LIXIL:典型的な日本企業におけるグローバル化の壁
(日本における圧倒的ブランド)
LIXILは2011年、国内の主要な建材・設備メーカー5社の統合により誕生した。主な構成企業は以下のとおりである。
・トステム(サッシ・窓・ドア)
・INAX(トイレ・洗面台・タイル)
・サンウエーブ工業(システムキッチン)
・新日軽(サッシ・エクステリア)
・東洋エクステリア(門扉・フェンス等)
これらの強力なブランドを背景に、同社の国内における地位が盤石であることは言うまでもない。
(LIXILの積極的な海外戦略)
LIXILは国内市場の縮小を見据え、2000年代後半から2010年代にかけて積極的な海外展開を推進した。主な買収案件は以下のとおりである。
・2011年:伊ペルマスティリーザの買収(約600億円/約5億7,500万ユーロ)
・2013年:米アメリカン・スタンダードの買収(約531億円/約5億4,200万ドル)
・2014年:独グローエの買収(約4,109億円/約29億ユーロ)
これら大型M&Aによりグローバル企業への転換を図り、海外売上高は大幅に拡大(約20倍)した。しかし、その過程で以下の問題が顕在化した。
・グローエ傘下の中国法人「Joyou」における不正会計により破綻
・ペルマスティリーザにおける収益管理の不備により数百億円規模の損失が発生し、その後売却
・アメリカン・スタンダードの収益化が想定どおり進まず
これらの影響により、同社は複数回にわたり最終赤字に転落する結果となった。
(グローバル経営ノウハウの不足)
こうした状況の背景には、海外事業に精通した人材の不足があったと考えられる。この課題については経営陣も認識しており、外部からの人材登用が行われた。
しかしながら、買収後の経営管理体制は十分とは言えず、現地任せの運営により問題の把握・対応が遅れた。その結果、被買収企業の実態(負債や不正など)を適切に把握できず、子会社統制が十分に機能しない、いわゆるガバナンス不全の状態に陥った。
すなわち、「買収はしたが管理できなかった」という構造的な問題である。
その結果、のれんや有利子負債が膨張し、海外事業が収益の足を引っ張る形で、巨額減損や赤字が長期にわたり継続した。この影響は10年以上経過した現在においてもなお尾を引いている。
なお、このような事例はLIXILに限らず、日本企業における典型的なグローバル化の課題の一つである。
(総括 再建の道は険しい)
もっとも、LIXILは各事業分野において世界上位(2~3位)のシェアを有しており、経営改善次第では再成長の余地を持つ企業である。
現在の再建策としては、主に以下の施策が進められている。
①「選択と集中」(不採算事業の整理、米国事業の一部売却等)
②収益性の高い事業への資源集中
③事業ポートフォリオの見直し(北米では生産をパートナーに委託し、ブランド維持と軽量化を両立)
④構造改革(コスト削減、体制見直し、不採算拠点の整理)
直近では、欧州や中東において収益改善の兆しが見られている。
しかしながら、再建には非常に長い期間を要している。この事実は、現在の経営陣では再建が不可能であることを示唆している。逆に、これだけ成果を出さずに居座り続けているということは、会社に対して不当に権力を行使しているに等しい。
この会社が本当の意味で力を発揮するためには、今の経営者が潔く退陣し、次の経営者が全く新しい視点で経営を行う必要がある。その過程では、間違いなく高すぎる配当を「減配」する決断が不可欠となる。適正水準としては、今の半分以下、または三分の一程度で十分である。
今の経営者なら、退陣するまで現在の配当を維持するであろう。しかし、投資家がそれに安閑としていては、この会社から利益を得ることはできない。なぜなら、株価の上昇は見込めず、配当もこれ以上上がる見込みはないからである。
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