テルモ 経営のプロが担うグローバルニッチ経営
テルモは、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で多様な医療現場、製薬企業などに製品やサービスを提供する医療機器メーカーである。当社の飛躍は、1990年代ごろから技術力の高いカテーテルが大きく伸長したのと海外企業のM&Aを繰り返すことで事業を拡大してきたことである。
テルモは、株価については浮き沈みを繰り返しているが、医療機器分野のグローバルニッチ市場で優位性を保つことで、着実な売上成長、かつ高財務を維持し、長期的に上値を切り上げてきた優良企業である。
(参入障壁の高いビジネスモデル)
テルモの医療機器メーカー世界ランキングは15位(約0.69%)、最大手のメドトロニック(2兆円弱)。ボストンサイエンティフィック(1兆円強)と比べると規模面での小粒感は否めないが、カテーテル治療に使うガイドワイヤーのグローバル市場シェアは60%、血管に入り口をつくるシースイントロデューサーは45%などで世界シェアトップを獲得している。
一般に、医療機器は承認取得が難しく、新規参入からその業界内に大きく食い込んでいくハードルは高い。さらにニッチ分野という大手企業が参入をためらう領域で優位性を発揮しているため、テルモの事業には堅牢性がある。今後は高齢化社会の進展による手術数の増加も見込まれ、テルモにとってのビジネス環境は良好なものとなっている。
(巧みな事業拡大戦略)
テルモは、1999年以降、以下に代表される買収で、急速にグローバルニッチ化を進めてきた。
1999年 米国3M社から人工心肺事業を譲受
2002年 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社
2006年 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社
2011年 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社
2016年 シークエントメディカル(脳動脈瘤用塞栓デバイスの開発・製造・販売)
2017年セント・ジュード・メディカル(大腿動脈穿刺部止血デバイスの開発・製造・販売)
これらを通じて、テルモの連結子会社は9割以上が海外法人となり、売上海外比率は70%に及び、その内訳としてアメリカがトップで、欧州の比率が高いなど事業エリアの分散化が程よく図られている。
(プロ経営者による統治)
佐藤慎次郎元社長そして鮫島光社長は、ともに東亜燃料工業出身で、米国流の経営が根幹にある。そういった点では、テルモは米国企業仕込みの経営プロによって会社が運営されているといっても過言ではなく、他の医療機器メーカーとは一線を画している。
テルモは、買収した会社の企業文化や経営方法に手を付けず、買収してきた会社の経営力を損なわないようにするため、買収先の組織には最小限の統治に留める一方、コーポレート主導にて、生産、調達、ロジスティクスなどで最適化を図っている。しかしながら、テルモの戦略はテルモ特有の戦略でない。多くの日本の優良企業も同じことを行っているが、テルモのように売上・利益などの向上に寄与している例は少ない。大抵の場合、日本事業は高収益だが、海外事業は利益率が低く赤字の垂れ流しという例も少なくない。このような業績の差は、つまるところ経営者の手腕によるものが大きい。テルモは優秀な経営者のもとで、一株当たりの利益もほぼ右肩上がりを維持させ、自己資本利率も70%近くの高財務企業である
(今後の動向)
当面はカテーテルを中心とした心臓血管事業をどの程度伸ばせるかということになる。 医療分野はブランド力もあるが、やはり製品の品質の信頼性が事業拡大に向けたカギになる。そういった意味では高齢化社会を迎える昨今において、テルモの役割は大きく。景気動向に左右されずに安定的に増収増益も期待できないわけではない。現状においては、佐藤慎次郎元社長は60代であり、当面は鮫島社長の裏方でバックアップすることが期待され、安定的な経営が見込まれるであろう。
当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサイトに掲載された情報によりなされた判断及び一切の行為は、閲覧者の自己責任においてなされるものとします。
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