに当てはめた場合、現時点の覇者が、たとえNVIDIA やGAFAMのような鉄壁な事業と経営戦略を有している企業群であっても、10年後の覇者であるとは限らないかもしれない。


(中国勢が突き刺すバブル風船)

しかし、その前提を崩しかねない存在が中国勢である。中国企業は「十分な性能を持つAIを圧倒的な低コストで提供する」という戦略を採り始めている。中国が得意とするのは、最先端技術の独占ではなく、新興国市場を中心にシェアを確保し、世界経済における発言力を強めることである。

もし中国がアジア、アフリカ、中東、南米などの新興国市場でAI基盤を握ることができれば、世界市場の成長果実を米国企業が独占するというシナリオは崩れる。


その結果、世界は、

先進国陣営をリードする米国

新興国市場で影響力を拡大する中国

という二極構造へ向かう可能性がある。


さらに、KimiやDeepSeekが示したように、AI業界では性能向上だけでなく計算効率の改善も急速に進んでいる。

将来的には、現在の数分の一の計算量で同等の性能を実現できる可能性もある。その場合、AI需要の無限拡大を前提として積み上げられたデータセンターやGPUへの投資が過剰であったことが判明し、市場は一斉に成長率を見直すだろう。


(AIバブル銘柄の長期低迷)

この場合でも、AI市場そのものが縮小するわけではない。むしろ、AIはさらに普及する.AI利用者は増加する.AIは電気やインターネット並みの社会基盤になる

という流れは続くと考えられる。

しかし市場が問うのは、「どのAIが最も高性能か」ではなく、「どの企業がAIを使って最も大きな付加価値を生み出せるか」である。

株価は売上高よりも利益率の変化に敏感である。そのため、AI市場自体は拡大を続けたとしても、AI関連株の期待リターンは低下する可能性が高い。

ただし、今回のAIバブルはドットコムバブルと完全に同じではない。

当時のIT企業の多くは利益を十分に生み出せていなかったが、現在のGAFAMは既に強固な事業基盤と莫大なキャッシュフローを持っている。そのため企業そのものが崩壊する可能性は低く、起こるとしても過剰とも言える投資が導いた利益率の低下や成長率の鈍化であろう。

問題は、市場がその変化をどの程度厳しく評価するかである。

つまり、暴落の本質は企業の衰退ではなく、「評価倍率(PER)の圧縮」にある。そのPERが最終的にどの水準まで低下するのかは誰にも分からない。投資家はもちろん、GAFAMの経営陣でさえ正確には予測できないだろう。一方で、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは近年「フィジカルAI」を強く打ち出し、ロボットや自動運転分野への展開を進めている。これは単なる事業拡大なのか、それとも現在のAIインフラ需要だけに依存する成長モデルの限界を見据えた布石なのか。その答えはまだ誰にも分からない。だが、未来を完全に予測することができないからこそ、市場は存在し、投資という行為に妙味が生まれる。AIバブルの結末もまた、その不確実性の中にある。


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